グリゼー(ジェラール) Grisey, Gérard
生没年 | 1946-1998 | 国 | |
---|---|---|---|
辞書順 | 「ク」 | NML作曲家番号 | 23180 |
-
-★2020年度 第58回レコード・アカデミー賞受賞(現代曲部門)★- -★『レコード芸術』特選盤(2020年7月号)★-
『ラ・パッショーネ』
(ノーノ、ハイドン、グリゼー) [バーバラ・ハンニガン (ソプラノ、指揮) ルートヴィヒ管弦楽団]HAYDN, J.: Symphony No. 49, "La passione" / GRISEY, G.: 4 Chants pour franchir le seuil / NONO, L.: Djamila Boupachà (Hannigan, Ludwig Orchestra)
発売日:2020年04月10日 NMLアルバム番号:ALPHA586
CD国内仕様 日本語解説付き価格:2,970円(税込)
ハイドンと20世紀…
ハンニガンが提示する世紀を越えた「受難」の響き!2019年のAlphaレーベルからは、パトリツィア・コパチンスカヤによる戦争の惨禍を見据えた『つかの間と、永遠と』という驚くべき新譜がリリースされ大いに話題を呼びました(Alpha545/NYCX-10086、『レコード芸術』リーダーズ・チョイス2019第8位)。その成果への返歌のように、同じくAlphaレーベルから音盤リリースするようになったバーバラ・ハンニガンも苦難の時代を見据えた新録音を発表します。オランダの精鋭集団ルートヴィヒ管弦楽団を自ら指揮しての本盤に選ばれたのは、これまでもすでに演奏会シーンで彼女が追求しつづけ、絶賛を博してきた三つの演目――すでに亡くなって久しい20世紀の前衛ふたり(グリゼーもノーノも、日本の近現代系オーケストラ音楽ファンにはとくになじみ深い名前ではないでしょうか)と、なんとハイドン中期の交響曲! 「受難」をテーマに掲げるこのアルバムは、二つの20世紀前衛作品のあいだに、ハイドンが受難節の音楽をもとに仕上げたとも言われる交響曲第49番をはさむという、一見意外な展開。ハイドン作品も通り一遍等の交響曲ではなく、短調の長大な緩徐楽章で始まる異色作ですが、この作品はハンニガンが指揮者としても超一流であることを端的に示す絶好のプログラムとなっています。 周到に作品美をあぶりだす演奏の前後に、スペクトル楽派や電子音楽のムーヴメントを経験しながら独自の作風へと帰結していったノーノの無伴奏独唱曲と、ハンニガンがラトル指揮ベルリン・フィルとの共演でも歌ったグリゼーの連作が続き、ハイドン作品の現代性が逆に浮き彫りになる流れは絶妙というほかありません。人間性が徐々に失われてゆくさまを古代から現代にいたるさまざまな詩句の引用であぶりだすグリゼー作品は、まさにこの構成でこそ聴きたい一編。アルバムとしての聴覚体験にひときわ意義のある1枚といえます。