皆様、こんにちは。Dr.Tei Kenです。
「史上最も暑い年になる」とNASAの気象学者が警告している2016年の夏。漢方では、“夏は心を主る”とされ、夏の暑さは心(循環器系・精神系)に大きな負担がかかります。暑さによって心に火が付き、水分の調節をする肺にも飛び火するのでクールダウンできず、心と肺が焼かれてダメージを受けます。夏に心臓病で亡くなる人が急増するのはこのためです。
今年は猛暑で、体も脱水傾向になりやすいので、より一層注意が必要となります。疲れやすかったり、動悸や息切れは、心や肺のダメージを受けているサイン。このような症状に処方されるのが「炙甘草湯(しゃかんぞうとう)」です。
炙甘草湯は、体力をつけて動悸や息切れを和らげる効果があり、バセドウ病や不整脈、心不全の方にもよく用いられる漢方薬です。
特に夏は、汗とともに気を消耗して倦怠感が 出やすくなります。また、体から水分が失われやすいので、血のめぐりが悪くなり、上記のような病気を引き起こしやすくなります。
〈臨床症例〉
動悸、息切れがある高血圧症の40代男性が服用したところ、動悸、息切れが改善し、服薬1ヵ月後には血圧が安定し、夜間頻尿も改善され熟睡できるようになりました。
バセドウ病で手術を勧められていた女性は、10日で動悸、息切れが治り、3ヵ月後には甲状腺肥大が目立たなくなりました。
甘草をあぶったものが炙甘草です
炙甘草湯は、炙甘草、麦門冬(ばくもんどう)、地黄(じおう)、桂枝(けいし)、大棗(たいそう)、人参(党参)、麻子仁(ましにん)、生姜(しょうきょう)、アキョウといった9種類の生薬が配合されています。気血をしっかり補い、体に潤いを与え、めぐりを生み、バランスよく作用していきます。
炙甘草湯に配合されているアキョウは、貧血を予防したり、気を益して体を軽くする作用があり、夏バテ気味の方にも最適です。
炙甘草湯は、夏をさわやかに過ごすための方剤と言われています。安全性も高いため、気になる方はお近くの漢方薬局にご相談ください。
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