皆様、こんにちは。Dr.Tei Kenです。
これまで、鹿に由来する生薬は十数種あり「鹿は全身が宝物だ」と説明してきました。しかしながら実際に日本の市場ではあまり見かけないため「鹿が本当に薬として使えるのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。なぜ日本ではあまり鹿に由来する生薬を見かけないのでしょうか。2回に分けてお話します。
日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書です。
初版(JP1)は明治19年6月に公布、その後JP9から5年ごとに改訂が重ねられ、現在では、第十七改正日本薬局方(JP17)が公示されています。この日本薬局方に収載されている医薬品は「局方品」と称します。現在使用されているJP17では 1962 品目が収載されています。この中で、生薬や漢方製剤は「医薬品各条 生薬等」として324品目が定められています。
例えば、よく知られている「ニンジン」や「葛根湯」などは、その生薬の基原や性状、確認実験などが日本薬局方に定められています。
「日本薬局方」以外に、生薬や漢方薬に関わる主な公定規格「日本薬局方外生薬規格」、「一般用漢方製剤承認基準」も存在します。これらには日本薬局方に将来収載される可能性のある成分が収載されています。例えば、「阿膠(あきょう)」や「生姜エキス」、「牛黄末(ごおうまつ)」などが局外生薬として「日本薬局方外生薬規格」に収載されています。
全ての飲食物は、原則として食品か医薬品です。薬機法によると、医薬品とは日本薬局方に収載され、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用される物とされています。医薬品および医薬部外品以外のものは、すべて食品となります。では、「鹿」はどちらに分類されるでしょうか?
日本においては、残念なことに貴重な鹿に由来する生薬は、いまだに「鹿茸(ろくじょう)」のみが「日本薬局方外生薬規格」に収載されているのが現状です。
次回は漢方医学における医食同源の考えについて説明します。(次回に続く)
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