スタッフによる宝石ブログ

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【No.70】名工が鍛えし業物 翡翠の指輪

翡翠 ダイヤ リング

スタッフのひとこと

琅?なんて大層な事を申し上げるつもりはございませんが、こりゃ良いものでございます、はい。

みなさまごきげんよう、さて今回は。などと毎回毎回、口から出まかせの与太話にお付き合い頂きまして誠にありがとうございます。あらためまして厚く御礼申し上げます。

さて、こうやって曲がりなりにもブログが書けておりますのは、何といってもパソコンに内蔵されておりますワープロソフトWordのお陰。

あらためてこちらの方にも感謝の意を表したいと存じます。マイクロソフトWord殿ありがとうございます。

さて、わたくしの歳で、拙い人差し指入力ながら、曲がりなりにもパソコンで文章を作成するなどという作業をこなすことは大変な偉業、と言うほどの大層なことやおまへんねけどね。

だいたいわたしらの歳ですと元々がアナログにでけとるさかい、文章書くのも先に紙に下書きせんとどんならん言う人多いんですが、私は単刀直入の直入力。なんでか言うとね、自分で手書きした字が下手くそ過ぎて、よう読めん。難儀なこっちゃね、これまた。

実はわたくし、パソコンというものに接したのは結構早く、1990年代中ごろには既に自前のパソコンを持っておりました。

その理由がまた情けない事ながら、先ほども申しました生来の悪筆のせい。

当時勤務しておりました宝石屋、なにを行うにも業務日報、営業計画書、催事結果報告書その他諸々、いちいち書面での報告が義務づけられていたのでございます。

さて、自分の課で行った催事結果報告書を上司に提出した時の事。「こら、ちょっと来い!」と怒りを声に滲ませた上司に呼びつけられのです。

これはてっきり催事の結果の不出来を叱責されるものと覚悟してその人のデスクまで行くと、「これなんや、汚い字で書きなぐりやがって、しかも誤字脱字だらけで何書いてるかわからへんがな。お前、上司、ひいては会社、いわんや社会全体そのものを舐めてけつかんなー、おーっ!?」と、もうえらい剣幕。

こちらは何も悪意があってワザとやってるわけではなく、字の下手なのは生まれつき、誤字脱字が多いのは学校で劣等生やったからで、それを承知で雇といて急にそない言われても、と言い返したいところ。なれどそこは悲しいサラリーマン、平身低頭で謝り、再提出を余儀なくされたのでした。

しかし、書き直したところで、多少はましにはなるものの、特段の進歩は期待できるはずもなく、再提出の書類を受け取った上司、一目見るなり無言でテーブルの片隅へ投げ捨てたのであります。

これに衝撃を受けたわたくし、こんなことが続くようでは出世はおろか、現在の地位までも危ういと焦り、早速解決策へ考えを巡らしたわけであります。

「今更習字を習いに行くなど手遅れやし、例えそうしても一朝一夕に字が上達するわけあらへん、そや、これはもう最新のテクノロジーに頼るほかない。」

かように結論づけたわたくしは早速、大阪の昔は電化の街、現在はオタクの街日本橋へ行き、当時最新のノート型パソコン、マッキントッシュのパワーブックと、持ち運びできる簡易なHP社製プリンターをなけなしの自腹を切って購入したわけでございます。

ただ、そこからが一苦労、全くのパソコン素人が市販の入門書と首っ引き、夜も寝ないで悪戦苦闘。

まあ、その甲斐あって会社へ提出するさまざまな書類の雛型をスプレッドシート等を用い作成し、利益率や前年比なども数字を入力すれば自動的に算出されるようにした、初心者としてはなかなかの出来の社内提出用書類のテンプレートを数種類完成させたのでございます。

まあその後、書類に関しての叱責は無くなりましたが、バブル崩壊後の事とて売り上げは低迷続き、上司の叱責はなおも果てしなく続いたわけでございます。めでたしめでたし。

落語のお題に「代書屋」というネタがございます。元々は関西落語のネタらしいのですが、今では東京の方でも演じられることが多い演目らしいです。

このお話が出来ましたのは昭和初期。

その頃は今と違い、字の書けない人も結構おられたようで、またわたくしの様に一応は書けるが、その書いた字が汚なすぎて人に見せる事を憚られるといったような人が、履歴書や何やらを書くときに頼みに行ったのがこの代書屋さん。

何せその頃は、落語にもあります通り、履歴書などは毛筆書きだったようで、今でもそんな慣習が残っておりましたならば、私なんぞいの一番に頼みに行かんならんクチやさかい、そんな商売も残っていたかもわかりませんな。

しかし時代の変遷というものは恐ろしいもので、今やそういった本来毛筆で書かねばならないものまでも、パソコンに取って代わられている始末。

例えば百貨店で菓子折りなどを贈答品として買ったとしましょう。

のし紙を頼み、お祝いなりお礼なりと書いて、その下にこちらの名前を入れてもらったりする場合、ひと昔前ですとちゃんと売り場売り場に書道に長けたおっちゃん、おばっちゃんが控えておりまして、毛筆で墨痕鮮やかに綺麗に書いてくれはったもんです。のし紙の代書屋ですわね、簡単にいうと。

それが今は全部パソコンですわ。

題目と名前言うたら係のお姉ちゃんがその場でパソコンに入力しまして、プリンターから習字の見本のようなフォントで印刷されたのし紙が出てくる仕組み。

何や味気ないもんですなー。もらった方のありがたみも薄れそうな塩梅。

さてさて、そういったテクノロジーの進化は、宝飾品の作成といったことにも実は大きく影響を及ぼしているのでございます。

ほんのひと昔前までは宝飾品のオーダーメイドと申しますと、元になる設計図を宝飾デザイナーさんにお願いし、出来上がった図面を職人さんに渡し、これに基づき熟練の職人さんが実際に棒材やら板材などの貴金属の材料を、切ったり、叩いたて伸ばしたり、曲げたりして手作業で細かいパーツを拵え、それを順々に組み立てていくという工程をたどるのございます。

しかし、現在そのような技工は、なんとパソコンを駆使したキャドというコンピューター設計システムなるものにとって代わられているらしいのです。

例えば、リングならリングの枠の3Dの設計図をパソコンで作成すれば、それに基づいて自動的に3Dプリンターでポンと自動でジュエリーの原型が出来上がるという寸法。

我々年寄りからすれば、まるで手品でも見ているかのような具合。便利、かつ地金の無駄を省き、出来上がりも早い、更に量産も出来るということで、今ではオーダーメイドの注文もほとんどが、このキャドなるもので行われるのが主流だそうでございます。

しかし、どのような時代のどのような品でもそうですが、名人と呼ばれるような人によって拵えられた手作りの品に及ぶものはございません。実際昨今では結婚指輪の販売においても一本一本を職人の手作りによって製作する事をわざわざ「鍛造」(タンゾウ)などと称し、付加価値をつけて販売する業者も現れるほど。

とは申しましても手作りで最も重要となります点は、何といってもそれを拵える職人の腕。

マリッジリングのような地金の輪っかを拵えるだけの簡単なものなら職人の腕の差で大きく違いが出ることはございませんが、実際、正統派のハイジュエリーともなりますと、その留める宝石を生かすも殺すも、その職人さんの腕一つに掛かってくると申し上げても過言ではございません。

さて、そこでご覧いただきたいのがこちらの翡翠の指輪。

翡翠 ダイヤ リング

この品は当店が、このとろける様な、濡れたような何とも言えない翠の宝石の魅力を最大限発揮させるべく、頑固な手造り職人、名工小川先生に依頼し作成いたしました秘蔵の逸品でございます。

こちらは一般的にメレダイア取り巻きの中石リングなどと呼ばれる指輪のスタイル。

さて、この中石のヒスイを取り巻くメレダイアが合計十個。それぞれが一粒当たり0.2キャラットを超えるラージメレダイアモンドを贅沢に使っているのですが、裏から伺いますと、ダイアそれぞれが丸いリング状の枠によって支えられているのが確認できます。

翡翠 ダイヤ リング

この輪状のパーツは針金状の地金素材からひとつひとつ、ダイア下部のパビリオンと呼ばれる部位のちょうど頃合いの良い部分に納まるように、その大きさも緻密に計算され一つ一つ拵えられたもの。そしてそれらがヒスイの周りをきっちりと均等に取り巻くよう寸分の隙も無くロー付けによって接合されております。

さらにこの取り巻きのパーツを、ちょうどヒスイの真下、リングの天井部分に設えられた楕円形の受けの部分から放射状に延びた10本の細い針金状のパーツが、微妙なアーチを描いてこれを支え、かつまた同時にメレダイアの座を乗り越え上部へさらに伸び、それぞれがヒスイの脇を飾るダイアモンドのそれぞれを留める爪としても機能するという工夫が施されております。

もちろんこちらのパーツも一本一本が同等のサイズ、角度でもって手作業によって生み出された事は言うまでもありません。さて細かい事をいくら言ってもキリがございませんので、この指輪の細工において、最もご注目頂きたい点を最後に指摘しておきたと存じます。

この指輪を真横からご覧いただきますと、ヒスイの石がわずかに下のプラチナの台座からはみ出しているのがお分かりいただけるかと存じます。

翡翠 ダイヤ リング

これは何も職人が寸法を違えたわけではなく、真上から見た場合に石枠が視野に入らないようにする工夫。それと同時に、石がより立体的に高くせり出す躍動感を伝える、視覚効果を狙ったものでございます。

目論見どおり、ヒスイが、恰も椿の葉に乗った朝露が今にもこぼれる落ちるが如き風情をたたえている様子にお気づき頂けますでしょうか。

また、同様に真横からの視点で取り巻いているダイアモンドをご覧いただきますと、ダイアモンドが微妙に外側に向かい傾斜している事がお分かりいただけるかと存じます。

これも、リング全体の見かけをぺたっとした平板な印象から、より立体的な存在感のある印象に見せる為の工夫に他なりません。

さて、いうった細部の入り組んだ細工の冴えは当然の如く肝心ではございますが、最終的に最も重要となりますのは、もちろん出来上がりのトータルとしての形状のバランス。これが崩れていてはいくら細部の細工が優れていても何にもなりません。この最終的な一つの品物としての出来栄えこそが職人のセンスの見せどころ。

さてその出来はというと、それはもう覧の通り。

翡翠 ダイヤ リング

名実ともに名人名工のマスターピースと呼ぶにふさわしい完璧なバランスを保った素晴らしい出来栄であることは、一見すれば今更わたくしがお節介に言うまでもございますまい。

しかし、こういった高度な技術を持つ職人さんは、どのような世界でも同様、業務従事者の高齢化に伴い、減少の一途をたどっているのが現実でございます。

キャドでジュエリーを造れるエンジニアは増えても、本物の手造り職人は減る一方。

そういった意味合いも含めて、こちらのお品は近い将来にはますます入手困難となるであろうお値打品であるという事は、みんな、もちろん解かるよね!?

【No.69】ダイアとフナの相関関係 [カルティエ]

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

スタッフのひとこと

あら、そちらの3連の指輪ってもしかしてカルティエ?、素敵だわー!とこれ着けて世辞を言う優越感、圧巻。

わたくしがまだ小学生の時分と言いますから、1960年代、えらい昔や!アメリカのバンド、ベンチャーズの人気とともにテケテケテケテとエレキブームというのがやってまいりました。

世の軽薄なお兄ちゃん連中は我先にと、女の子にモテんがために、当時はまだ高額商品であったであろうエレキギターを我先にと入手してベンチャーズ風なバンドを組んでは、テケテケテケテケとやったものでございます。

(テケテケとはベンチャーズのギター奏法の代表とも呼ばれるクロマチックランという奏法。老婆心ながら申し添えておきます)

映画の方でも加山雄三さんが「エレキの若大将」というタイトルで、日本のエレキギターの神様と呼ばれた故、寺内タケシ氏を招き、自らも往年の名器モズライトギターを小脇に抱え、自身で作曲した曲を自ら歌い奏で、映画、楽曲双方のヒットを得、一躍時代の寵児となったわけであります。

またこの頃、海の向こうのイギリスではビートルズが鮮烈なデビューを果たし、これをきっかけにロックが音楽だけに留まらず、文化や社会生活、はたまた政治にまで影響を及ぼすような一大ムーブメントとして発展して行きます。

もちろんそういった流行に敏感な日本の芸能界でも和製ビートルズ、ストーンズみたいなバンドを作り出して一儲けしようじゃないかというタクラミの下、とりあえず見かけ長髪、ミリタリールックのご本家完コピ、お姉ちゃんウケしそうなイケメン、やさ男をヴォーカルに据え、今で言うところのアイドルグループ風なバンドを沢山作り出したのです。これが所謂世に言うグループサウンズブームとなったわけでございます。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

ただし、こうしたコマーシャリズムに則った大人の手で造られた即席ロックグループであるグループサウンズは当然、本来ロックミュージックの持つ、既成のモラルや社会通念に対する若人の反抗という核心になるコンセプトが欠如しているが為、一時のブームとしてあっさりと若者たちに飽きられてしまったのでございます。

さてその後、日本のミュージックシーンには、いかにも日本人らしく叙情に訴え、社会にすねた背を向ける若者たちの姿を投影したフォークソングブームが到来いたします。

履き古したフレアジーンズにちびた下駄をつっかけ、四畳半一間で同棲する彼女と近所の銭湯に行ったりする事にささやかな喜びを見出すなどといった、まことにしみったれた暮らし向きが貴ばれるという、珍妙な社会現象を引き起こしたわけでございます。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

そんな中、少数派となり世間から白眼視されるようになったロックファンどもは虐げられる者の常として、より過激に先鋭化し、マニアックなものを追い求める様になっていったのは当然の帰結。

例えばビートルズ、ローリングストーンズというビッグネームには飽き足らず、キンクス、ドアーズなどと言ったマイナーどころのグループに目を向け始めたのを皮切りに、ジャズのセッションよろしく長時間ギターソロのインプロヴィゼーションを延々と繰り広げる、神エリック・クラプトンを擁したクリーム。ステージ上でギターに火を放ったり、叩き潰したりするパフォーマンスで有名なジミ・ヘンドリクスやザ・フー。

さらには過激な思想と難解な音楽の融合を目指したフランク・ザッパ。おまけにセックスピストルズなどと破廉恥な名前を堂々と看板に掲げるパンクロッカーなどという不埒な者どもが次々と現れ、ロックシーンは混迷の一途をたどるわけであります。

まあこのような先鋭化の流れは、何もロックに始まった事ではなく、ロックが流行る前の世代、すなわちジャズエイジの世代でも同じように、お気楽なデキシーランドジャズがあれよあれよという間に、ジャズ喫茶でサルトルなどを読みふけるインテリゲンチャのBGMとして、その嗜好に沿うべく、どんどん難解な方向に発展して行き、最終的にはフリージャズなどという、あたかも現代音楽か実験音楽かと思わせるようなアヴァンギャルドなものに変化していった模様と相通ずるところがあるように思われます。

まあいち様に人間の趣味道楽というものはなんでも、初手は簡単でとっつきやすいものから入門するわけでありますが、その趣味が高じて参りますと、だんだん難しいもの、難解なものを求める様になってまいります。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

さて、こういった傾向はジュエリー好きの方々の中にも見受けられます。

まあ、大体みなさま最初はティファニーのバイザヤードあたりを就職を機にファーストジュエリーとしてお求めになったりするのでございますが、そこから宝石にハマる方はまず、エメラルド、ルビー、サファイアの三大宝石を手掛かり、足掛かりとして、様々な宝石をリング、ネックレス、ブローチにブレスレットと様々な形態でもって収集されていくようでございます。

また、ちょっと学究肌のお方になりますと、ガーネットやサファイアなど、一つの宝石において色の変化によって様々な変種が存在するのですが、その変化を追い求める様に系統立てて収集されているような方もお見受けいたします。

更には希少石を追い求めたり、有名作家、有名ブランドにのめり込んだりとその指向は様々な方向に分散されて、趣味の世界は広がっていくのでございます。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

まあ、極端にマニアックな趣味に走る方は別として、宝石道楽はダイアにはじまり、アレキサンドライトで締めとすると昔からよく言われているところでございます。

まあそれで一通りの代表的な宝石は揃ったという意味合いで、そのように言われるのでしょうが実際、はいアレキ買いました。これにて一件落着。あー、楽しかった、とは簡単にはまいりません。

どんな道楽でも簡単に抜けられないのが道楽の恐ろしさ。下手すりゃ身代喰いつぶすというくらい入れ込んでしまう人もいるくらい。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

さて、一旦アレキに行きついた人はどうするかというと、また振り出しに戻る、じゃないですがダイアモンドに帰ってまいります。

釣り道楽には「フナに始まりフナに終わる」などという言葉があるそうでございますが、宝石のほうは差し詰め、ダイアに始まり、ダイアに終わる言ってよろしいかとぞんじます。

さて、そんな二周目、あるいは三周目を迎えられた懲りない宝石好きのあなた様にお薦め致しますのが、こちら、その名も高き宝石商の王、カルティエの堂々たるダイアモンドソリテールリングでございます。

Cartier(カルティエ) 1895 ソリテールリング

さあ、ご覧くださいませな、この煌びやかな光を四方八方に放つ極上のキャラットダイアモンドを優雅に捧げ持つは、カルティエが長年培ってきたデザインの粋を凝らした優雅なゴールドの指輪。もうご覧いただければ、わたくしの下手な説明などまったく不要。

ロックの王者ローリングストーンズの例えば、昔ウィンドウズ95のコマーシャルにも使われた名曲スタートミーアップ。キースリチャーズの出だしのワンフレーズが、しかつめらしい渋谷陽一のもったいぶった解説を木っ端みじんに粉砕するが如くのインパクト!

百聞は一見に如かず、良いーものです!

【No.68】不気味なくらい美しいギメルの指輪 [ギメル]

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

スタッフのひとこと

ギメルのレアな大粒宝石のリング。こりゃもうオークションアイテムだね

前回に引き続いての映画のお話。映画と言えばこの語り口、わかるかな?

さて皆さん、前回も少し触れましたが、今回のお話は、映画とその元になった原作の関係についてなんです。

たいていの人気小説は映画化されることが多いのですが、さて、そのどっちが、つまり元の小説がええのんか、いやいや、やっぱり百聞は一見に如かずというが如しで、視覚に訴える映画の方がええんちゃうのという議論が、そういった人気小説の映画化、あるいはその作品が話題作や人気作になる度に起こりますね。

例えば、古くはアメリカ南部ジョージア州はアトランタに住んではった、マーガレット・ミッチェルというごくごく平凡な普通の主婦が書きました、アメリカ合衆国の国土を分断した争い、南北戦争に題材を取りました長編小説「風と共に去りぬ」。

このお話、このおばちゃんが初めて書いた処女作にもかかわらず、一躍世界的な大ベストセラー小説となってしまったのです。

主婦やのに、処女作とはこれ如何に。いちいちしょうもない事言わいでよろし。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

さあ、そこで抜け目のない映画業界、これをハリウッドのメトロゴールドウィンメイヤーという、あのオープニングでライオンがガオー言うて吠えとる映画会社ね、この映画会社が主演ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブルその他、キラ星の如き豪華俳優陣をそろえ、三時間を越える上映時間の超大作に仕立て上げました。

この映画もご存知の通り空前の大ヒットとなりまして、アカデミー賞は当然の如く総なめ、映画史上に燦然と輝く、誰もが認める名画、名作となったわけでございますが、この時分から、やっぱり原作のほうがええで、いやいや映画が原作を超えたんちゃうんと、喧々諤々の議論が巻き起こったんですねー。まあ、そんなん観る人読む人の勝手やと僕なんか思うんですけどねー。

また、こういった小説と映画の論争の中には、なんと原作者が出来上がった映画が不服や、勘弁でけん言うていちゃもん付けてくる場合もあるんです。

その代表例が、アメリカのホラー小説の第一人者にして、人気小説家のスティーブン・キング、この人の小説「シャイニング」を、これをまた天才、鬼才の呼び声高い映画監督スタンリー・キューブリックが映画化し、タイトルもそのまま「シャイニング」として作った映画のケース。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

さて、原作者のスティーブン・キングはなんでいちゃもん付けたかというと、原作に忠実なのはタイトルだけで、中身はストーリーから、キャラクターの設定や性格までもが映画では大きく変更されていたんですねー。

「ちょっと兄ちゃん待ったりーな。これちょっとおかしないか?ワシこんな話書いた覚えあらへんで。勝手な真似してもたら困るわ、洒落ならんで、正味のはなし」

言うてね、もうスティーブン頭から湯気出してかんかんに怒って怒鳴り込んできたらしいんです。しかし時既に遅し、もう映画は公開されてて、泣こうが喚こうが後の祭り。

しかし映画は大ヒット。今でもホラー映画の金字塔の呼び声高い伝説の作品となったわけでなんです。

皆さんも例のジャック・ニコルソン演じる主人公が、斧で叩き割ったドアの隙間から鬼気迫る恐っそろし気な顔出してるスチール写真、いっぺんくらいは見たことありますやろ。

まあ、映画が当たれば当然原作を読んでみようかという人も増え、したがいまして本の売れ行きも、そのシャイニングだけに留まらず他の作品にも波及して伸びたんです。

そんな具合の痛し痒しで、そんならまあ今度目だけは堪忍しといたろかと、スティーブンも渋々鉾を納めたという訳。知らんけど。

ただ、スティーブン・キング先生余程ムカついたのか、後年自分でプロデュースしてこの「シャイニング」をテレビ映画という形で再度世に問うたんです。

ただし、やはり餅は餅屋で、同じ映像の土俵で争えば当然結果は明らか。なんせ相手は映像の魔術師なんですからね。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

さて、この映画「シャイニング」、粗筋をざっと述べますと、売れない小説家ジャック・トランス、映画では先にも申しましたとおり、かの名優ジャック・ニコルソンが演じておりますが、その彼が、冬の間は厳しい気候のせいで閉館され、全くの無人となるコロラド山中の高級ホテルに住み込みの管理人として雇われ、妻と一人息子の一家を引き連れてこのホテルへやってまいります。

採用面接の際、実は過去にも冬季の管理人を雇った事があるのだが、長期に渡る豪雪に閉じ込められた閉塞した生活の為、その管理人は精神に異常をきたし、あろうことか、自らの双子の娘を斧で斬殺した挙句、自らも命を絶ったという事件を、面接に当たったホテルの支配人から知らされます。

そうは聞かされても、ジャック・ニコルソン演じるジャック・トランス、少しも動じる気配無く、こちらは作家が本業、むしろそういった静かな環境は作品執筆にあったて望むところと一笑に付してしまいます。後々同じ運命が自らの身に降りかかるなどとは思いもしないで...

さて、この同じ不幸な運命をもたらした元凶は、ホテル支配人が説明した長期の閉塞生活のせいではなく、その豪華ながらも古いホテルに巣食う悪霊に取りつかれたがゆえの暴挙だったのです。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

さて、物語の顛末はDVD等で本編をご覧いただくことと致しまして、その管理人ジャックがあちらの世界に取り込まれていく過程として暗示的描かれておりますのが、巨大なボウルルーム、つまり舞踏会場のシーンなんです。

最初は当然、無人の空っぽで広大、暗い空間がしんと静まって広がっているのだけの部屋なのですが、ある日気分の滅入ったジャックが腰掛けた舞踏会場の片隅にあるバーカウンター。ふと見上げるとそこだけ煌煌と灯りが点り、なんと正面に突然バーテンダーの姿が。

正気であればここで腰でも抜かすほど驚くはずが、あちらの世界に引き込まれかけているジャックには平常の光景と映り、「今日はちょっとヒマそうじゃない?」などとバーテンに話かけ、最後はちゃっかり、ツケでバーボンのロックまで飲ませてもらうのです。

そして時がさらに過ぎ、二回目の舞踏会場のシーンでは会場の外までジャズ楽団の演奏する甘ったるいオールドジャズが流れ、会場内は居るはずのない多くの人々であふれ、宴もたけなわ、実に華やかな様子。

しかし良ーく目を凝らしてみると、なにか変だなと映画を観ている人は妙な違和感を感じる仕掛け。それは、日本人の我々にはあまりピンとこないかもわからないのですが、そのパーティーに集い興じる人々の服装なのです。

特に女性の衣装は、仮装パーティーもかくやとばかりの非常にクラシカルな雰囲気。

厳密に言いますと、ジャズエイジと呼ばれたアメリカで1920年代に隆盛を極めたフラッパーと呼ばれる緩やかで独特のシルエット。そうなんです、この宴は過去に生きるお化け達のパーティーなのです。

という訳で、突然ですが、このオバケの宴の雰囲気にピッタリな指輪がこちら。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

大粒の非加熱スピネルをギメル社得意のダイアパヴェセットのリングの上、大胆にも八本のゴールドの爪でもって捧げる持つような、実に優美なデザイン。

そして何よりも魅力的なのが、この非加熱スピネルの妖しい紫の色。

いかにもアヤカシ、モノノケといった黄泉の国の風情をたたえた、この世もモノとは思えぬ蠱惑的で抗しがたい魅力が宝石の奥底から湧き出てまいります。

Gimel(ギメル) 非加熱 スピネル ダイヤリング

そしてこの魅惑の宝石を、奇跡のように煌めくダイアモンドが贅沢に敷き詰められてあるゴールドの台座が、豪華絢爛に縁どっているのでございます。

ボウルルームに集う、フラッパーファッションの緩やかな広がりのドレスをまとって、パッツンと切った前髪のショートボブの女性が、長いキセルのようなシガレットホルダーで紫煙をくゆらす、まさにその指こそが、この指輪の煌めく場所。その風情に幻惑されてジャックは、1920年代のジャズエイジの世界へ引きずり込まれて行ったのでしょう。

映画のラストシーン。

“Overlook Hotel July 4th ball 1921”と日付の入った舞踏会の記念写真の中央。取り込まれたジャックが、嬉々としたにこやかな表情で、その他大勢のゴースト達と一緒に写真に納まる様子を見るにつけ、妖の世界も悪くないんじゃない、とつい思ってしまうのでございます。

【No.67】ティファニー スイングダブルドロップネックレス [ティファニー]

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

スタッフのひとこと

ニューヨークのジュエラーティファニーの真骨頂。ハイジュエリーダイヤモンドネックレス。ハリウッドセレブがアカデミー賞授賞式でつけてるやつ。

さて、本日ご紹介いたします当店秘蔵のお宝はこちら...

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

ティファニーのゴージャスダイアモンドネックレス。

ティファニーのネックレスというと思い浮かぶのが、オープンハートとかビーンズ、バイザヤード、最近ですとTスマイルなんて可愛らしいデザインではないでしょうか?

その辺のデザインは商売的に言うと、買い回り商品などと呼ばれ、広く一般大衆に支持され、多くの人に買ってもらおうと言う、売上の基盤を作り、ランニングコストを賄う、言わば日銭稼ぎの商材。ブランドによってはアクセサリーラインなんて呼ばれます。

しかし、こんなのばっかりだと単なるアクセサリー屋で終わってしまう。天下のジュエラー、ティファニーのブランドイメージを保っているのが、こちらの様な本格的ハイジュエリーのカテゴリーなんです。

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

ティファニーにかぎらず、海外の有名ジュエリーブランドの商品構成は大体、低価格の買い回り品と本格的ジェムクォリティーのハイジュエリーに分かれているのが一般的。

日本でも富の分配の二極化なんてことを言いますが、あちらの世界では、いまだに社交界なんて言葉があるくらいですから格差の規模がちがいます。確固としたハイソサエティ向けの需要がちゃんとあるんですね。とは言え、買い回り品て言っても庶民には高値の花なんですが。

威風堂々たる敷居の高いティファニーのお店に一歩足を踏み入れると、大体こういうのは陳列のコーナーコーナーのひと際高くそそり立ってるハイケースか、壁にかかる絵画のような壁面ケースに、恭しく飾られ、貧しく名もない冷やかし客はそれだけで威圧されてしまうのです。

しかし逆に臆すことなく、「ちょっと見せてよ」なんて言おうものなら、途端にVIP待遇、別室に通され、茶菓の接待など受けつつ、一般客が目にすることの無い凄いお宝が次々と開示されるのです。

もちろん、ちょっと見せてよの後、宝石の鑑定より、お客の鑑定にたけた老獪な店長による人品骨柄審査が瞬時に行われるので、誰でもというわけには、残念ながらまいりません。

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

さて、それでは商品を見てまいりましょう。

こちらのネックレス、正式なお名前はスイングダブルドロップネックレス。まさに見ての通りの命名。

造りはいたって単純なもので2.5cm間隔に一回り大きなダイアをセットしたダイアモンドベゼルセッティングのダイアの連を、首下ペンダント位置で、一旦やや他より大きめのパーツでまとめ、そこからループタイのように、また同じ仕様の連が2本柄を違えて下に垂れるといった定番ともいえるデザイン。

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

こうした種類のフォーマル、パーティー用のネックレスのデザインとしては、例えばハリーウィンストンのハリウッドセレブにアカデミー賞授賞式の時に貸し出す様なバルキーなタイプのものと比べてかなり控えめなこちらのお品。

その魅力がどこにあるのかといえば、ご覧頂きますようにデザインのシンプルさの中にある、計算されたバランスの良さと、そしてその中で煌めくダイアモンドの品質の高さでありましょう。この二つの要素が見事に相乗効果を上げ、このえも言われぬ気品に満ち溢れたノーブルな風情を醸し出しているのでございます。

TIFFANY&CO. (ティファニー) ダイヤモンド スウィング ダブルドロップ ネックレス

前出のアカデミー賞授賞式の例を再び使わせて頂くならば、ハリーウィンストンの豪華ネックレスがキムカーダシアンみたいな、見てくれ勝負の女優さんの勝負服ならぬ勝負ジュエリーとしての威力を発揮するなら、こちらはさしずめ、メリルストリープ女史あたりが地味目に決めて、逆にその知的で清楚な個性を際立たせる作戦の秘密兵器になるのでは。

その目論見が見事達成できるかどうかは、商品をじっくりご覧いただければ、想像に難くないと存じます。

【No.66】いかにも作家物風ボルダーオパールリング

ボルダー オパール ダイヤ リング

スタッフのひとこと

アートな風情のインテリ女を演出する個性派リング。これであなたの馬鹿は隠せる!

さて、本日ご紹介いたします新入荷のお勧め商品は、こちらのボルダーオパールの指輪。

ボルダーオパールとは聞き慣れない名前だとおっしゃる方も多いかと存じますから、まずは石の説明から。

これは、以前、オパール原石をそのまま活かして指輪に仕立てた商品の時もご説明した内容と重複しますがまあ、お聞きください。

ボルダー オパール ダイヤ リング

オパールという宝石は岩と岩の隙間にできるのですが、そのすき間があまりにも狭いと、原石のみを取り出す事が難しい。

それじゃ岩もろとも切り出しゃいいじゃん、ってことで切り出されたのが、母岩付きオパール、通称ボルダーオパール。

岩の表面に薄く張った氷のように岩にオパールが張り付いていますので、岩石部分を含めたこの石全体のキャラット重量を云々するのはあまり意味の無い事で、だいたい取引は大きさと、見た目の美しさで価格が決まる様でございます。

ボルダー オパール ダイヤ リング

綺麗なものは一瞬ブラックオパールかと見紛うようなものもございますが、ブラックオパールはしっかり厚みがあるオパールの塊なので、ちゃんとカボションカットにして、こんもり盛り上がったドーム状なのに対して、こちらは岩に張り付いた薄い層なので、いくら母岩と一緒に切り出しても盛り上がりの無いプレート状になってしまうんです。

しかしその分、ブラックオパールに比べてお値段は断然お安い。そこに目を付け一時期ジュエリーデザイナーの製品などによく使われていましたね。

ボルダー オパール ダイヤ リング

話はちょっと横道にそれますが、ジュエリーデザイナーの作品って結構安い宝石材使ってるものが多いんです

カルセドニー、クォーツの類の変わり種、例えばモスアゲートとかランドスケープアゲート。ルチレイテッドクォーツにスモーキークォーツね。あと、フェルドスパーの仲間のラブラドライトとかムーンストーンなどの特殊効果石。

見た目変わってるけど宝石材としては安価。こういうのを使ってデザインの妙でオリジナルジュエリーを拵え高く売る。みなさんなかなかの商売人です。

そうそう、誰とは申せませんが、ヨーロッパの蚤の市などで安く売られてるエマーユという七宝焼きのタブレットを使ってオリジナルジュエリーを仕立て、ひと財産を成した有名ジュエリーデザイナーのおられますね。

ボルダー オパール ダイヤ リング

さて、それではこちらのお品。彫金細工風の腕に枠留めのボルダーオパールを張り付けたような、いかにもジュエリーデザイナーの作品っぽい造り。

一瞬ボルダーオパールの使い手、翁淳先生の作品かと思ったんですが、トレードマークの「翁」の刻印が無い。有っても、無くても中古になりゃ大差ないんですけどね。

さあ、この美しくノーブルで、深く、かつ透明なブルーの非加熱サファイアを用いた完全手作りと思われる逸品。通常百貨店のホテル催事なんかで並んでたら五百万は下らないシロモノ。質屋で買うとホレこの通り嘘みたいなお値段。宝石マニアなら間違いなく放っておけない品物でございます。

それよりもオパールにご注目下さい。

全体に赤い斑が出ていますでしょ。ブラックオパールでもボルダーオパールでもこういった赤斑の入ったのが値打あるんです。

何でって?綺麗で華やかだからに決まってるでしょ。リング枠も厚みがあって全体的にずっしりしてます。如何にも手作りの逸品という風情でございます。

ボルダー オパール ダイヤ リング

まあ、唯一の欠点はリングの地金表面に施された彫金細工風文様がリング全体を覆っている為、サイズ直しがきかない点。

多分こちらのお品、最初からクチュール品として仕立てられたものなのでございましょう。やっぱ違いますね、商品としての気品が。

というわけでお客様の方でお指のサイズをライザップなどご利用いただき、調整いただく仕組みとなってございます。ごめんあそばせ。

【No.65】非加熱ビルマサファイアの目にしみる青

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

スタッフのひとこと

非加熱という言葉に惑わされてはいけません。これは人に例えて言うと、スッピンということです。大事なことはスッピンで尚且つ美しいということ。そんな女性滅多にいませんよね。だからこその希少価値なんです。もちろん、こちらはその類稀なる美女の方。

天高く馬肥える秋と言うが如く、秋の空はどこまでも澄みわたり、どこまでも高く、まるで吸い込まれるかと思うほど美しいものでございます。

この美しさがきっとブルーサファイアの澄んだブルーと関連づけられ、サファイアが9月の誕生石となったのではないでしょうか。

ということで、今回ご紹介いたしますお勧めのお品は、こちらの大変美しいサファイアのリングでございます。

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

百聞は一見に如かずと申しますよう、こちらの写真をご覧頂ければ、もうこの指輪の素晴らしさはほとんどご理解いただけたも同然。

美しいものをご覧頂いていながら、更にそれをお節介にも説明するなんぞは愚の骨頂、無粋の極みとは存じますが、これもわたくしのお仕事の一環。ご辛抱いただき、お付き合いの程よろしくお願いいたします。

さてこちら一目見ただけで、いいものだと分かるのは、この素晴らしい拵えのなせる業。ご覧の通り中石のサファイアをマーキーズとペアシェイプ、そして数個のメレダイアモンドが一見すると不規則に囲んでいます。

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

しかし不規則にみせながらも絶妙なバランスを保ち、ちゃんと対象性を保っているところがにくい。

これは多分、実際に石を紙の上かなにかで実際に並べてみて、作り手の納得いく角度や数、配置を探りながらデザインしていったではないでしょうか?実際図面だけでごちゃごちゃやってるよか、そういったやり方のほうが現実味が出ていい場合あるんです。

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

では、なぜにこの指輪の作者はそこまで凝って製作にあたったのでしょうか。

そうです、もちろんこの中石となるサファイアの美しさに魅了されたが故の献身、情熱のなせる業。

さて、こちらのサファイア、ご覧のとおり、まさに秋の空とはかくやと言わんばかりの、透明で澄み切った爽快なブルー、実に美しい、しかもその上非加熱!

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

市場に出回っているサファイアやルビーといったコランダム宝石はほとんど加熱して色味を引き出したり、改善したりしているのです。

これは地中の中で起こる造岩作用の一部を人の手で完結させるという理屈で、宝石の処理、トリートメントとはみなされず、エンハンスメントと言って、まあ軽いお化粧程度ということで、業界内においては許容範囲内の改良と認められている方法なのです。

ところが、こちらのサファイアはそのようなお化粧が一切なされていないのにも関わらずこの美しさ。人間で例えますとスッピンのままの美女。それが、大方のお化粧したご婦人よりも抜きんでて美しいというような事になります。

ビルマ産非加熱サファイアダイヤリング

そりゃ作り手さん一目惚れで気合入ったんでしょう。

世間では非加熱をうたって全然美しくないサファイアを堂々と高額で販売したりするところもありますが、そんなのに騙されてはいけませんよ。それは単なるスッピンのブスですから。あら失礼、口が過ぎました私としたことが、ごめんあそばせ。

さあ、この美しくノーブルで、深く、かつ透明なブルーの非加熱サファイアを用いた完全手作りと思われる逸品。通常百貨店のホテル催事なんかで並んでたら五百万は下らないシロモノ。質屋で買うとホレこの通り嘘みたいなお値段。宝石マニアなら間違いなく放っておけない品物でございます。

何はさておき、早い者勝ち!とんだ掘出しモンでござんすよ、旦那。

【No.64】花珠真珠のピアス [当店オリジナル]

花珠 パールピアス

スタッフのひとこと

伊勢志摩直送とれとれぴちぴちの花珠真珠を用いたピアスを作ってみました。自信のオリジナル商品!

さて、本日ご紹介いたしますのは、こちら質屋でありながら、あら不思議。新品のパールピアス大量入荷のお知らせ。

花珠 パールピアス

質屋で新品と申しますと、たいていの方がご想像なさるのが、業者さんが資金繰りかなにかで在庫を処分したのではと思われがちでございますが、実はそうではないのです。

こちら、真珠の本場伊勢志摩から大量に買い付けましたるパールルースを用いまして、大阪は宝飾業者ひしめく街、南船場でピアス加工を施したという、まぎれもない当社オリジナルの製品なのでございます。

さて、この真珠の仕入先なのでございますが、実は今を遡る事四十年と申しますから、大層な昔でございますが、わたくしが新卒、新入社員といたしまして、某老舗宝石店に入社致しましたおり、一年先輩に伊勢志摩で手広く真珠養殖を手掛けておられます業者さんのお世継ぎ、御曹司が、宝飾の修行、昔で言うところの修行奉公の名目でこのお店に在席されていたのでございます。

花珠 パールピアス

この御曹司とは配属先が違ったので、職場ではあまり接する機会がなかったのですが、この方の同期でわたくしの配属先の先輩にとんでもない遊び人がおりまして、しょっちゅう私をカラオケだスナックだディスコだと連れ回す。こっちも先輩の誘いだから無下に断れない。その配属先の営業時間は夜9時までなんで、飲み会スタートが遅い分、いつも気がつくと電車が無くなっております。

お互いペーペーだから泊るったって碌なところにゃ泊まれない。オールナイトの映画館、サウナのごろ寝、せいぜいがそのころ出始めたカプセルホテル。

しかしそれも無理な場合は、この先輩の同期のよしみという事で、この御曹司の一人住まいのマンションに転がりこむ。随分迷惑な話なんですが、この御曹司極めて良い方で、いやな顔一つしないでグダグダの酔っぱらい二人を快く泊めてくださった。その頃からのご縁ですから考えたらもう長いお付き合いでございます。

花珠 パールピアス

そして、今回も後輩のお願いを快くお聞きいただき、秘蔵の海外輸出用の花珠真珠のルースをお安くお分け頂いたというわけなんです。

さて、ご承知の方も多いかとは存じますが、花珠真珠とは何かと申しますと、真珠研究の世界的権威、真珠科学研究所が定めた高品位真珠のグレード名で、真珠品質の4つの判断基準、テリ、マキ、ナリ、キズすなわち光沢、真珠層の厚み、真珠の形状、真珠表面のエクボ等のイレギュラーの4つの項目すべてが一定の高い基準でクリアされているものを言います。

簡単に申しますと極上品のパールというわけです。そんじょそこらの貝殻磨いたおもちゃとはワケが違う。

花珠 パールピアス

そんな凄い真珠のピアスをこのようなお値段でお出しできますのも伊勢志摩の先輩社長様のお陰と、弊社企業努力の賜物。

ただし、一つだけおことわりがございまして、こちらの花珠を証明いたすますギャランティーが、鑑定書の前段階の真珠科学研究所発行のソーティングという紙切れ一枚となっております。

花珠 パールピアス

この紙と商品を一緒に東京御徒町の真珠科学研究所に送りますと、もちろんちゃんとした花珠真珠鑑定書を作成してくれるわけなんでございますが、それには別料金がかかり、それを商品に添付するとおのずと価格に反映して高くなってしまいます。そんなこともちろん皆様お望みでは無いと勝手に判断しての紙切れ一枚、ご了承下さいませ。

昨今は装いすべてがライトなトレンドでございますれば、ネックレス、リング、耳飾りのパール3点セットを恭しく着けるなんて野暮の骨頂。

耳に軽く高品質パールのペアをお付けいただきますと、あらたまったお席から、普段の通勤のお供までオールマイティーにお使いいただけます。

さあ、普段ですと全部が1点ものなんで、早い者勝ちなんて事を申しますが、こちらは数がございます。ワンペアなんて言わず、ご進物、ご贈答、お茶請けに是非まとめてご注文頂けましたら幸いでございます。

花珠 パールピアス

【No.63】驚愕のダイヤモンド配列に腰ぬかす指輪

ダイヤリング

スタッフのひとこと

マーキーズの大きさをそろえ綺麗な円にするだけでも大変な作業。しかもダイヤの質が良くで均質なもんだから輝きが半端ない。これは良いもんです!

さて、今般ご紹介の運びとなりましたるは、こちら。見るも艶やかなるピンクゴールドの枠に、マーキーズカットとプリンセスカットのダイアモンドを巧みに組み合わせ、見事な三つの輝く日輪を真横に並べたるが如き、大変美しくしい細工の指輪でござりまする。

なんて、芝居の口上みたいになっちゃいましたが、写真でもご覧いただきます通り、大層変わった、また美しい細工のダイアモンドリングでございますね。

デザインを構成いたしますのは、横に並んだ三つの輪。これを外枠が石座の輪郭に沿ってカーブを描いて囲み、メレダイアがその枠上に整然と綺麗に留めらおります。

ダイヤリング

さてこのそれぞれ三つの丸い円盤、真ん中が少し大きゅうございますが、ダイアの輝きもあって、一見それぞれ一つのダイアモンドと見誤ってしまいそうですが、よく見ますと、さにあらず。

さて、どうなっているかと申しますと、それぞれ円の中心には四角いプリンセスカットのダイアモンドがセットされ、これを井桁状に4個のマーキーズカットのダイアモンドが囲んでいる。そして。それぞれのマーキーズカットの輪郭をつなげて見ると見事な真円を描いているという絶妙な細工。

ダイヤリング

何故絶妙かと申しますと、ダイアのマーキーズカットの形状に定まった基準と言うものは無く、だいたいは元の原石の形から一番歩留まりの良い様にカットされますので、縦横の対比もまちまちなら、横に膨らむアールの度合いも様々。

つまり適当に縦の寸法だけ合わせてマーキーズダイアを井桁状に組んでも、決してこんな風な綺麗な真円には絶対にならないのでございます。

想像するにこれを拵えた職人さん膨大な数のマーキーズダイアを大変な思いをして、ちゃんと綺麗な丸になる様、ダイアとっかえひっかえそろえたのでございましょう、しかも3つ分!

ダイヤリング

職人さんの手間賃てのは、大体掛かった時間で計算されますから、これには相当な工賃が掛かっているはず。てことは売価もそれに比例してお高かったと容易に想像がつく。

もちろんこんな手間暇かかる事を安い石を使ってやるなんてへそ曲がりは居ないわけで、ダイヤも飛び切り上等。普段、楽天さんに載せる場合は後から文句でも出たら怖いからってんで小心、臆病な手前、遠慮して控え目に書いてますグレード評価も、意を決してAをつけさして頂いております。

ダイヤリング

というわけで良いダイアモンドに腕のいい職人さん(腕が良くなけりゃこんなの作れませんから)の工賃が合わさって、きっとものすごいお値段で売られていたであろうこのお品。

しかし、幸いというか不幸にしてというべきか、質屋は工賃は査定に入れませんし、細かいダイアの相場は安い。

というわけでこの素晴らしい指輪が皆様にはこんなに安く買えちゃうって仕組み。

さあこの滅多にない掘り出し品を手にする果報者はどなたかな?

【No.62】王の宝石商カルティエの隙の無いダイヤリング [カルティエ]

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

スタッフのひとこと

あら素敵!そちらカルティエのラブリングじゃございません?良くお似合い。とこれ着けて言うたら気分よろしで。

「Jeweller of kings , king of jewellers 王の宝石商、宝石商の王」

とウィキペディアにもあるとおり、カルティエは1847年、ルイ・フランソワ・カルティエによってフランスはパリの地で創業されて以来、ヨーロッパの王侯貴族御用達の宝石商として不動の位置を築きあげ、今に至るも世界中の富豪、セレブたち憧れのジュエリー・時計ブランドなのでございます。

しかしカルティエさん、なにもお金持ちの方向ばっかり向いてるばかりじゃございません。ちゃーんと庶民のアタシらどもにもお情けをかけて下さってるのでございますよ。

あれ、お忘れでござんすかい?薄情だねーお前さんも。チャラついてた若い頃、先を争って3連のトリニティーリング着けてたのは、どこのどなたさんでしたっけね?結婚指輪はラブリング二人でお揃いで着けようなんて彼氏に我儘言ったのをもうお忘れですかい?

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

そうです、カルティエさんはちゃーんと我々庶民の事も考えて、安価なアクセサリーラインも用意してくださってんですよ。

てか、王族、貴族、お金持ちだけにとらわれず、全階層、階級から儲けを巻き上げようって魂胆。まあ、商売としては当然ですが、商魂たくましい!

でも、これ言うは易し行うは難しで、なかなかできる芸当ではございません。高級ブランドだからこそ出来る、下々の者にも分けてつかわすといった芸当。

しかしやりすぎると今度はブランドイメージが壊れてしまいます。匙加減が肝要。これすなわちマーケティング戦略と言うそうでございますね。

さて、庶民がトリニティーだラブリングだと騒いでおりますのをよそに、本物のお金持ち、ブルジョアジーの皆様がおつけになる、ちゃんとしたカルティエのリングがこちら。ちゃんとしたとは前述のとおり、カルティエをカルティエたらしめる本格的ハイジュエリーラインの事。

ではこの指輪を詳しく見てまいりましょう。

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

こちら中央が極端に幅広になったゴールド枠のダイアモンドパヴェセッティングのリング。その幅広中央部分に非常に良質のマーキーズカットのダイアモンドが縦方向にセットされていますのはご覧の通りでございます。

さて、こちらのマーキーズダイア、ブランドジュエリーのご多分にもれずリングに石目の刻印がございませんので、ダイアモンドの縦横深さのサイズからざっと割り出した数値で約0.6キャラット前後かと推測されます。

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

またこちら販売された当初はダイアのグレードを表す鑑定書が付属していたものと思われますが、お買取りの時点では無く、これも目視での推測で恐縮ですが、Fカラー以上、VSクラス以上は間違いございません。

またこのようなファンシーシェープと呼ばれる変形のダイアモンドグレーディングにはカットの項目はございませんが、こちらも上下左右、シェイプもカットも完璧にシンメトリーのとれた、細すぎず太からず、姿かたち、色、内包物とすべてがとても美しいダイアでモンドございます。

そして、このダイアの留めですが、マーキーズの留め方で多いのが、形が歪という事もあって、やたら爪の多いのがあるのですが、これは中石がまるで蜘蛛に抱きかかえられてるみたいで、あまりいただけない。

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

ところがこちらを見るとなんと上下2か所で押さえているだけなのでございます。

この留め方はマーキーズの理想の留め方。一番石で欠けやすい部分を保護すると同時に見た目もすきっとしてる。

しかし欠点はやはり石が外れやすいんですね。

ところがこちらのリング、上下の頑丈な爪が非常にしっかりとダイアを押さえていると同時に、石座の受けが石の形に添ってぴったり隙間なく、石が動く事の無いように支えているのです。この細工によって石の外れる確率は大幅に軽減されます。

しかしこんな留め方だと、ダイアそれぞれに合わせて枠を一から拵えないといけないから、大変コストが掛かります。ブランドジュエリーだてにお値段が高いわけではないのですよ。

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

そして最後は周りのメレダイア。

カルティエに限らず有名ブランドジュエリーの何が凄いかって、このメレダイア。世界で流通している良質のメレはみんなこやつらが金に糸目を付けずに買い占めているに相違ございません。

というわけでこちらハイジュエリーといっても別に舞踏会や園遊会など、しゃっちこばってお出ましになる時用の勝負ジュエリーではなく、いたって普段用のさり気なくカジュアルに着お着け頂く指輪。

Cartier(カルティエ) マストマーキース ダイヤリング

お友達とのカフェのひと時、このリングをさりげなくお着けいただいて、お友達の結婚指輪代わりの傷だらけになったラブリングを褒めて差し上げては如何でしょう。

「あらっ、それってカルティエのラブリングじゃございませんこと?まあ、マリッジリング!素敵だわー、羨ましいー。私もそんなの欲しかったー」

その時のアールグレイのなんと香しいこと

【No.61】白雪姫をも目覚めさせる眩しい林檎

ダイヤペンダントトップ

スタッフのひとこと

「君は僕の目の中のリンゴだ」と盲目のスティービーワンダーが歌ってて、何のことかさっぱり意味不明なんですが、これは一目瞭然、ビカビカに輝くダイヤのリンゴ。リンゴスター、違うか?

アップルと言えば、まず思い浮かぶのはiPhoneのアップルコンピューター。

しかし、我々ビートジェネレーションはアップルと言えば、ビートルズのレコードレーベル、アップルレコードが先ず念頭にうかびます。

日本では東芝EMIが発売元でしたね。昔の黒いビニールのレコード盤の真ん中に青りんごの図柄、A面がリンゴの皮つき側面図、B面が半分に切った側面断面図で遊び心があって斬新でした。

「そもそも、なんでリンゴなんやろ?」

「そりゃ、リンゴ・スターがおるからちゃうん」

と言うのが定番のジョークやったんですが、スティービーワンダーの名曲「You are my sunshine of my life」の一節に“Apple of my eye”というくだりがあります。

これはとても大切な人や物を形容するときに使う慣用句やそうで、日本語でいう目に入れても痛くない、というほどの意味だそうですな。ひょっとするとこんなところがネタ元かもわかりません。

といろいろ詮索いたしておりまと、天国からジョンが降臨してまいりまして

「勝手な出まかせ言うんじゃねーよ。陳腐な解釈などまっぴらだぜ。アップルの語感と見た目のクールさだけでポールと俺で決めたのさ。リンゴなんてなにも関わっちゃいないし。アップルのノートパソコンの蓋のリンゴのマークもクールだろ?畜生パクリやがって!」

わっ!ふと我に返るとこのペンダントが眼前に。

そや、このペンダントの事を書こうと思って色々思慮を巡らせてたらジョンレノンまで飛び出してきた。あーびっくりした。第一あのおっちゃん天国なんか無いと想像してご覧言うてたんちゃうん?

ダイヤペンダントトップ

という訳で、こちらのリンゴのペンダント。

ジョンに言われて初めて気づいたんですが形自体が非常にいいですよね、リンゴの形ってバランスが良くて可愛らしい。そう思いませんか?

それでもエライ高いやん。中古でそれっておかしない?ぼったくってんのちゃうん?とお叱りの声が画面の向こうより聞こえてくるような気がいたしますが、またジョンか?

ダイヤペンダントトップ

いえいえ、こちら、いたずらに高いわけではございません。

このお方をただの越後のちりめん問屋の隠居と思ったら大間違い。恐れ多くも…恐れ多くも実際の正体はよくわからないのですが、ダイアモンドの品質が半端なく素晴らしい。

ダイヤペンダントトップ

このリンゴの表面びっしり覆った2.1キャラットのダイアモンド。海外のブランドジュエリーに使われているダイアモンドに一歩もひけをとらない極上のメレダイア。

業者間の取引価格で申しましてもガイの10万は下らない、つまり1キャラットあたりの価格が10万を下回る事は無いような代物。という事は当然、輝きも半端ない。

こちら想像するに、現在はペンダントトップのみの状態でございますが、元はネックレスも付いた状態で、そのネックレスにこの凄い品質を裏付けるブランドなりメーカーの刻印があったのではないでしょうか。

ダイヤペンダントトップ

金性刻印がPt900ですから国産のものだと思われますが、元は由緒ある国産メーカー、ブランドが展示会用か何か、富裕顧客層向けにあつらえた品物に相違ありますまい。

実物をお見せできないのが残念なくらいの輝きは、毒入りリンゴで深い眠りに落ちた白雪姫を一瞬にして目覚めさすくらいの威力ででございますよ。

さあ、躊躇いは捨て、買い物かごにすすむのです。

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