スタッフによる宝石ブログ

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【No.100】私をクラブに連れてって! [ギメル]

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

スタッフのひとこと

ルネ・ラリックを脅かすギメルの傑作

あれ!シャチョ―、旦那、お久しぶりでござんすねー。近頃めっきりお見限りで。もう、こちとらすっかり見捨てられちまったかと思って、先だってもカカアと首くくる相談してたとこなんすよ。

えっ、なぜって?野暮な事を言っちゃいけませんやね。社長の御贔屓が無いことにゃ、こちとら窯の蓋も開かないもんだから、毎日のおまんまにも事欠くありさまで、こんなことならもういっそ二人であの世でも行って添い遂げようつってね。

なに?もう添い遂げてるって?なるほど、そうにちげーねー、どーもそそっかしくていけねーや。で、なんの話でしたっけ、あっ、そうそう窯の蓋も開かないからおまんまの食い上げってことで、やい!どーしてくれんだちくしょーめ、この野郎―!

って、冗談ですからね。怒っちゃいやですよ旦那、大社長、よっ!

そうそう、肝心な事を言いそびれるとこだった、いけねーいけねー。

いやね旦那、良―ぃ掘り出しモンが入ったんでございますよ!

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

なに?お前の掘り出し物は当てにならねー?冗談言っちゃいけませんよ、こう見えても嘘と坊主の頭はゆった事がねーんだべらぼーめ。見くびってもらっちゃ困りますぜ旦那、事と次第によっちゃいくら旦那と言えど勘弁しませんよ。

なに?そう気色ばむな、冗談だハハハって、笑ってやがる。相変わらず人が悪いよ、旦那。あまり莫迦を気安くからかうもんじゃありませんぜ。

そうそう、掘り出し品の話だ。さあ、その掘り出し品てのがこれだ。さ、どーだい、とっくりと見てくんねー、なかなかオツなもんでげしょこのシナモノ?ぐうの音も出ないってとこじゃないっすか?

え、なんだそれって、見ての通り蜂でござんす、カエルに見えますかってんだこれが?蜂は分かっている、その蜂がどうしただって?何だ、社長何にもわかっちゃいないね、まいっちゃうよー。それでよく大会社の社長が務まるもんだ、あきれ返っちゃうねホント。なに?CEOだ、知らねーや横文字なんざ。

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

これはね、日本が世界に誇るギメルっていう宝飾メーカーのピンブローチでさ。どう?びっくりした?なに?ギメルってなんだって?ダメだこりゃ。

あんたギメルも知らないの?あっしらのようなしみったれた貧乏長屋に住んでる町人ならいざ知らず、社長ってからにはあんたブルジョワだろ?知らないなんて言ったら恥だよ。笑われるよ。大恥巨泉もいいとこ。恥ずかしーねーこの人は。

ま、知らねーんだったら教えてやっけど、このギメルってメーカーは例の皇室御用達のミキモトと並び称される日本が世界に誇る宝飾メーカーなの。なんせ本社が日本のビバリーヒルズって呼び声も高い芦屋の六麓荘ってとこにあるってーから凄げーだろ。なに、近所の苦楽園ってとこに住んでんのアンタも、凄いね!じゃ余計に知っとかなきゃダメじゃない、ご近所のよしみで。

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

なに?あそこは豪邸ばっかりでそんな工場みたいなモン無いぞって、そりゃあるもんですか。多分そこ一件だけでしょ。元々がお金持ちの芦屋マダムの趣味が高じて宝石作り出したのが始まりだそうだから、俺たち貧乏人が狭い裏庭にバラックおっ立ってて、趣味の日曜大工の作業場にするのといっしょで、それがたまたま六麓荘って場所だったんだろーさ、知らねーけど。

なにせね、ここの品物は未来のアンティークジュエリーって呼ばれてるくらいで、これから先の百年か二百年後か知らねーけど、将来絶対アンティークとしての値打ちが出る事間違いないってくらいすごいもんなんだ。言わば未公開株の先物買いみたいなもんさね。

それが証拠に、見てくださいよこの蜂のサマ。今にも蜜を吸いに花に留まろうとしている様子みたいでいじらしいじゃござんせんか。

そしてこの羽に留めてあるダイアモンド。これ以上ないってくらいの高品質のメレダイアモンドを大きさをわざと違えてランダムに留めてあるってとこがミソだ。この細工できっと羽の躍動感を出そうっていう狙いだね。

そしてこのイエローベリルの胴体がいい仕事をしている。まろやかな円錐形に切り出された透明のベリルが見る角度や、光の加減で実際の蜂の胴体みたく微かに縞模様が浮かび上がる仕掛けでござんす、どうです参った?

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

ま、そのアンティークとして将来値打ちが出るかどーかは保証の限りじゃございませんが、これ着けて旦那のよく行く銀座や新地のクラブ行ってごらんよ、もう女の子からの受けが断然違うのは間違いないね。ゼニアのスーツにエルメスのネクタイバッグ財布一式で決めて、パッテックの時計腕に巻いてるからって安心してちゃダメですよ。来る客みんながみんなそうなんだから。それにプラスアルファ―の小粋なナリしてかないとモテませんぜ百戦錬磨のお姉チャン達にゃ。

なに?お姉チャンにその品物の素性が分かるかだって?当り前じゃござんせんか!あの人達の博識ぶりはそんじょそこいらの並みの人間を遥かに凌ぐってんだから。みんながみんなお化粧した池上彰みたいなもんだぜ旦那。なに?気味が悪い。例えですよ、例え、そのまんまを想像してどーすんだよ。

なんせね、来るお客みんなが社長みたいな企業家だったり政治家だったり教祖だったり裏社会の大親分だったりだから、ちゃんとそれぞれに話を合わせられるように、フォーブスから実話ナックルズまで隈なく目を通して勉強してるってこった。それに加えてのブランドの知識が半端ねー。こちらの知識はなんと二段構えになってるっていうから恐ろしい。

一番目はお客が身に着けてる高級な服やら身の周りの品物、これらを賛美していい気持ちにさせる為の業務用知識。高級紳士服、靴、時計、バッグ、それに香水の香りや補聴器の銘柄まで。これらの知識を幅広く頭に入れとかなきゃいけない。向こうが得意げに自慢してくる前に褒めてこそ手柄だ。「あら、このお時計、リシャールミルじゃございませんの、シャチョー、センセ、素敵!」ってね。そんな時計が買えるあなたの甲斐性が素敵ってこってすよ、この場合の素敵は。

で、二段構え二つ目のブランド知識が、実際に自分で欲しいモノの方の知識さね。平たく言やーオネダリする方のリストでござんすよ。こちらはもう出勤前の美容室で各種ファッション誌での予習復習が日課になってますからね。

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

さて、それでだ、夜の街で受けがいいのが、こちら二つ目のリストに入っていそうなものを身に着けるのがコツなんですよ。いくら、言葉の上で褒めてくれたって、機械式高級腕時計なんてモンには女は基本興味無いの、分かる?せいぜいが質屋に持ってったらいくらで売れるだろうってのが関の山。

ところが宝石、ジュエリーなんてのになると実際自分でも着けてたりするから、とても身近で親近感が湧いて、所有欲も半端ないわけでございますよ。銀座や新地のお姉さんがさりげなく着けてる、シャチョーから見たら何の変哲もないダイヤのファッションリングでも、そういう高級な場所でお勤めの女の子の持ち物ってものはしっかりした、素性の良い、こだわりの逸品てのがほとんど。指輪の腕の裏には、例えばこちらの蜂のお仲間だったら、恭しく"Gimel"って刻印が入ってるわけ。

だからそんなの着けた娘がさ、この蜂が社長のスキャバルの生地の背広の襟にちょこんととまってるの見たらさ、もうキャー、可愛-!ってなっちゃうって寸法。もちろん男女兼用で着けられっから、その場でオネダリされるかもわかんないよー。「シャチョー、これ私にちょーだーい!」って、弱っちゃうな―って?なにニヤケてんだよ、買いもしないうちから。

Gimel(ギメル) イエローベリル ダイヤ ブローチ

いいだろ?ね?さ、買っとくんなさい。なに?ちょっと考えさせてくれって。そりゃいいけど考えてるうちに売れちゃうよ。なにせこの手の高級ピンブローチってモノは、こっちがあきれるほど足が速いの。入荷した尻から売れてくからびっくりしちゃうよ。

この蜂の前にも、これも国産だけどモノが良いので評判のチャーってとこの高いピンブローチが三つあったんだけど、立て続けにあっと言う間に売れちゃったんだから。みんなお姉チャンにモテたいんだろーねぇ。こっちも野郎だからその気持ちわかるけどさー。一度はこんなの着けて、お姉チャンにちやほやされる身分になってみたいもんだよ、まったく。

良いの?買っとかなくて、知らないよ売れちゃっても、これ一個きゃ無いんだから。売れたら今度いつ入ってくるか知れたもんじゃないんだから。ホント知らないよ売れちゃっても。

【No.99】妄想かき立てられる魅惑の宝石

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

スタッフのひとこと

これ見て一瞬で良いものってお分かりになる人は、これまで結構な授業料をお支払いの事と推察致します

楽天さんで中古宝石を細々と販売させていただいているのですが、通常、売れた商品に関してどんなお方が購入したかなんて、いちいち詮索などいたしません。しかし、たまに高額品や変わったデザインの商品なんかが売れると、こんな品物を実物もご覧にならず、パソコンやスマホの画面の写真だけを頼りに、いったいどんな方がご購入なさったんだろうかと気になります。

例えば、百万円を超える品物を写真だけでポンと買うなんて、余程の資産家に違いない。そういう方々と我々とでは金銭感覚自体がずれていて、我々の千円の感覚がこういう方は一万円か、そのまだ上の単位なんだよきっと。などと要らぬ想像を巡らせます。

あるいはまた、よく仕事帰りに立ち寄るスーパーのレジに、レジ係に相応しくない、と言えば語弊があるかもしれませんが、上品な、いかにも中流家庭かそれ以上の奥様然としたご婦人が立っていて、しかも見かけを裏切らない丁寧な言葉遣いと上品な身のこなしで接客をしている。

こうした、その場に相応しくない、場違いな人物を目の当たりにした時なんかも、またもや要らぬ野次馬根性が頭をもたげます。

いったいどんな不幸がこのご婦人の身に起こったのだろう。働き盛りのエリート社員の夫が不慮の事故または病気、ひょっとしてコロナなんかで急逝したため、家族の生活を支えるが為の慣れぬパート勤めか?それとも夫の浮気が原因の離婚による独り立ち?いや、実は奥さんの方の美徳のよろめき三島由紀夫。娘の家庭教師と不義密通の末、家庭を捨てて、まだ学生の身の青年と出奔駆け落ち逃避行のすえの四畳半一間暮らし。その背徳の蜜の味の生活を細腕一本で支えてるのか?

などと、いろいろあらぬことを妄想してしまうのでございます。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

さて、こういったあらぬ妄想が起動するのは、実は入荷する商品に関してもたまに起こるのでございます。

まあ、ブランド品に関しては、ちゃんと商品にご丁寧にも刻印までしてもらってますので、これの正体に関しての無駄な詮索は無用。ただし、廃盤なんかの商品になりますと、果たして何時ぐらいに製造販売されていたのかといった、詮索ではなく調査が必要となったりはいたしますが。

あと、一般的に市中に流通しております、所謂、国産のノンブランド商品というのも大体は、同じようなパターンの繰り返しと、それのアレンジによってデザインが展開されておりますゆえ、初めて見たようなデザインでも、だいたいは「あー、この品はあのデザインのこーゆー流れ、または進化系ね」みたいな感じで自然と腑に落ちるのでございます。

ところが、これからご紹介いたします、ご覧のルビーのペンダント、これが曲者。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

この商品、あたかも果実を模したようなプルンとしたカボッションカットの赤いルビーに、その葉っぱを想起させる緑鮮やかなエメラルドが可憐な風情で添えてある、実に可愛らしいデザイン。もう一見しただけで、先ほどのスーパーマーケットのレジ係の女性ではございませんが、素性の良さが明らかな品物。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

そこで、「ほう、いったいどこのブランドかね、お前さんは?おじさんに見せてご覧」などと商品に語り掛けながら品物の裏側を点検致します。だいたいブランドなり作家物なんかは裏側にその正体を明かす刻印が打ってあるはず。ところがこの商品、それが見当たらない。

「そうか、奥ゆかしく目立たないように、バチカンかペンダント枠側面に細かく打ってるに違いない」

そう思い、細部を確かめるもそれらしき刻印、ホールマークの類がまったく見当たらない。

「えっ、これってもしかしてブランドじゃなく一般のジュエリー?」

との疑念が浮かび、もう一度商品をルーペで細かく検分いたします。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

中石のカボッションルビーは当然カボッションにしてある理由として、透明ではなく半透明の結晶。しかし目立つインクルージョンや色むらも見当たらず、にごり気のない綺麗なルビー特有の赤色を呈しており、カボッションルビーとしては非の打ちどころがございません。

また、バチカンにあしらわれている三枚のエメラルドも、三つともがグリーンが冴えてきれいな色味。それらが綺麗に色目、形をそろえて、ルビーの赤を引き立てます。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

そしてルビーを三重に細かく取り巻くメレダイア。これがブランド製品と断定する決め手と言ってもいいほどの実に綺麗なメレダイアが使われているのでございます。実際このクラスのメレダイアは逆にブランドでなければ手配できないクラスなんだけどなー?

さらに謎が深まったところで再度、裏側の刻印を検分いたしましたところ、金性がK18とあります。さらにそれぞれの宝石の石目がきっちりとctマーク入りで打刻されております。このことから、この製品が国産のものであろうことが推測されます。なぜかというと海外の製品の場合18金は750と刻印されるのが一般的で、細かい脇石の刻印はおろか中石の刻印も無いのが普通。

ルビー エメラルド ダイヤ ペンダント

ペンダント裏側にも何かの紋章の様な模様をわざわざ細工してあることからしても、これは単なる一般ジュエリーでないことは確かなのですがさて、ではその正体とは?

さて、ここからわたくしの推測なのか妄想なのかが発動するのです。

このペンダントトップには元々ネックレスが付属していたはずで、実はそのネックレスの方にブランドなり作家なりの印があったのではないか?

あるいはまた、これは宝石にうるさい金満マダムが、この中石のカボッションルビーを先ず入手して、そののち完全オーダーメイドによって出入りの宝石商に、工賃の多寡には糸目をつけずに作らせたのではないか。

いや、これは都市伝説などによくある、世界を裏から支配する闇の秘密結社のメンバーにのみ許され配布される、その構成員の印。裏側に細工されている不思議な文様こそ、何を隠そう、その秘密結社の秘密のエンブレムなのである。

かくの如くに、次から次へと老ジュエラーの妄想を膨らませずにはおかない、魅力ある正体不明の本格ジュエリー。写真からでも商品のオーラが伝わるはず。

わかる人にはわかるよね!

【No.98】ギメルのダイアはドッペルゲンガーの巻 [ギメル]

Gimel(ギメル) ダイヤリング

スタッフのひとこと

どこにでもあるデザイン。でもギメルはその輝きで、一目で違いがわかります。

独り細道をとぼとぼと歩いていると、前から歩いてきた人と偶然目があった。すぐに知った人だと認識したのだが、誰だったか思い出せない。向こうもオレの事を知ってるようで、一瞬はっとしたのだが、あちらも同様、オレの事を見知ってはいるが、誰だかはっきりしない模様。

接近するにつれて相手の顔がはっきりしてきて、どうも同年配らしく、白髪交じりの髪の毛と無精ひげが口元を覆っている。多分昔どこかで会った事のある人なのか。お互い老けて、分かりにくくなってるに違いない。でも、どこだ、どこで会った。仕事関係あるいはもっと前の学生時代?思い出せ、思い出せよ、おい!と自分を叱咤しても記憶が蘇らない。

そうこうするうちに、とうとうすれ違うところまで来て、もう一度チラッと視線を向けると、向こうも同様で、目が合ってしまった。気まずい、と思う間もなくお互い行き過ぎてしまった。「あーっ、クソー!誰だっけ、絶対知ってるヤツやねんけどなー、アカン思い出されへん」。

振り返って確かめたい気持ちもあるが、向こうも同時に振り返ってたら、実に間の悪い事になる。何事もなかったように、そのまま行き過ごそうとしたとき、突然後方から声が掛かった。

「ちょっと」

「良かった!むこうが思い出してくれたんや」と思いこみ、「はい」と言うが早いか振り返ってみると、案の定、例の男が振り向いてこちらに向かって近づいてくるではないか。

オレは意味のない愛想笑いを浮かべ、彼の来るのを待ちながらも、早くその正体が知りたい気持ちを抑えきれず、うずうずして待っていると、突然彼が言い放った。

「ジブン、オレやんなー?」

「へっ?なんですって?」

「いや、あなたは、私ですよね?」

そ、そーやったんや!こいつはオレや!オレやがな、間違いない!どおりで知ってるわけや!なんや、しょーもな、って、ちゃうちゃう!何でや!何でオレが二人もおるねん!おかしいやろ!ありえへんやろ!いや、まて、ドッペルゲンガーいうの聞いたことあるぞ。この世には自分にそっくりな奴が三人いてるいう話。それや。でも待てよ自分のドッペルゲンガー見た奴は死ぬらしいやんけ、ヤバい!

上記思考が脳裏に一瞬でひらめくと、オレは恐怖のあまり大声で悲鳴を上げた、

「わーっ!!死ぬ―!」

自分の絶叫で目が覚めたオレは、しばらく寝床で茫然自失の体。

「けったいな夢やったなー、なんやったんや? あれ、なんや、もう起きる時間やんけ、けたくそ悪い朝の目覚めやなー」

などと独り言ちながら寝床を出て階下に降りる。珍しく家内がもう起きているらしくキッチンに人影が見えたので、

「今、けったいな夢見て、うなされて跳び起きたんや」と話しながら家内の方へ近づくと

「夢って、こんな夢か?」と言って、家内じゃなくオレがパテーションの陰から不意に現れた。

「わーっ!また出たー!」

言うが早いか動転したオレは、一目散に家から裸足のまま外へ飛びだした。

そこでさらに、信じられない光景を目の当たりにしたのだ。

なんと、外には幾人ものオレが、しかも今起き抜けの、パジャマ姿のオレそっくりそのままの姿かたちのオレどもが、三々五々同じ方角に向かって歩いているではないか。

その光景を目にしたオレは、もう絶叫することも忘れ、茫然と立ち尽くすのみ。

すると、ちょうど横を通り過ぎた一人のオレが不意に声をかけてきた。

「おい、何してんねん?行くぞ」

オレはびっくりして、その声をかけてきたオレに恐る恐る尋ねた。

「えっ、どこへ、何処へ行くんや?」

「バスに乗るんや」

「えっ?バス、バス乗って何処いくんねん?」

「知らんけど、とりあえず行こ」

もちろんオレはオレ自身の誘いを断る事など論理的にもできず、そのままオレの、いやオレたちの歩く方角へ、皆と同様パジャマ姿の夢遊病者のようにとぼとぼと歩みを進めていったのだった。

しばらくして大通りに出ると、大型バスが何台も列をなして駐車していた。

何台目かのバスの乗車口に、一人のこれまた同様のパジャマ姿のオレが立ち、乗車の差配をしていた。きっと奥のバスから順番にオレ達を段取り良く乗車させているのだろう。

「はーい、みんな、やなくてオレ等早よしてやー。このバスはもうじき満員になるからねー、あとのオレはこの前のんに乗って下さーい。乗ったら順番に奥から詰めてってねー、頼んます―」我ながら、何やら気の抜けた声とやる気のない態度。オレってこんな奴やったんかー、こんなんじゃ、そりゃアカンはなーと自嘲しつつバスに乗り込む。

「はい、このバスはこれでお終い。後のオレたちは前のバスに行くからねー」と言いながら、係員風のオレは前のバスに移動して行った。

最後の乗員となったオレは、バス前方の乗車口から乗り込んだ瞬間に思わず息をのみ込んだ。バスの後列から先頭の座席まで、全く一糸乱れぬ同じパジャマ姿のオレ全員がすべての座席を満たし、今最後に乗車してきたオレを見つめるが如く、前方の一点に視線を集中させ、身じろぎひとつせず静止していた。

その時、オレは一種、鳥肌たつような感動を持ってこの光景に目を奪われたのだった。

「なんか、壮観やなー!これだけ姿かたちの同じ人間が規則正しく並んで身動きひとつせんというのは、一種の規則性、連続性の美いうやつや」

「あれ!これって、これって、そうや指輪のパヴェ留めと一緒やん!」

と言う事で今回はギメルのダイアモンドパヴェセッティングリングのご紹介。

Gimel(ギメル) ダイヤリング

さて、むさくるしいパジャマ姿の老人でも、同質のものがある程度の数でまとまって規則正しく配置されますと、かくのごとき壮観な景色となるわけでございますから、これが美しいダイアモンドを規則正しく配置した場合のその荘厳なサマというものは、筆舌に尽くすことができません。

ご覧いただいておりますギメル社製ダイアモンドパヴェリングは、ダイアモンドがトータルで1キャラットとギメルのパヴェシリーズの中でもかなり小ぶりで質素な、気取らない普段使い用に作られた指輪でございましょう。ただ普段使い用と申しましても、さすがギメル、一切の手抜き、妥協はございません。

Gimel(ギメル) ダイヤリング

留められております全てのメレダイアは徹底した製品管理のもとで生産された工業製品かと疑うほどの一貫して相似の無色透明、良好なカット。これだけの良質のダイアモンドが揃うのは、余程力のある海外のダイアモンドサプライヤーからの供給があるのではないでしょうか。

その良質なダイアモンドの中から選びに選び抜いて、さらに均質にそろえたダイアモンドをギメル社の至宝、凄腕石留職人の手によって寸分たがわず、引っ掛かりのない見事な甲丸の盛り上がりを、上下左右歪み無くセットされております。

Gimel(ギメル) ダイヤリング

さらに驚くべきは、ダイアモンド自体の品質はまるでコピペしたかのように均質なのですが、ダイアのサイズはリング中央に膨らみを持たせたデザインに合わせて、微妙に中央に向かってそのサイズがグラデーション状に拡大しております。バスの中の私どもに例えるなら中央に席を占める私等が肥満体。前後部および窓際の席を占める私等がや痩せっぽちと言う感じですかね。

えっ、そんなしょうもないもんに例えんでもエエ、せっかくのギメルの値打ちが下がるて?

あほな事言いな、そんな事で値打ちの下がるギメルやないで。見てみ、中古言うてもこの輝き!ギメルの輝きは永遠に不滅です!

【No.97】ゴンドラの唄が教えてくれるパールの使い方

アコヤパール ネックレス イヤリング セット

スタッフのひとこと

冠婚葬祭時場所を選ばず。備えあれば憂いなし。中古ジュエリーで上等!

"命短し恋せよ乙女、朱き唇褪せぬまに、熱き血潮の冷えぬまに、明日の月日はないものを"

と歌われる「ゴンドラの唄」は、今から100年以上昔、1915年(大正4年)に日本初のミュージカル女優と言われる増井須磨子が歌う劇中歌として、吉井勇・作詞/中山晋平・作曲によって生み出され、今も数々の歌手によって歌い継がれている日本が誇る名曲の一つであります。

また、この歌は銀幕の巨匠、黒澤明監督の名作「生きる」の中で、名優志村喬演ずる、癌に侵され余命いくばくもない、定年間際の市役所の市民課長が、自らの死を目前にして、ようやく生きる事の意味に目覚め、誰もいない雪の降る深夜の公園で、ブランコに独り腰掛けながら歌う、劇中のハイライトシーンの象徴ともいえる歌として取り上げられております。

黒澤監督の解釈では、歌にある恋の意味は、単なる色恋沙汰を遥かに超えた、生きる情熱、生きる目的と言う事でありましょうか。

さて、還暦をとうに過ぎ、老境へと足を踏み入れましたるわたくし、乙女ではございませんが、この歌がひしひしと老骨に染みるわけでございます。

わたくしが若い頃にそうだったように、世間の多くの若人たちは、このような歌詞にあるような言葉で諭されたと致しましても、生きる活力、エネルギーが横溢している若い身体、精神には、今有る活力がこの刹那だけの、貴重なものであるなんてことに考えが及ぶ者はごく少数に限られる事でありましょう。

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若く、可能性が無限にあり、体力、気力のエネルギーが充満している時にこそ、人生と真剣に向き合い、目標を定め、自分の夢なり可能性にかけてチャレンジしない事には、生まれてきた甲斐が無いという事を、多くの人は志村喬演ずる死期が迫った課長さんや、私の様な老人となり人生行路の終着駅が見えてきて、ようやく気付くのでありますが、時すでに遅し万事休す後の祭り。

いや、実際人々はなにも気づいて無いわけではなく、多くの人は若い頃、大なり小なりの夢なり志をその胸に抱くわけなのでありますが、そういった自分の本当の生きがいを誰もが追求できる訳ではないもう一つの、人を無為徒食の灰色の日常に押しとどめるマイナスの要因が実はあるのです。

日本の数少ないノーベル文学賞受賞作家の一人、大江健三郎先生の作品に「見るまえに跳べ」という小説がございます。若いころ読んだ本なので、その本の内容は全く記憶にございませんが、その内容云々よりも、このタイトルに惹かれ、見てばかりで跳べない情けない自分を鼓舞するような内容が記してあるのではという、まるでハウツー本でも買うような動機で手に取った記憶がはっきりと残っております。

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さて、若きわたくしの人生の岐路に立ちはだかり、その跳躍の大きな妨げとなり、結局はつまらぬ退屈な一生を、のんべんだらりと飲んだくれて過ごす日常に押しとどめたものとは。

それは己が心に宿る不安、恐怖であったのでございます。

見るまえに跳べとは正に言えて妙。この見るというのは、すなわち逡巡する、あるいは考えをいろいろ巡らせるという事なのです。人間いざ何かを始める、新しいことに挑戦するとなると、どうしてもその結果の成否を考え、色々と悩むものでございます。悩む結果どうなるかと言うと、人間の思考と言うものは、不安、恐れが支配する、基本マイナス思考ですから、結局失敗の結論にたどり着き、その志は一歩も踏み出さぬ先から、頭の中で勝手に挫折を迎えるのでございます。

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したがいまして、この見るまえに跳べという言葉は、色々思い悩まず、まずは目をつぶって飛び込んでみなさいという、ありがたい後押しの言葉であるのです。

実際、夢をあきらめても人生と言うものは続くわけで、その中で人は生活を支えるために、何らかの仕事をしていかねばなりません。仕事の種類に、夢が叶わなかったから適当にしておこうで済むような仕事、職業は何もありません。夢にまで見た仕事でも、日々の暮らしを支えるだけのジョブでも努力を要するのは同じこと。ならば好きで全身全霊でのめり込めることをした方が幸せな人生なんじゃないでしょうか?

さて、このような教訓は、このパールネックレスにも相通じるのでございます。

パールネックレスと言えばフォーマルな装いの必需品。ひと昔前までは、婚礼道具一式として花嫁のお母さんが娘の為に必ず用意して、嫁入りに持たす品でございました。

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さて、このパールネックレスの購入にあたってはお店の人も、その劣化のスピードが他の宝石に比べ圧倒的に速いため、着用に際しては、使ったらすぐ乾拭きして付着した汗を必ず拭きとるように、そうしないと黄ばみの原因となるなどと散々脅し、普段の着用も積極的に奨めません。結果、冠婚葬祭のみの使用だけに終始し、気が付けば20年で着用回数4度などという事になってしまいます。

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さて、4回のみしか使ってないから劣化してないかと言うととんでもございません。あなたが20年どこも出かけず家に閉じこもってても歳をとるのと同様、パールは着実に劣化、すなわちツヤが消えたり、黄ばんだり、粗悪な品物なら割れてきたりいたします。

劣化を恐れ大切にしまい込んでいようが、パールの寿命は必ず訪れます。なぜならば貝から生まれた有機質の宝石だから。ならば劣化を恐れずどんどん普段のお洒落に使っちゃいましょう。先のことを心配するより今を楽しまないと。

アコヤパール ネックレス イヤリング セット

中古ながらイヤリングまでもついてのこのお値段!使い捨てで良いじゃないっすか?

「命短し使えよパール」の一席でございました。お後がよろしいようで

【No.96】エメラルドも生まれ育ちが大切ざます

エメラルド ダイヤリング

スタッフのひとこと

これが本当のエメラルドグリーン。コロンビア産の上物!

今でこそ吉本興業所属の芸人諸氏による大挙しての東京進出によって、多少は緩和されたであろうと信じたいのですが、わたくしの若いころは東京の人の関西人、特に大阪人に対する差別意識は凄まじいものがあったらしいのでございます。

らしいというのは、実際私自身東京に暮らしたことも無ければ、訪れるのも、せいぜい年に二回ほどの仕入れの機会だけ。ですから、実際にそういったことで被害を被った、いじめにあった、罵倒され唾を吐きかけられ、足蹴にされたうえ土下座を強要された、などと言う事は、個人的には無かったのですが、同じ会社の同僚で東京支店に勤務していた人の話によりますと、実際あからさまな大阪人差別、アパルトヘイト、排斥主義が存在していたらしいのです。

大阪人と言うものは不器用なのか、変にプライドが高いのか、それともアホなのか、他の都道府県の人たちのように上手に標準語を話すことができません。ですから東京に行ってもすぐ関西人の正体が露見してしまいます。

もっちゃりした、泥臭い、垢抜けぬ関西弁を話す男が宝石を売ること自体にすでに違和感を持たれるらしく、「あら、あなた大阪の方?なんか訛ってらっしゃるけど」などと嫌悪の表情を隠そうともせず、山の手マダムに言われる事が多々あったそうでございます。

そんな時は必ず「いえ、僕四国です、香川県出身なんです。うどんが大好きでーす!」などと言ってごまかすと、「あらそう、なら良いけど、私大阪の人って苦手なの、如何にも強欲で、がめつくて、いい加減で、下品でホント嫌い、虫唾が走るわ」とズバリ言われるそうです。

もちろんそんな時は東大阪市出身、バリバリの大阪人、河内の兄ちゃんの彼ですから、大阪人のいい加減ぶりをいかんなく発揮して「ホントですよね、僕も大阪人は大の苦手で、言葉のイントネーションで大阪人に間違われる度に滅入っちゃうし、たこ焼きなんて見ただけで吐き気がします」などとお追従を並べてご機嫌をとったとか。

エメラルド ダイヤリング

ただ、その上役である専務さんともなれば、さすが年の功、それを面白がる余裕が出て、こんな話を社員研修でされてました。

「銀座のデパートで靴買おてんけどな、店員にナンボにしてくれるねん、言うたったんや。ほなら最初は分らんかして、ポカンとしとんねん。せやからナンボにまけてくれんねや、言うたらやっと通じたんやけど、わかった途端店員のお姉ちゃん、嫌や―な顔して、お値引きは一切致しておりません、こないぬかしよるんや。あれはアカンな、どうせあかんにしても、もっと客の気持ちを損なわんようにニッコリ笑って、あんじょう断らんと。皆さんもお客様には、断る時が肝心なんで、よう覚えておいてくださいよ」そう諭して下さったのですが、そんないらん事イチビってするから、余計嫌われるんやろね大阪人は。

まあ、実際わたくしなども東京に出張などで訪れた際に、山手線の車内などで同僚と声高に喋っておりますと、気が付くと周りの乗客から氷のように冷たい視線が浴びせられているのを感じた記憶がございます。

エメラルド ダイヤリング

さて、これと同じような同民族間の差別をわたくしは30年前、当時勤務しておりました香港の支店で目の当たりにいたしました。

我々日本人からすると香港に住んでいようが上海に住んでいようが、首都北京の市民であろうがみんな一括りで中国人なのですが、当時の香港の人、多分今でもそうかも分かりませんが、自分たちは香港人で、中華人民共和国の国民は大陸人だとはっきり違いを主張しておりました。

当時は今と違い、中国はまだまだ後進国。服装一つとりましても、流石に人民服は卒業してたようですが、しかし実に粗末で時代遅れ。当時はまだ返還前でイギリス市民だった香港の人々には全くの田舎者、後進国の民と映った事でしょう。

実際お店の外を中国人の一行が通ったりすると、あからさまに嫌悪の表情を浮かべながら、「わーっ、中国人だよダセー、臭せー」、などと決まって揶揄しておりました。

もしその時わたくしが「自分たちだって中国人だろ?」などと言おうものなら、もう激高して真向否定。「違うよ!私たちは香港人、ホンコンヤン、あの人たちは中国人、大陸人。全然違うよ。喋る言葉から、食べ物、教養、センスその他もろもろすべてが全く違います!一緒にしないで」と叱られたものでございます。

東京の人もこない思てはんねやろかオオサカンの事を。確かに喋る言葉も違うし、食べ物も違うし。一緒にしないでよー!って僕らの知らんところで中国の人に言うてたりして、オモロ。

エメラルド ダイヤリング

さて、このように同じ国に暮らす国民の間でも明らかな格差、差別が存在するのでございますが、宝石の場合も、同じ種類の宝石間でも明らかにその産出される場所による格差、値打ちの違いが厳然として存在致します。

本邦ジュエラーのバイブルとして名高い名著、諏訪恭一先生の「宝石」というご本にも色々な宝石の産地による特色とその評価が書かれておりまして、宝石商はもとより一般の宝石マニアやコレクターの方々にも大いに参考となるところなのでございます。

エメラルド ダイヤリング

さて、この本でも大きく取り上げられております、人気の宝石エメラルド。やはり最高の産地は皆様もご存知、コロンビアと明記されておりますね。先生の説明によると・・・

“コロンビア産のエメラルドは柔らかな美しいグリーンです。ブルーもしくは、イエローがかかっていますが、純色に近く、彩度を下げるグレイみを感じさせません。コロンビア産のグリーンはクロム元素に起因し、ブラジル産やザンビア産のエメラルドのグリーンはバナジウム元素に起因しており、その違いがグリーンの色味の違いに出てくるのでしょう” と書かれております。

エメラルド ダイヤリング

さて、ご覧いただいておりますは、当店オリジナルのおすすめエメラルドリング。正に先生の解説通りの、柔らかな美しさを呈したエメラルドではございませんか?

こちらは権威あるGIAの鑑別書が証明いたします、正真正銘のコロンビア産エメラルドを中石に据え、両サイドに贅沢に0.5キャラットアップのEカラー、VVS2のダイアモンドを一個づつ配置した実に豪華な作りとなっております。

エメラルド ダイヤリング

このエメラルドの特徴は何といってもこの鮮やかな色の冴え。朝日を浴びた若葉の様な、実に新鮮なグリーンを呈し、それが光りを反射し、きらびやかに輝いているのがお分かりいただけるでしょうか?

エメラルド ダイヤリング

さて、石の拡大写真を良くご覧いただきます、とテーブルの中心部分より少し外れた位置に内包物が確認できますね。宝石に不案内の方ですと、これをキズと見なし、マイナスポイントと考えがちですが、本来が内包物の大変多い宝石のエメラルド。目につくインクルージョンはこれぐらいしかございませんと言った表現こそが妥当かと存じます。

なにせこのインクルージョンこそがコロンビア産エメラルドを証明する識別特徴、三相インクルージョンなのですから。さしずめ、高貴な身分を示す勲章みたいなものと御理解いただければよろしいかと存じます。

さあ、このようなノーブルなジュエリーをお着けになれば、あなたも明日から東京山の手婦人おほほほほほほほの高笑い、たとえナニワのオカンでも。知らんけど

【No.95】ハリポタファン必携!フクロウのペンダントブローチ

ふくろうモチーフ ブローチ

スタッフのひとこと

森のフクロウと云う名前の人が昔いてましたなー、関係ないけど。フクロウ好きにはたまらない逸品!

ペットと言いますとひと昔前は犬と猫、ウサギにハムスター、せいぜい小鳥に金魚に熱帯魚くらいのところだったのが、最近はそのオプションの幅がグンと広がりまして、爬虫類、両生類、鳥でも猛禽類なんかにまで手を出し飼育している方がおられる様でございます。

かく申すわたくしの娘も、蛇とヤモリを飼っておりまして、住めば都、飼えばペット。そのような者どもとも同居してみると、これはこれでなかなか可愛いもので、おのずと情も湧いてこようかと言うものでございます。

犬のようにオテやマテなんかの芸はしてくれませんが、吠えるわけでもなければ、唸るわけでもなく、静かに水槽の中などを赤い舌をチロチロ出しては移動するサマを眺めておりますと、自然と心が癒されます。

夏場ともなればこ奴をばヒヤピタシールの代わりに首にでも巻きますと、まことにひんやりといたしまして、心地よい涼味を味わう事ができます。ただし巻きの度合いが強すぎますと、心地よさのまま帰れぬ境地に誘われるので、ほどほどのところで留め置かねばなりませんが。

さて最近のこうしたペットブームの過熱に伴いまして、猫カフェや、フクロウカフェ、爬虫類カフェなどといった、そのカフェを訪ねるとお気に入りの可愛らしい動物たちとひと時を過ごせるなどと言うお店もあるそうでございます。

戦前の昔ですと、カフェと申しますと文豪、永井荷風散人の小説なんぞに出てくる、かふぇの女給などと言う言葉通り、専ら飲食にお姉ちゃんの接待が伴う、紳士に享楽を提供する施設であったのが、最近はその趣を唯一メイドカフェに残しつつも、大方は若い女性が喜びそうな、お洒落な内装にスイーツなども召し上がれる、健全なお店に様変わりしている模様。

そういった今風のしゃれた雰囲気に包まれ、お気に入りの動物たちとのひと時を過ごす。なんて素敵なくつろぎの時間なんでしょうか。実際にはさまざまな事情があって、お家で好きなペットが飼えないという方もこちらを訪れれば好きな動物と存分に交流できるというしくみ。

ふくろうモチーフ ブローチ

さて、そのお家で飼いたくても飼えないペットの筆頭格といえば、何といっても蛇やトカゲの爬虫類。飼い主本人が強く望んでも、大体は家族の猛烈な反発を食らう。もちろんペット自体が怖い、気味が悪いというのもあるのですが、その飼育に必要な餌が、これまた大きな拒絶反応を家族からかうことになります。

例えば手前どもの蛇、ボールパイソンちゃんなんかの場合はハツカネズミを丸飲みするわけでありますが、まさか生きたネズミをまた別に飼育するわけにもいかず、冷凍のハツカネズミを餌として購入するわけで、この冷凍の餌を保存する場所は、人間の冷凍餌を保存する場所と同じ冷凍庫になるわけです。さて、昼は冷凍の焼売でも食べましょうと冷凍庫を開けた家内が、焼売ならぬ餃子の如く規則正しく並べて収納されてあるハツカネズミの死骸入りのビニール袋を発見した時の驚愕&激怒したサマと言ったらもう筆舌に尽くせぬほど。

さて、それなら鶏肉なりで代用させればいいじゃないかと思うのは素人の浅はかさ。このハツカネズミ丸飲み、東海林さだお先生のエッセー集、食べ物丸かじりシリーズのようですが、こちらは、かじるのではなく、丸飲みするところに意義があるのです。ネズミ一匹、肉から内臓、骨から皮まで、その個体一匹の中に蛇が必要とする栄養素がすべて詰まっているとのことなのです。なるほどうまく出来ているものでございますね、自然の摂理というものは。

ふくろうモチーフ ブローチ

さて、この餌をやる頻度なのですが、これは人間のように一日三回なんて頻繁に取らなくても大丈夫。一週間に一遍くらいでいいので極めて経済的。

しかしこの餌やりの瞬間はなかなか見もの。普段蛇というものは水槽内でほぼ静止状態か、のろのろと木の枝を移動しているのですが、この餌を食らう瞬間だけは、正に電光石火の早業。

蛇の目の前で、冷凍ネズミの解凍した死体を割り箸なんかで尻尾をつまみ、ゆらゆらと揺らしてやります。すると蛇はびっくり箱から飛び出すバネ仕掛けのおもちゃの蛇そのもの、まるで体内に強力なスプリングが内蔵されているかの如く、マッハのスピードでネズミに食らいつくや、あっという間にネズミの胴体を幾重にもとぐろに巻き込み、体内の骨をば強力な締め付けで砕いていきます。生きたネズミの場合はこれが最後のとどめとなるのでしょう。

そこから文字通り、頭から丸のみしていくわけですが、その蛇があごの骨を外して信じられぬほどの大口を開き、かぶりつく様子の凄まじいことと言ったら、気の弱いわたくしなどは正視に耐えられぬほど。

さて、こういった熾烈な餌やりの修羅場が展開されるのは何も爬虫類だけに限った事ではございません。爬虫類なら最初からそう言ったイメージを持って挑むので飼う方も覚悟ができている。その点こちらペットは見かけと裏腹、むしろ蛇よりも大変な餌やりが必要となります。

ふくろうモチーフ ブローチ

さて、そのペットとは最近とみに人気が高まるフクロウなのでございます。ハリーポッターの映画の人気に、見た目の可愛らしさが加わりフクロウをペットにしたい人は増える一方。

しかし、ここで餌やりの問題が大きく立ちはだかるのでございます。

フクロウという鳥、見かけはまーるいお顔に、真ん丸お目目で実に愛くるしいのでございますが、こう見えても猛禽類、肉食の鳥。その餌は蛇と同様ハツカネズミ、あるいはウズラ、ひよこ等をこれまた蛇と同じ栄養面の理由から、個体丸ごと与えなければいけません。

ふくろうモチーフ ブローチ

もちろんこういった餌はちゃんとペットショップで冷凍食品として用意されていますから、入手の心配は無用。

蛇の場合ですと湯煎で解凍すれば後は前述したように、勝手に丸のみしてくれるのですが、フクロウの場合は、そこからさらに調理の手間が加わります。調理と言っても唐揚げにしたり、煮物にする必要はないのですが、解体して肉や臓物を食べやすいように切り刻んで、刺身盛り合わせを作らないといけないのです。ハツカネズミのホルモン入り刺身盛り合わせ、尾頭付き。

フクロウの飼い主志望の皆さんは、この段階で大きな挫折を味わうのでございます。実際、フクロウの可愛らしさに惹かれフクロウカフェのバイト行ったはいいが、この餌作りの現場を見て一日で退社する娘さんも数多くおられるとか。

フクロウは飼いたし、されど餌やりは無理。フクロウカフェにはおいそれと毎日行けない。そんな悩み深きフクロウ好きの方には、是非こちらのフクロウペンダント兼ブローチをおすすめいたします。

ふくろうモチーフ ブローチ

アメジストの胴体にマザーオブパールの羽と顔。頭頂にダイアモンドが輝き、エメラルドの目が可愛らしい、何とも言えないフクロウの造作。

細かいことを言えば、耳のような形状の羽が頭についていますから、これはミミズクと言う事になりますのでしょうか?芸が細かいよ!

ペンダントにもブローチとしてもお楽しみいただけるこちらのフクロウちゃん、煩雑な餌やりの心配はいりませんし、病気の心配もご無用!あなたの生涯にわたるペットとして末永く可愛がってくださいませ。

【No.94】あばたもエクボ、識別特徴の魅力

クリソベリル キャッツアイ ダイヤリング

スタッフのひとこと

このような神秘的な宝石をお洋服と上手にコーディネートされますとオシャレ度が一機にグンとアップしますのよ奥様。

只今大変な人気の、料理のお兄さんリュウジさんのバズレシピの動画を見ながら、見よう見まね、ハイボールのがぶ飲みまで真似しつつ、お兄さんに料理の指導を受けながら夕食づくりにいそしむ最近の休日。

つい先日も、「至高の豚汁」なる料理をスマホで観ながら拵えては見たんですが、出来上がりがイマイチ物足りない。何が物足りなかったかというと、豚汁には欠かせないゴボウの風味。

リュウジお兄さんは、ちゃんと最初からゴボウは洗いすぎないでと注意喚起してくれたにもかかわらず、何せ慣れないものだから加減が分からない。どうもまだ土がついているようで不潔だなーという事で、綺麗に洗いすぎてしまったんです。

チクショウ!上手く出来たと思ったら、普段ずぼらな僕が、こともあろうにゴボウの土だけ神経質になっちまって、悔しー!という事でリベンジマッチ。第二弾豚汁作りを敢行。さて、今回はまだ茶色の部分がかなり残ってるゴボウを恐る恐るごま油で炒めて料理を完遂させて、いざ実食。

旨い!これやこの味。土の味。そうか、ゴボウの旨味は土の味やったんや。

毒食らわば皿までなどと言いますが、ゴボウ食らわば土まで言うこっちゃね。

クリソベリル キャッツアイ ダイヤリング

さて、何事もきれいさっぱり、無味無臭が良いかというとさに非ず。臭みエグミと言うものも場合によってはかえって魅力としてプラスに作用することがございます。また、同じ匂いでも漂ってくる匂いの発生源によっても嫌悪感もよおす悪臭にもなれば、興味をさらにそそる香にもなりえます。

例えば魚の生臭ささも豪華に盛り付けられているご馳走の皿から漂ってくるのと、ごみ箱から発生しているのでは大違い。いい香りのオーデコロンも、素敵なイケメンから薫る場合は、もちろんそれを嗅ぐ婦女子を夢心地にいざなってくれるのですが、後頭部の頭皮が段々畑状態を呈している様な脂ぎった中年肥満オヤジの垢に汚れたシャツの襟元から漂ってくると、元の体臭、加齢臭の目くらまし、煙幕としてのコロンのフレグランスのはず。この香りの陰には必ずや邪悪な吐き気を催す悪臭が隠れているに違いないと勘繰られ、より一層婦女子の不興を買う羽目となります。

さて、宝石とて同様。一般的にキズとしてかたずけられる結晶内部の内包物。これをすべてダイアモンドの基準にあわせて、無傷が最高と決めつけてはいけません。

クリソベリル キャッツアイ ダイヤリング

ご覧いただいております指輪に留まっておりますクリソベリルキャッツアイも、実は石の内部にある内包物、針状インクルージョンの働きによってこの猫の目のような摩訶不思議な光学特性が生まれるわけなのでございます。

もしこの内包物が無い、内部がクリーンな石だと、これは単なるクリソベリルということになり、味もそっけもない褐色な透明石として、宝石の価値自体もキャッツアイに比べ大幅に低減致します。

また。このキャッツアイ同様、特殊効果石の一方の雄とも呼ぶにふさわしいスタールビーやスターサファイア。これらの石も内部にある60度の角度で交差する針状インクルージョンによってアステリズムと呼ばれる六条の光を放つ、お星さまの様な光学特性を示すのでございます。

ただし、このキャッツにしましてもスタールビーやスターサファイアにいたしましても、その内包物が多けりゃ良いと言うものでもございません。

何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しなどと申します通り、針状インクルージョンが多ければ多いほど、理屈から言えば、よりはっきりと力強く、猫の目、あるいは星印は出るのですが、その分宝石の透明度が落ちて全体的に白っぽく濁った感じになってしまうのです。ゴボウの土の香りが良いからと言って、泥にくるまれたままのゴボウを鍋に投入してしまっては、豚汁ならぬ泥汁が出来上がるが如くでございます、ってそんな奴おらんやろ。

インクルージョンがあってこその特殊効果とインクルージョン無用の透明感。この二律背反する要素の見事なコンビネーションのつり合いこそが、美しい宝石を生み出す鍵ともなるのでございます。

クリソベリル キャッツアイ ダイヤリング

またこの宝石内部のインクルージョンは別名、識別特徴とも呼ばれ、その宝石の正体そのもの探る手掛かりになったり、産地の特定の手がかりともなるのです。

例えば、有名なところですと、最高の品質のものが多く産出されますコロンビア産のエメラルド。このエメラルドの特徴が三相インクルージョンと申しまして液体、気体、固体が一塊のインクルージョンとしてエメラルドに内包されていると言うもの。すべてのコロンビア産エメラルドにこの特徴が内包されているとは限りませんが、これがあればコロンビア産で天然である証。

一度ご自宅にあるエメラルドの鑑別所を確認して見られてはいかがでしょう。

クリソベリル キャッツアイ ダイヤリング

この宝石の中にあるインクルージョンによる宝石鑑別にあなたの興味が移りましたなら、あなたはもう立派なミネラルマニア、鉱物オタク。宝石好きからさらに一歩進んだ、鉱物内部のミクロの世界から地球の誕生、成長の歴史に夢をはせるといった新たな楽しみが生まれると言うもの。

いかがです?まずはルーペ一つで始められますよ!

【No.93】柳田國男的フォークロア感漂うネックレス

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

スタッフのひとこと

あたかも博物館秘蔵のお宝のような歴史とロマン薫る逸品

若い時分は、聴く音楽と言えば洋楽一辺倒。ツェペッリンとかツベルクリンとかさぁ、よく聴いたもんだけど、歳とるとやっぱり日本人、演歌が身に染みるのよねー。居酒屋で独り侘しく独酌なんかしてる時に、吉幾三の「酒よ」なんて流れてくると、なんか知らず知らずのうちに昔別れた彼女を想い出したりして、泣けてきちゃうんだよねー、なんてしみじみ語るご同輩が多い中、未だその境地に至らぬどころか、ストーンズの「ホンキートンク ウーマン」なんぞがかかると、年甲斐も無く劣情を催したりいたします。ウソやけどね。あっ、ストーンズ言うても今人気のジャニーズの方ちゃうよ、イギリスのファンキーな爺さん達のほうやからね、言うとくけど。

ただし、やはり食べ物の嗜好は肉体の衰えとともに変わってまいりました。こちらの方はきわめて一般的な老化の兆候と一致して、肉から魚、デミグラスソースからポン酢、洋から和食へと確実に移行いたしております。

不思議なもので、若い頃は見向きもしなかった食べ物、例えばおせち料理に欠かせない「酢ゴボウ」なんてのが予想外に旨く感じられるのは、やはり老いた身体が欲しているせいでしょうか?なるほど不思議なもんで、そういう身体が欲する食材を食しますと、不思議と枯れた肉体にも劣情が湧こうかというもので、って、もうエエ?すまんの

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

さて、最近はシルバーと呼ばれる年齢になられても、皆さま方極めて若々しい装いをなさってておられ、うしろから眺めただけでは、お嬢さんかお婆さんか見分けがつかないくらい。念のため前に回って確かめると、おじさんだったなんて場合もあり、性の解放とも相まって、まったく結構なことでございます。

さて、そういった年齢、性別の垣根を超えたファッションの自由化のなかにあって、シルバー世代のごく一部のご婦人方に、独特の装いが流行しているのを皆さまはお気付きでしょうか?

不覚にも、わたくしなにぶんにも世事に疎い田舎者ゆえ、ファッションに関しましてもトンと暗く、こういった装いをなんと呼ぶのかすら存じ上げないのでございますが、シルバー世代にあって、敢えて若作りの道をきっぱりと打ち捨て、老境ならではのその枯れた風情を引き出すと言うのか、引き立てると言えば良いのか、そのファッションは老境に差し掛かった日本のご婦人の生活を、懐古趣味ともども楽しむ装いなのでございます。

その装いをされている方々は街角でも、そう頻繁に見かける事もございませんし、またその見かけがどちらかと言えば、というかはっきり言って地味なため、目立たないということもございますので、わたくしの拙い説明で、あー、なるほどと判って頂けるかどうか、甚だ心許ないのでございますが。

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

さて、そのファッションとは藍染の生地を基調として、かすりの着物などのリフォーム、リメイク、パッチワークを枝葉とする手作り感あふれる、和洋折衷風な装い。昔の農家のおかみさん風のかすりの着物にもんぺ姿を現代的にアレンジ、発展させたようなファッションと言えばお分かりいただけるでしょうか。

ひと昔前、一部のオヤジ達の間で仏教僧の作業着である作務衣と言うものが流行った事がございましたが、それと同じような流れの女性版ではないかとわたくし睨んでるのですが、定かではございません。

こういったファッションスタイルは所謂トータルなコーディネーションが重要らしく、バッグや財布、小物に至るまで、藍染の生地やかすりの着物の端切れとかでのリメイクによるお手製で、パッチワークなどの細工をふんだんに凝らし、オリジナル感をより一層強調されている風に見受けられます。そういったところから推察するに、これは手芸好きの趣味が高じて、このような新たなファッション形態へと進展して行ったのかな、とも想像するのでございますが、これもあくまで推察の域を出ません。

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

いずれにしましても、地方のショッピングセンターなどには、明らかにこうした服飾の嗜好をターゲットにしているであろうお店が、数多くは無いにしても実在し、中高年の女性がなにやら一つのサークル仲間のように、コアな顧客層を形成して集い、楽し気に歓談している光景を目に致します。

そういったお店、こういったファッションに惹かれ、集まる顧客女性の特徴はナチュラリスト、ベジタリアン、有機農法実践者などといった、こだわりのライフスタイルを貫き、生活の木みたいなお店でハーブやアロマ、天然由来の化粧品や洗顔、シャンプーなどお求めになり、地球にやさしい身体にもやさしいライフスタイルを実践されているのでありましょう。そのナチュラリストぶりはナチュラルメイクや毛染めしないままの、グレーヘアーや銀髪に反映されて、老いた姿を無理に隠そうという悪あがきが見られません。重ねてきた経験、苦労が現れた年輪を堂々とさらけ出す潔さが、かえって清々しい感じさえ見る人に与えます。

さて、そう言った人生の終盤に差し掛かり、酸いも甘いも噛み分けた、こだわりのご婦人にお薦めしたいのがこちらのネックレス。

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

素朴を愛するナチュラリストといっても修道女じゃないんだから、そこはやはり腐っても女性、いや、失礼。光り物で身を飾りたいといった女の業の焔はおいそれとは消せません。そういった方の多くは、やはりアクセサリーやジュエリーにもこだわりがうかがわれ、勾玉やアンモナイトのペンダント、パワーストーンのネックレスやブレスレットなどをお着けになる傾向にあると想像するのですが、そのような安易なアクセサリーを遥かに凌駕するのが、こちらのペンダントネックレス。

グリーンガーネット サファイア オニキスネックレス

こちらは、円形のオニキスの台座に如何にも和柄といった蛙と植物の風情を立体的な細工であしらわれておりまして、それぞれの細工には、グリーンガーネットとカラーサファイアの細かい結晶が、彫り留細工でセットされ、それが同時に彩色効果をも担っております。

現代的なダイアモンドや色石のペンダントネックレスはちょっと藍染、かすり柄には合わないとお悩みのお方はぜひともこちらをお試しいただきたいものでございます。これによってあなたの民芸調蕎麦屋女将スタイルのトータルコーディネートは見事完成される事でございましょう。

【No.92】コンクパールはイチゴミルクの味

コンクパール ペンダントネックレス

スタッフのひとこと

知る人ぞ知る、知らない人はサンゴと間違えるというややこしいけど、値打はあるんです!

「宝石商見てきたような嘘を言い」という箴言があるように、まことに宝石を商う者の中には口から出まかせ、針小棒大な大風呂敷を広げてお客を惑わせ、良心の呵責を微塵も感じぬ者が少数ながらも見受けられるのは、甚だ残念な事でございます。

大体宝石というものは、そのほとんどが海外で産出され、輸入されているのですが、その販売に携わる者は、如何にもその現地の採掘現場や現地の取引所などを訪れたかの如く語るのですが、そのほとんどは、仕入れ先からの受け売りや、書物によって得た知識。

「こういった本ヒスイ、いわゆるインペリアルジェイドの良いものになりますと、ビルマのウル渓谷周辺でしか採れないのですが、もうそこまでたどり着くのが一苦労。なにせ海抜千メートルを超える標高の未開の土地。まともな道などございませんから、当然車でなんか行けません。採掘工夫たちは重い採掘道具をロバの背に乗せ、徒歩で歩く事丸五日。途中で峻烈な崖から転落して命を落とす人馬も珍しくはないと言うほどの大変な苦難呻吟の末、ようやく採掘場現場にたどり着くのです」などと口から出まかせを語るのですが、産地をわざわざビルマやセイロンといった旧国名を使い、よりそれらしく演出する裏技も忘れません。

さて、そうした宝石屋の成れの果て、落ちこぼれジュエラーのわたくしですが、新卒で宝石屋に就職致しまして配属されたのが、当時大阪梅田、阪急三番街にございましたハンドバッグ専門の支店。宝石屋に勤めたはずがハンドバッグ屋かよと、就職そうそう出鼻をくじかれた形でいじけておりましたところ、なんとそこの店の店長さんは、その店の店長に就任するまでは心斎橋の本店で外商部のトップセールスとしてバリバリ宝石を販売していたという凄いやり手のセールスマンだったという事。

しかし何事も過ぎたれば及ばざるが如しと言いますが、あまりに派手に活躍したが故に上司から目をつけられ、バッグ専門店に左遷の憂き目にあってしまったのでございます。きっと当時のその人の上役がその実力のすごさに、自分の地位を脅かす存在と察して、先手を打ったに違いないという噂でありました。

さてそのおじさん、といっても当時店長はまだ32、3才だったはずですが、今から思っても随分世慣れた感じの短躯肥満の体つきで、いかにも精力的。見た目は宝石商というより、どちらかというと不動産屋、土建屋という感じ。ムードや見かけの良さを販売に繋げる事の多い宝石セールスにあって、押しとバイタリティーと行動力で売上を積み重ねる、本物の実力派営業マン。なにせこの人、本店外商時代は宝石だけじゃなく電化製品から羽毛布団まで顧客に売りつけていたほどらしいのです。

コンクパール ペンダントネックレス

さてある日、私がその店にある高級バッグの一つ、なんとあのエルメスの下請けをしているという、フランスにある某工房が作っているというバッグ、聞いただけでなにやらいかがわしい感じですが、それをお客さんに説明しておりますと、色違いの有無を聞かれました。それを店長に確認しますと、そこから店長は心許ない新入社員のわたくしから、その店長が上客とにらんだお客さんを引き継ぎます。

「じゃあ、ちょっと工房に確認してみますので、しばらくお待ちください」と言うや否や店長さん受話器を取って、電話をかけ始めるじゃないですか。(えっ?フランスにかけてんの、もしかして)と、あっけに取られてる私を尻目に「ハロー、ディスイズ ○○(店長の名前)スピーキン。オー、ハイ!ハウヤドゥーイン?」なんて突然英語で話し出すじゃないですか。もうびっくりしている新入社員の私を無視して会話を終えた店長、電話を切るとお客さんに向き直り。

「お待たせいたしました。今はあいにく、工房の方にも作り置きのストックは無いそうですね。何せ天下のエルメス様優先、自社品は後回しらしいんで、ちょっと今後の上がりも読めないみたいですねー」なんて言いながら、結局そのお客さんが色違いを尋ねられた元のモデルを最終的に言葉巧みに押し込んでしまいました。

コンクパール ペンダントネックレス

さてその後、感心した私が、「フランスに国際電話ですか?凄いですやん!しかも英語で!フランス人も英語話すんでっか?」と矢継ぎ早に店長に問い質すと

「お前は馬鹿か?内線の電話でどうやって国際電話かけられるんや?」

確かにそう言われれば店長が握っていた受話器は社内の各支店や各部署にしか繋がらない内線電話。

「いや、それでも電話で話してはりましたやん?何喋ってはるか分かりませんけど、ハロー言うて」

「わからん奴やな―、芝居やお芝居、独り芝居。大体地球の裏側のフランス今何時やねん?みんな寝とるぞ」

「はー?」

「あれの色違いは、今この店にも、たしか本店にもないはずや。しかし、ただありませんじゃ、そうですかで終わってしまうやろ。一つのドラマを作って客を飲み込んでしまい、今有る現物を売るの技や、解かった?覚えときや」

「へー!」新入社員のわたくし、商売の機微に初めて接したと感じた瞬間でした。

コンクパール ペンダントネックレス

さてそれから15、6年ほどたった頃でしょうか、本店に配属になっていたわたくしは、ある展示会の最中、ちょうど来場が他の得意先と重なった同僚社員のお客さん(まだ年若いカップルでございましたが)をその担当の代理で接客いたしておりました。

たまたまコンクパールのリングがお目に留まり、その頃はもうこちらも慣れたもの、如何にも見てきたような知ったかぶり、いっぱしのジュエラー接客で説明いたしておりました。

「こちらはコンクパールと申しまして、カリブ海に生息致しますピンクガイという巻貝から、極めて稀に採れる天然真珠なのでございます。通常真珠は二枚貝から、しかも、人の手を借りて養殖によって生産されているのですが、このパールはまったくの人の手を介さない、正真正銘の天然自然が育んだ真珠なのでございます。さてこのコンクパールが採れますのはピンクガイという大きなほら貝の様な貝なのですが、現地ではもっぱら食用として水揚げされます。その採集された貝の中からわずか一万個に一粒見つかるか見つからないかというほどの、希少な真珠なのでございます」と立て板に水とばかりにまくし立てておりますと、そのご主人と思わしき男性が突然、

「その貝食べた事あるよね?」と奥さんらしい女性に話しかけたのです。

「あるある、たしかマイアミでだったっけ?」

「そうそう、バハマ料理だかの店で食べたよねー、結構美味かったよなー?」

「うん、美味しかった美味しかった!」

そこで突然尋ねられたのです。「召し上がった事あります?」

「い、いやー、残念ながらまだ食べた事はございませんねー」

「そうですか、取れる真珠のように希少じゃないから一度召し上がって下さいよ、なかなかの美味ですよ!」

「は、はい。機会がありましたら、ぜ、是非」

そこからはもう接客の勢いの鈍る事といったら。下手に知ったかぶりするのは良いけど、たまにはその架空の話を上回る経験者が一般顧客の中にもいらっしゃるという事を忘れてはいけませんね。

あれからもう20年以上経ちますが、今だコンクパールの母貝、ピンクガイを食す機会はおろかアメリカに行く機会にすら恵まれません、トホホホホ。

という事で今回はこちらのコンクパールのネックレスのご紹介。

コンクパール ペンダントネックレス

さて、こちらの希少価値は先ほどご紹介の通りでございますが、その宝石としての魅力をお伝えしなければ片手落ち。

コンクパールの魅力はこの陶器のような滑らかなツヤと、一青窈が歌ったハナミズキの色をそのまま映したかのような、この何とも言えない薄紅色の可愛らしい風情。

コンクパール ペンダントネックレス

さらにはその薄紅色の上に火炎模様と呼ばれる「鬼滅の刃」の煉獄さんのマントのような模様がうっすら浮かぶ風情がまた何とも言えない風合いをこの宝石に与えております。

カリブの海が生んだ奇跡の真珠、是非この希少なお宝をあなた様のコレクションの一つにお加えくださいまし。

【No.91】ボディーピアスで全身をうめつくせ! [当店オリジナル]

ルビー サファイア ボディピアス

スタッフのひとこと

オリジナルボディピアス好評につき価格据え置きの第二弾!色石もあるでよ、買ってちょんまげ!

モンド映画というジャンルが映画の世界にはございます。

これは、グァルティエロ・ヤコペッティというイタリアの映画監督の作品に代表されるような、世界各地で行われている残酷な奇習やグロテスクな風俗、夜の街で提供される猟奇的エロス、犯罪行為といった事柄を虚実ないまぜにして、ドキュメンタリータッチで描いた、まさに悪趣味の極致、キワモノ、ゲテ物趣味が売り物の見世物映画でございます。

わたくしが敬愛して止まない文豪、筒井康隆先生の作品に「宇宙衛生博覧会」と題した短編集がございますが、この題名の元となった「衛生博覧会」。これは明治から昭和初期にかけまして、日本各地では開かれた、衛生思想の啓蒙という事を目的として行われた博覧会なのでございます。

元々はしかるべき医療法人なり、それなりの保険関連機関が主体となって行われたらしいのですが、その実態は、人体解剖、疾病臓器、生殖器、胎児などの生々しい模型の展示、またそれぞれの解剖図、疾病部分亊等の微細な絵図。更には奇形胎児や動物の胎児のホルマリン漬け、人体に寄生する様々な寄生虫の標本などの展示と言った実に見るに忍びない、目をそむけたくなるようなグロテスクなものの標本が会場所狭しと陳列されていたそうでございます。しかし人々は怖いモノ見たさの誘惑にかられ、その会場はけっこうな盛況を呈していたそうでございます。

ルビー サファイア ボディピアス

それと同様、そういった怖いもの、気持ち悪いもの見たさの心情をくすぐるのが、このモンド映画の狙い。私が中学や高校生時代などによく深夜のテレビで「世界残酷物語」や「残酷大陸」などのヤコペッティの一連の作品が密かに放送されていまして、親に隠れてよく観たものでございます。

ヤコペッティの映画と言えばエロとグロ。ちょうど思春期の血気盛んなエロ小僧であった私の需要にも大きく貢献するものとワクワクしながら放送を心待ちにしておりました。しかし実際の映画は幼い私の淡い期待を裏切り、エロな部分よりも圧倒的にグロ、即ちグロテスクな場面の方が多かったのでございます。

どうグロかと申しますと、アフリカやアマゾンのジャングル奥地に暮らす原始的生活を営む人々の暮らしの中で、子供に施す割礼の儀式に始まって、皮膚を刃物等で傷つけ模様を肉体に彫り込んだり、また、下唇に皿をはめ込んで鳥類の嘴の如くに拡張させたり、鼻の障子を動物の骨などで貫通し、これがお洒落な装飾となったり、首の周りに輪っかを巻き、その数を年毎にどんどん増やしていって、首をろくろっ首よろしく長くしていく、などといった自らの肉体を傷つけ装飾するという、その地域独特の奇習をこれでもかと言うくらいに執拗にカメラがとらえ、どうです、なんと野蛮で残酷自虐、衛生意識のカケラも無い暮らしぶりをしているのでしょうか、この文明に取り残された未開の人たちは、という西欧文明優越意識からくる上から目線の秘境紹介を展開いたしておりました。

まあ、その頃はまだこちらも世間知らずの子供でございましたから、そんな映像を見せられるがまま、「わあー、きっしょい奴らやなー何しとんねん、痛っ、痛いなー、見てるだけで痛いやんけ。わーっ血ぃーや、血ぃー出とんがな、イタイイタイ、止めて、もーエエちゅうねん」と、もうエロスなどすっかり忘れ、怖気に身を震わせながらも、怖いもの見たさで最後まで鑑賞いたしたものです。

ルビー サファイア ボディピアス

さて、それからしばらく時がたち、パンクロックなるジャンルのロッケンロールがミュージックシーンを席捲するや、このヤコペッティ先生が小ばかにしていた野蛮で醜悪な自虐自傷行為に類するファッション、いわゆるマルチプルピアッシングというものが、最先端のミュージックシーンの若いお兄ちゃんやお姉ちゃん達の間にあっという間に広がり、ミュージシャンというよりはもはや白人版残酷大陸のありさま。

ヤコペッティの映画を観ても誰一人としてこれを真似て、耳や鼻の障子に異物を突き刺してみようなどといった酔狂な真似に及ぶ者はなかったのに、この度は白人の先鋭的なロックの兄ちゃん姉ちゃんがやってるというだけで、悲しいかな欧米礼賛盲目追随付和雷同の悲しい日本人の性、この風習は我が国国内の一部の人たちの間に蔓延いたしたのでございます。

実際、それまでにも耳たぶに穴を穿ち、装飾品を飾るピアスイヤリングというものはございましたでしょうが、そんな可愛らしい単純なものじゃない。それまでのピアスは両耳で一対がせいぜい、しかも、両親から頂いた神聖な肉体を傷つけるという罪の意識に苛まれながらも、皆決死の覚悟で念仏を唱えながら開けた二穴であったものが、もう片耳で十穴くらいを異物で貫通させ、さらには耳だけにおさまらず身体全体いたるところ、なんと舌やさらにもっと敏感で痛そうな器官にまで穴を穿ち、様々な装飾品で飾るという風習が一部のマニアの間に広まったのでございます。

ルビー サファイア ボディピアス

ただ、その当時はこの様な特殊な装飾は一部のモヒカン、タトゥー、革ジャンとのコーデのワンセットとしてのパンクな風俗。良識ある大人の認識とすれば、荒んだフーテン、ヒッピー、社会のドロップアウト、アプレゲールの落ちこぼれどものイカレた佇まい。昔風に言えば歌舞伎者の独りよがり、世間とは無縁の隔絶、孤立した風体風俗と見なされていたわけであります。

しかし昨今、この歌舞伎者の壁がどうも瓦解致したかの様で、普通のOL、サラリーマン、学生といった一般大衆の間でもピアスを普通に身体の各部署に貫通させこれを楽しむという事が広く行われている事が判明致したのでございます。

試しに通勤電車などでよく周りを観察いたしますと、全く普通の女子事務員風や女学生が耳にいくつものピアスを挿したり、学校の用務員風初老男性が片眉上下をバーベル状金属棒で貫通させていたり、普通の魚屋のおばちゃんが鼻にピアスを貫通させ、鼻孔から鎖を垂らしてみたり。見える部分ですらこのありさまですから、洋服の下がどんな風になっている事やら想像するだに恐ろしい事でございます。

ルビー サファイア ボディピアス

さて、実際そういった一般女性の代表とも言える、見た目至極普通な当社女性スタッフの声を反映致しまして製作致しましたのが、こちらの当社オリジナルボディーピアスなのでございます。

一般的に出回っているボディピアスというものはステンレスなどで作られたアクセサリー感覚のものがほとんどだけど、大人の女性を満足させる本格的な貴金属、天然宝石を使ったモノを作ってはどうだろうか。実際自分もそのようなものがあれば是非ともひとつ我が身にねじ込んでみたいのだけど。おっちゃんちょっと作ってや。そのような身近な生の消費者の声を反映させて出来上がりましたのがこちら。

こちらは、当社が師匠とも名人とも崇める大阪は生野在住の一流飾り職人の先生に、量産も利くようにと原型から拵えて頂き、ロストワックス鋳造法によって製作いたしました、紛う事ない全くの新品オリジナル商品のボディーピアスなのでございます。

もちろん質屋でございますれば留めてある中石は買い取ったり、流れたりした品物から外した天然石を使用しておりますが、宝石は枠から外せば新品中古の区別無く、ひとつの宝石材に戻るという事はご承知の通り。えっ、知らん?まあそういう事なんです実は。

ルビー サファイア ボディピアス

という事で、こだわり質屋が作った、本物が判る大人の女性の為の本格ジュエリー、プラチナ・18金製枠、ルビー・サファイアボディーピアス。新品だけど中古価格並みのお値打ち価格で絶賛販売中。

実際コンスタントに売れてるから、作っておきながら驚いてますんやけどね、おっちゃんは。分別ある大人の女性が蛮族のごとく、その父母から賜った尊い身体髪膚にボディーピアスをねじ込むなんて・・・・

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