トパーズにまつわる興味深い話

トパーズは黄玉の名のとおり黄色を代表する石ですが、無色、淡青、ピンク、オレンジ、緑など様々な色があります。

無処理・非加熱・天然色のブルートパーズ原石

11月の誕生石トパーズ

11月の誕生石はトパーズです。トパーズにまつわる興味深い話を書きます。

トパーズは和名で「黄玉」と呼ばれます。
黄色の玉の名のとおり黄色を代表する石ですが、無色、淡青、ピンク、オレンジ、緑など様々な色があります。

インペリアルトパーズ

その中でも有名なものがインペリアルトパーズと呼ばれる赤みかかった黄金色を持つトパーズで、ブラジルのオウロプレト鉱山で産出します。
オウロプレト(Ouro Preto)とはポルトガル語で黒い金を意味し、かつてゴールドラッシュで沸いた地域でもあります。

「インペリアル(皇帝)」の名を冠するのは、他の似たような石と区別するため、名付けられた当時、ブラジル帝国(1822-1889)を統治していた皇帝ペドロ2世にあやかって名付けられました。

トパーズとは当時一般的には黄色の貴石を意味しました。
黄色の貴石はすべてトパーズと呼ばれていたのです。

ゴールデントパーズ

ブラジルには様々な貴石が産出します。
アメジスト(紫水晶)の世界最大の産地地はブラジルです。
アメジスト(紫水晶)は熱処理をすると紫から黄に色が変化し、シトリン(黄水晶)になります。
天然のシトリン(黄水晶)自体は産出はとても少なく希少ですが、アメジスト(紫水晶)は豊富に産出します。

当時、安価なアメジスト(紫水晶)を熱処理して作られたシトリン(黄水晶)がゴールデントパーズという名前で売りさばかれていたためこれと区別するためインペリアルの名を冠するようになりました。

シトリン原石(天然色)
シトリン原石(天然色)
アメジスト原石(天然色)
アメジスト原石(天然色)
アメジストを熱処理したシトリン
アメジストを熱処理したシトリン

ブルートパーズ

トパーズは珪酸塩鉱物の一種です。ペリドット、ガーネットも珪酸塩鉱物です。
トパーズには2種類のタイプがあります。F(フッ素)タイプ・Al2F2SiO4とOH(水酸基)タイプに区別されます。
OH(水酸基)タイプに属するインペリアルトパーズは、色に恒久性がありますが、F(フッ素)タイプのトパーズは光によって褪色する性質を持ちます。

このためF(フッ素)タイプのトパーズはガンマ線や中性子をあてる照射処理と熱を加える熱処理が一般的に行われます。
無色のトパーズに照射処理を施すと石は茶色味を帯びます。それから熱処理を施すと石は青色に変わります。
茶色の状態ではまだ色は安定せず、光にさらされると褪色してしまいますが、青色の状態になると色は安定します。
自然状態でのブルートパーズも存在しますが、あまりに淡い青のためほとんど流通はしていません。

無処理・非加熱・天然色のブルートパーズ原石

ローマ時代のトパーズ

トパーズの名称はローマのプリニウスによって1世紀頃に書かれた博物誌の中でこう書かれています。

「その島は霧に包まれ、水夫たちはしばしばこの島を探さなければならなかった。古代ギリシャ人はこの島を『トパゾス』と呼んでいた。トパゾスはギリシャ語で「トパズィン(探す)」から来ている。」

博物誌

紅海に浮かぶこの島はかつてペリドットの大産出地であった現在のザバルガート島です。

ペリドットは黄緑から緑の色を持つ石です。
ペリドットは古代から18世紀頃まではトパーズと呼ばれていました。
トパゾスで採れる石だから「トパーズ」だったのです。

では、トパーズ自身の古代での名称は何だったのか気になるところです。

中世においてはトパーズは黄色の石の総称でした。
しかし、鉱物学の発達により現代では上記2種類の珪酸塩鉱物だけをトパーズと呼んでいます。
トパーズはモース硬度8でダイヤモンド(硬度10)、ルビー/サファイア(硬度9)に次ぐ硬度を持ち、水晶(モース硬度7)より硬度が高いため水晶に対して傷をつけることができます。

しかし、このような知識を持たない古代において宝石は主に色で区別しました。
特に外観が違っていなければ、同一の名称で呼ぶのが一般的でした。
赤色ならばルビー、黄色ならばトパーズといった具合です。
赤色のルビーと青色のサファイア、緑色のエメラルドと水色のアクアマリンが実は同じ鉱物だなんて昔の人は露ほども思わないことでしょう。