ポルトガルが誇る最高級のチーズ

世界中で親しまれているチーズ。
日本でも様々な国のチーズを購入することができますが、それでも世界にあるチーズのほんの一部しか紹介されていないと言われています。

ポルトガルのマーケットではこんな感じで売られています

レストランでは食事の前にパンやミニトーストと一緒に出てくることも

輸出されることなく、産地のみで消費されてしまうチーズもたくさんあります。
ポルトガルにも生産量やその特質から輸出がなかなか難しいとされているチーズがあります。

それが今回ご紹介したい「ケイジョ セラ・ダ・エストレラ(Queijo Serra da Estrela)です。ケイジョがポルトガル語でチーズ、 セラ ダ エストレラはポルトガルで最も標高の高い山脈で、直訳すると「星の山脈」という意味。ちょっと可愛いですね。

とろ~っとクリーミーで深いコクのあるチーズです

ポルトガル人にも大人気のこちらのセラ・ダ・エストレラチーズですが、現地でも価格が高く最高級のチーズと言われています。

実は先月、このチーズの生産者が来日していて、直接お話しを伺う機会がありました。熱心にその美味しさや製造工程を教えて下さったので、是非皆さんにもお伝えしたいと思います!

星の山脈、セラ・ダ・エストレイラはポルトガルの中でも寒く、冬には雪が降ります。

この地域で生まれ育つボルダレイラ(Bordaleira)という種類の羊がいます。

日本では馴染みのない角の形をしています。ちょっと不思議。

この羊のミルクから最高級セラ・ダ・エストレラチーズが作られるのです。
ミルクは1日に2回、手(または機械)で絞り、品質を維持するためクーリングタンクへ一度移されます。その後、不純物を取り除き、雑菌の繁殖を抑え、味を調えるため加塩します。ここで面白いなと思ったのがこのお花。

アザミに似たキク科のヤグルマギク

この花をすり潰し、塩と水を加えたものをミルクに合わせていきます。
植物性レンネット(酵素)です。

すり潰します

塩と水を加えると天然でこのような色になります

しばらくすると白い固まりと水分にわかれます。
生産者は「ここが一番大事なプロセスだよ!」とおっしゃっていました。この白い固まりはタンパク質と脂肪分が凝固したもので、残りの水分は乳清(ホエイ)と呼ばれるもの。

凝固作用中の温度は約30℃で、高くても35℃の範囲で行われます。程よく固まるとカードを切断し水分を出しやすくします。徐々に水分が排出されカードが引き締まっていきます。

手のひらで優しく圧し、型に入れていきます

その後プレス機で圧縮

圧縮が終わった後は、10日から15日の間、水分を飛ばし熟成を進めます。
その後型から外し、形が崩れないようにガーゼをチーズの周りに巻きます。

温度と湿度がしっかり管理された場所で熟成させます

この状態で30日から45日成熟させると、外側が綺麗な黄色になります。

大きな機械は使わずに、伝統的な方法により1つ1つ手で作られるチーズです。レシピはなんと2,000年以上続いているという説もあります。
PDO・DOP(原産地名称保護)認定のチーズである、セロリコ・ダ・ベイラ地区のソラール・ド・ケイジョ社(Solar do Queijo da Serra da Estrela)のチーズは、証明ラベルが付けられます。

会社:ソラール・ド・ケイジョ社(Solar do Queijo da Serra da Estrela)
住所:Largo de Sta Maria nº5, 6360 Celorico da Beira, Portugal

こうして最高級のチーズができあがります

ソラール・ド・ケイジョ社があるセロリコ・ダ・ベイラ地区。北部らしい趣ある町並みです。

羊のチーズ。最初はちょっとクセが気になるかもしれません。でも、食べているうちにその奥行のある味に魅了されてしまうのです。とっても贅沢な気分にしてくれるチーズです。
パンやトーストと一緒に食べても美味しいですが、カステラの元祖と言われる ポルトガルのパン・デ・ローと食べたらもうたまりません。

日本では、輸入チーズは値段が高くてそんなに気軽に買えない、と感じることもあるかもしれません。現地ではもっと手頃なのに…なんて思うことも。

でも、それは現状しかたのないことだと私は思っています。というのも、チーズはとてもデリケートな食品なので、輸送中の温度管理が必要な上、日本に輸入するための関税が他の食品よりも高いからです。世界中の生産者が心を込めて作ったチーズなら、有り難く味わっていただきたいですね。

もし、チーズ専門店でポルトガル産のチーズを見つけたら、是非お試しください。
もちろんポルトガルに行かれることがあれば、チーズ(ケイジョQueijo)をチェックしてくださいね。

それでは、また次回!