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23.カティの一日

第18章の「デブルバージュ」から始まりました「2001年の収穫期ポートレート」は今回を最終章としたいと思います。
ワインを造る為にはブドウを摘み、果汁を醗酵させる、と言うとしたらまことに簡単な定義で終わってしまうのですが、醸造現場ではこれを遂行するために沢山の細かい作業を強いられます。しかもそのどれもが良いワインを造るために重要なのです。
今日はそれらの中でほんの2〜3の作業をカティの一日を通して紹介してみます。

最初の写真は白ワインのいわゆる「ルモンタージュ」をややお疲れ気味のカティが最終ロットのセミヨンに対して行っていた時のものです。

このようにデュブルデュー教授は白ワインにたいしてもルモンタージュを行います。しかし赤の時のそれに比べて遥かにデリケートに、頃合を見計らって一回だけ行うのです。
酵母が少しだけ活動を始めて二酸化炭素を放出する頃にこれを行えば酸化の危険性はまったくない、と教授は断言します。その昔はだれもやらなかった事です。このお蔭で酵母は速やかに果汁中の糖を喰い尽くしてくれるのです。

ルモンタージュが終われば現在醗酵しているタンクや樽中のワインを抜きとって「密度」をはかります。

ワイン中に浮かべた密度計は手を放すと糖が減少していくにしたがって深く沈んでいくようになります。この密度測定を毎日すべての醗酵中のロットにたいして行い、醗酵がスムーズにいっているかどうかをチェックします。もしも密度が前日に比べてあまりかわらなければ一大事です。状況に応じて敏速な処置が要求されます。

醗酵が終わればそのロットに関したインフォメーションを記したステッカーをタンクや樽にぶら下げます。

さて、このステッカーを見ておかしいなァと思い、たまたま横にいたファブリス君に尋ねると笑いながら答えが返ってきました。
まず何か私にへんに思えたかということからお話しましょう。

このステッカーはボワイエーという区画が今年4番目のロットに数えられ、VL1という酵母で醗酵されたものがこのタンクに96hL入っている、さらにロット1のパロンビエールという区画から得たワインが1hL混入されている、という意味です。

ところでボワイエーというのはソーヴィニオン・ブランの区画です。教授はソーヴィニオン・ブランの醗酵にVL1を使うことは絶対にありません。これはセミヨンにおいてその特徴を発揮する酵母なのです。ほとんどすべてのソーヴィニオンのロットにたいしてはVL3cという酵母が使われます。

では何故、ということですが、カティが間違えてソーヴィニオンにVL1を添加してしまったのです。かわいそうに、このことでカティは教授から大目玉をくらったそうです。本人に聞かなくてよかったと思いました。
しかしながら、ひと事のように楽しそうに話すファブリス君、あなたも毎日パパに怒られているでしょ・・・!

樽醗酵が終了したロットでは一週間に一度バトナージュと呼ばれる作業を行います。

これはワインを撹拌して底に溜った酵母の死骸を懸濁させることです。これにはいろいろな意味があります。例えば新樽の場合にはワイン上部が酸化、下部が還元されやすい傾向があるのでこのシーソー関係を崩してやります。また良く知られていることは酵母の自己分解を促して、ある種の蛋白質等のワイン中への流出を期待します。これによってワインの安定化を狙います。さらにはヴァニラ香などを澱が適度に吸着して、過度の樽香がワインに付かない働きがあります。
よく言われることのひとつにアミノ酸の流出、旨みとのかかわりの指摘がありますが、アミノ酸は増えることはみんなが知っていても味わいに関するデーターがあまりに貧弱なのが現状です。

そのバトナージュに使われるバトンがこれです。樽中のワインを撹拌しやすいようにバトンは緩やかなカーブを描いています。先端部はこのままでは樽の中には入りません。
この部分は可動式になっていて樽に入れる時はこんな風になります。バトナージュは最初の2〜3樽は楽しいのですが、だんだんと辛くなってきます。そのうち、手の平の皮が剥けてくれば!この作業は卒業です。

今日最後の仕事はウイヤージュです。醗酵が終了するやいなや同じロットのワインで樽を満たします。
赤ワインのウイヤージュではご覧のような如雨露が使われます。
シャトー・レイノンでは白ワインの場合、ウイヤージュに使うワインの操作中の酸化の危険を考慮して、ステンレス・タンクに入ったワインを窒素ガスで送り出す、という面倒な事をしています。

ホース先端にはピストルが装着されていて、引金をひくことによって簡単にワインを充填できるようになっています。

笑顔でポーズをとってくれるファブリス君ですが、このあとアルコール度数の測定でパパからコテンパンに叱られるはめになりました。以前(第19章)でご紹介した、この為の計算尺の目盛を逆さまから読んだからです。

「醸造」は本当に大変ですが、みんながんばっています!

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