去る平成25年3月、伝統工芸士 三浦典久さまがご逝去されました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
染料を調合し、正確に色を再現する
繊細な流し染めは奥様が担当。
染色職人になる前は、まったく別の仕事をしていたという三浦さん。早恒染色の娘さんである、現在の奥様と結婚したのを期に、この世界へ飛び込んだ。染色職人であった、先代の義父に弟子入りをしたのだ。「当時は絞りの繁忙期。1日400反くらい染めていた。階段を四つん這いで上がることしかできないくらい、全身が痛かった」重労働のうえ、目の回るような忙しさ。ただ黙々と働き続けた修行時代は、「しんどかった」との一言。
徐々に染色技術を学んでいった三浦さん。「数ある染料を調合して、見本通りの色にぴったり染める。これが一番、やっかいで難しい。あれを混ぜて、これを混ぜての繰り返し。納得いくまで色出しの勉強をしたね」修行のかいあって、今では、絞りのゆかたを見れば、自分で染めた色かどうか、分かるほどにまでなったそうです。
しかし、「くくり職人」と同様に「染め」の世界でも、後継者不足は大きな問題。「若手が育って欲しい。せっかくの歴史ある産業なんだから。続けていかないと」。染めの仕事を始めた昭和50年代後半には、この忙しさが一生続くものだと思っていた。「仕事があれば、あるだけやる。でも、最近は仕事量も、以前と比べて減ってしまったけどね」そう語る三浦さんは、今日も変わらずに有松絞りを染め続けている。
水分を吸収した布地はかなりの重量
脱水すると鮮やかな色が浮かび上がる
奥様と二人三脚で店を切り盛り
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