日本酒とは   what is sake?

日本酒とは、白米を蒸して麹(こうじ)と水を加えて発酵・熟成させて作る飲み物の事で、料理の調味料としても用いられます。また酒は百薬の長と言われ、適量飲酒を心がけていれば非常に健康に良いとも言われています。
日本全国で様々な種類の酒が製造されており、各地の地酒として特色のある商品が流通しています。

一般には単にお酒(おさけ)、日本古語では酒々(ささ)、僧侶の隠語で般若湯(はんにゃとう)、現代の学生言葉では「ポン酒」などと呼ばれています。

杜氏   toji

日本酒の醸造方法とその管理方法は、世界でも類を見ないほど複雑にして、精巧です。
この技術を継承してきたのが杜氏です。 現在では、酒造りを行う技術者を酒造技能者と呼んでおり、酒蔵の長を杜氏、その他の技術者を蔵人と総称して区別 しています。
資格としては、酒造技能検定で一級技能士を持つ人が杜氏となっていることが多く、酒造りの責任の他、蔵人を総括し、蔵内酒造現場の管理をも行っています。
杜氏とは、すべての酒造技術面 のエキスパートであるばかりでなく、統率力、判断力、管理能力にひいでた人格者であることが要求されるため、蔵人になれば、誰もが杜氏にまでなれるとは限りません。

越後杜氏

杜氏は、それぞれの出身地の地名を冠して呼ばれ、新潟の杜氏は 「越後杜氏」と呼ばれています。 地域の特色を生かした独自の技術と味を作り上げ、 その伝統を守り、伝えています。
越後杜氏は、新潟県だけではなく、全国に招かれて 酒造りに携わり、「酒の匠」としてその名を広く知られ、兵庫県の丹波杜氏、岩手県の南部杜氏と共に 「日本三大杜氏」と言われています。

   rice

用途によって、麹米(こうじまい)用と掛け米(かけまい)用の2種類があります。
麹米には通常酒米(酒造好適米)が使われます。掛け米には、全部または一部に一般米(うるち米)が使われますが、特定名称酒の場合、酒米のみが使われることが多いです。普通酒は麹米、掛け米ともにすべて一般米で造られるのがほとんどです。

山田錦

山田錦は兵庫県西部にある播州平野、加古川の上流にあたる美嚢郡、加古郡、加西市に産する酒造好適米とされています。現在では、県外でも広く栽培されています。
その特性は軟質で大粒の心白米で、麹菌が米粒の内部に入り込む破精込み(はぜこみ)がよく、きめも細かいとされています。幅のある良酒を造るうえで最良の原料米とされています。ただ、栽培には大変手間がかかり、ヘクタール当たりの収量も多くないのが問題点ともなっています。

   water

水は日本酒の80パーセントを占める成分で、品質を左右する大きな要因となるます。
水源はほとんどが伏流水や地下水などの井戸水です。条件が良い所では、これらを水源とする水道水が使われることもありますが、醸造所によって専用の水源を確保することが多いです。都市部の醸造所などでは、水質の悪化のために遠隔地から水を輸送したり、良質な水源を求めて移転することもあります。酒造りに使われる水は、仕込み水はもちろんのこと、瓶やバケツを洗う水まで酒造用水なのです。 また、蔵元によっては仕込み水そのものを商品として販売しており、その水が好評をもって消費者に受け入れられています。

硬度

水の硬度は、酒の味に影響する要素の一つです。
造られる酒の味は、おおざっぱに言えば、軟水で造ればソフトな酒、硬水で造ればハードな酒になります。理由は、醸造過程で硬水を使用すると、ミネラルにより酵母の働きが活発になり、アルコール醗酵すなわち糖の分解が速く進み、逆に軟水を使用するとミネラルが少ないため酵母の働きが低調になり醗酵がなかなか進まないからです。ただ、軟水で醸した酒の味わいが現代人の味覚に合っているとして、近年では軟水も見直されている傾向もあります。

日本酒の種類   sake

吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」は特定名称酒と呼ばれ、原料・製造方法のちがいを示すものです。これらを商品に表示をするための製法の条件(使用原料、精米歩合、こうじ米の使用割合、香味等の要件)が、「清酒の製法品質表示基準」として定められています。 特定名称酒は、ランク付けや酒の優劣を決めるものではありません。清酒では酒造技術が酒質に与える影響が大きく、きき酒や成分分析など総合的な評価により判断することが重要です。

清酒の製法品質表示基準

特定名称 使用原料 精米歩合 麹米使用歩合 その他要件
吟醸酒 米・米麹
醸造アルコ-ル
60%以下 15%以上 吟醸造りをしたもので、固有の
香味及び色沢が良好なもの。
純米酒 米・米麹 ------ 15%以上 香味及び色沢が良好なもの。
本醸造酒 米・米麹
醸造アルコ-ル
70%以下 15%以上 香味及び色沢が良好なもの。
大吟醸酒 米・米麹
醸造アルコ-ル
50%以下 15%以上 吟醸造りをしたもので、固有の
香味及び色沢が良好なもの。
純米吟醸酒 米・米麹 60%以下 15%以上 吟醸造りをしたもので、固有の
香味及び色沢が良好なもの。
純米大吟醸酒 米・米麹 50%以下 15%以上 吟醸造りをしたもので、固有の
香味及び色沢が良好なもの。
特別純米酒 米・米麹 60%以下又は
特別な製造方法
(要説明表示)
15%以上 香味及び色沢が良好なもの。
特別本醸造酒 米・米麹
醸造アルコ-ル
60%以下又は
特別な製造方法
(要説明表示)
15%以上 香味及び色沢が良好なもの。

(参考文献) 国税庁『「清酒の製法品質表示基準」の概要』(2003年10月)

大吟醸酒   daiginjo-shu

50%以下の精米歩合の白米、米麹および水を原料とし、吟味して製造した清酒で、吟醸酒よりさらに徹底して低温長期発酵する。固有の香味及び色沢が特に良好なもの。
最後に吟醸香を引き出すために少量の醸造アルコールを添加する場合もあります。この場合は、純米大吟醸酒にはならず、大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)となります。
フルーティで華やかな香りと、淡くサラリとした味わいが特徴です。

大吟醸酒のうち、50%以下の精米歩合の白米、米麹及び水のみを原料とするものを純米大吟醸酒と言う。一般に、他の大吟醸酒に比べて、穏やかな香りで味わい深い。
大吟醸酒は最高の酒米を極限まで磨き、蔵人の力を結集して醸した日本酒の最高峰といえます。

大吟醸酒を美味しく飲むために

冷(10℃前後)
吟醸酒の特徴である清涼感や香りが冴えます。
賞味期限:10ヶ月 / 開栓後賞味期限:2ヶ月
注意:冷やしすぎると香りが感じにくくなったり、酸味や苦味が突出することがあります。

吟醸酒   ginjo-shu

吟醸という言葉は大正時代の後半からありましたが、それが徐々にあるタイプのお酒を呼ぶ言葉になってきました。一般に吟醸酒が、私たち消費者の目に触れ、また飲まれるようになったのは、昭和40年代からだという人もいます。しかし、実際はここ10年のことといってもいいでしょう。
お酒造りに適したお米を使い、60%以下の精米歩合、吟醸造りという高度な製法で造り上げるというお酒です。大量生産は難しく、製造コストも高くつき、したがって値段も高くなります。しかし、味・香りともに日本酒の最高峰を示しており、品評会などにはこのお酒が出品されています。

吟醸酒を美味しく飲むために

冷(10℃前後)
吟醸酒の特徴である清涼感や香りが冴えます。
賞味期限:10ヶ月 / 開栓後賞味期限:2ヶ月
注意:冷やしすぎると香りが感じにくくなったり、酸味や苦味が突出することがあります。

純米酒   junmai-shu

お米だけを原料に酒を造っている、というのが純米酒です。
では、「それ以外のお酒はどうなのか」というと、一部醸造用アルコールや糖類などを使用しているのです。純米酒を愛好する人は、混ざり物のない米だけのお酒として安心して楽しめるといいます。また酒造技術の進歩で、精米歩合を高めて、すっきりとした高級酒を造ることができるようになったことも、純米酒の愛好家を増やす結果となりました。ただ、醸造用アルコールを添加することを罪悪視するのは、いろいろ意見のあるところで、一概に是非は言えません。

純米酒を美味しく飲むために

冷(10℃前後)〜ぬる燗(40℃くらい)
飲用温度に幅があります。米本来の旨みやコク・膨らみを感じるためには、ぬるめのお燗がお勧めです。
賞味期限:10ヶ月 / 開栓後賞味期限:2ヶ月

本醸造酒   honjozou-shu

日本酒の最も基本的なお酒。本醸造と表示できるのは、70%以下の精米歩合で、原料米も規定されており、アルコールの添加についても規定されています。
「冷やに良し」「爛に良し」と飲み方もいろいろで、酒蔵を代表するお酒です。

本醸造酒を美味しく飲むために

冷(10℃前後)〜熱燗(50℃くらい)
飲用温度に幅があります。熱燗にしても、酒本来の特徴を損ないません。
賞味期限:10〜12ヶ月 / 開栓後賞味期限:2〜3ヶ月

生酒   nama-zake

生酒には「生酒」「生貯蔵酒」「生詰め酒」の三種類があり、それぞれ違いがあります。
もともと日本酒は二度火入れ(加熱して酵母の活動を休止させる)をして出荷するもの。
この火入れを一度もしないお酒が「生酒」となります。新鮮な味と香りが特徴ですが、保存管理の面で注意する必要があります。「生貯蔵酒」は出荷の直前に一度だけ火入れを行っているもので、「生詰め酒」は生酒を加熱処理して貯蔵し、ビン詰めの時の火入れを省いた酒の事をいいます。

生酒を美味しく飲むために

爽快な酒室を爽涼な飲み口、フレッシュな味わいが特徴なので、氷温近くまでしっかりと冷やすことがお勧めです。
賞味期限:10ヶ月 / 開栓後賞味期限:2ヶ月

その他   other

古酒

長期間の貯蔵を経たお酒。
落ち着いた香りと、まろやかで豊かな風味をもっています。

原酒

麹と米と水を加えてできたもろみを絞ってからは、醸造用アルコールを加えたり、ブレンドしたり、水で割っていないお酒。一般的にアルコール度は高くなります。

山廃(やまはい)仕込み・生もと仕込み

雑菌を駆逐するための乳酸菌を人工的にではなく、昔ながらのやり方で取り込んだお酒。
しっかりとした濃醇な味になります。

味わい   tasting

甘酸渋辛苦

古来、「酒に五味あり」といわれた甘酸渋辛苦の五味がほどよく調和したものが一般的に良い酒といわれ、味にも一定したものなく、さまざまなタイプの単に甘辛だけでは表現できない味の複雑さ、それが日本酒なのです。

日本酒度   sake degree

甘口と辛口の目安《日本酒度》

日本酒には甘口辛口があることは広く知られています。
甘口酒は糖分が多く、酸の量(主としてコハク酸と乳酸)が少ないのが特徴です。
辛口酒は、糖分が少なく、酸 量の多い酒になります。

日本酒度グラフ

一般的に、日本酒の甘口辛口の目安には、日本酒度計を用います。
日本酒度とは、それぞれの日本酒の比重を計って、この糖度の割合 を示したものです。比重計には(+)と(−)の印と数字があり、摂氏4度の純粋な水(比重1)と同じ重さの摂氏15度の日本酒を日本酒度±0とします。こ れを酒に浮かべると、糖分が多い甘口酒は比重が重いので上に浮き、辛口酒は下に沈むのです。つまり、目盛りが(−)を示せば甘口酒、(+)は辛口酒となり、数値はその度合いを示します。

飲み口を微妙に左右する《酸度とアミノ酸度》

日本酒に含まれる酸は、コハク酸、乳酸、リンゴ酸の3つの酸が全体の酸量の大部分を占めており、清酒の甘辛に微妙に関係しています。日本酒度が同じ場合には、酸度が高い方が辛口で濃く感じられます。
一般的な日本酒の酸度は、1.2前後。この酸度は酸の総量を表したもので、これは、10ミリリットルの酒を中和するのに要する水酸化ナトリウム溶液のミリ リットル数を指しているのです。
また、日本酒中のアミノ酸の総量を表すのがアミノ酸度です。これは、10ミリリットルの日本酒に対して、水酸化ナトリウム 溶液にホルマリン溶液を加えて測定した際のミリリットル数を指しています。一般にはアミノ酸が多いと味は濃くなりますが、多すぎると雑味が出やすくなると いわれています。
酸度アミノ酸度は、ラベルに表記されることはありません。

淡麗辛口   gracefully dry

口あたりがやわらかく、抵抗なく飲める淡麗辛口。
日本酒度が高く、酸度が低いことからしつこすぎず、爽快感を覚える軽い喉越しが特徴です。
強烈な個性はないものの、誰の口にも合いやすいタイプ。和洋問わずどんな料理とも相性はよいといえますが、あまり味が強い料理や脂っこいものだと料理の味に負けてしまいます。

淡麗甘口   gracefully sweet

しつこさのない軽い甘さで、ソフトな口あたりが淡麗甘口の特徴です。
米の甘みとそれを引き立てる酸味とのバランスが絶妙。
料理は比較的薄味のものとあいますが、酸度が低いことからそれほど料理を選ぶことはありません。料理の味を邪魔しない甘口のお酒をお探しの方におすすめ。

芳醇辛口   mellow dry

日本酒の味の五要素である甘・辛・酸・苦・渋がもっともバランスよく融合し、深い味わいを持つお酒。
醸造用アルコールを いっさい使用しない純米造りや、じっくりと時間をかけて酒母をつくる山廃仕込みがこの分類に多いのが特徴です。
しっかりしたコクは味の濃い料理にも負けな い力強さがあることから、塩辛やすき焼きを食べながら一杯いかがでしょうか。

芳醇甘口   mellow sweet

米本来の甘みを生かしたコクの豊かなお酒。
べたべたした甘みはなく、口あたりのとろりとしたやわらかさと甘い香りが特徴です。
あっさりとした料理とよくあうことから、調味料をあまり加えずに素材本来の味を活かした料理と一緒に召し上がられてはいかがでしょうか。