ちょっと違うポルトガルのソーセージ

キリスト教が浸透しているポルトガル
宗教がルーツのお料理やお菓子が多いのは良く知られています。

特に黄色いお菓子については、その多くが修道院から生まれたと言われています。

ポルトガルと言えば黄色いお菓子

でも、中にはキリスト教徒の目をごまかすために生み出され、今ではそれがポルトガルの家庭の味になっているものがあります。

それがこちらのソーセージ。

よく見かける形です

ソーセージというと、一般的には豚肉や牛肉を腸に詰めたものです。
ヨーロッパでは昔から豚肉が良く食べられ、ソーセージも保存食として作られていました。

15世紀末のポルトガルでは、他の宗教を信仰する者をカトリックへの改宗させる運動がありました。ユダヤ教徒もその運動から免れることが出来ず、厳しい取り調べが行われたと言います。

それまでポルトガルには、政治や経済面で優秀なユダヤ人が活躍していました。
しかし、ユダヤ教徒の強制改宗により多くのユダヤ人が追放され犠牲になったと言われています。

その際にユダヤ教徒の棄教を証明させる方法が、ソーセージを食べさせることでした。
豚肉を食べることを禁じているユダヤ教。
まだ彼らがユダヤ教徒なら、ソーセージは食べないだろうという考えのもと行ったのでしょう。立場は違いますが、日本で言う江戸時代の踏み絵みたいな感じと考えるとわかりやすいかもしれません。

そこでユダヤ人たちは周りのキリスト教徒の目を欺くため、ユダヤ教徒でも食べられるソーセージを考え出しました。

それが上の写真のソーセージです。

前置きが長くなりましたが、このソーセージ、実は中身に豚肉を使っていません。
鶏・ウサギ・鴨などの肉とパンを混ぜたものなのです。当時は豚肉が主流でしたから、他の肉を手に入れるのは難しかったのかもしれません。パンでかさを増し、香辛料などの味付けで豚肉ソーセージに近づけたのでしょう。

特に北部の町トラス・オス・モンテスには、当時ユダヤ人のコミュニティーがあり、この種のソーセージが作られたようです。今でも北部でよく食べられています。

一般的にアリェイラ(Alheira)という名で親しまれています。
スーパーではだいたい1~2ユーロで手に入ります。
中身が出ないようにボイル又はグリルし、野菜やフライドポテト、目玉焼きなどと合わせて食べます。

安くてお腹いっぱいになるメニューです。

上の写真、茶色い方はファリ二ェイラ(Farinheira)と呼び、黒い方はモルセラ(Morcela)と呼びます。少しマニアックになりますが、ファリ二ェイラは小麦粉を加えたもの、モルセラは小麦粉や米に脂肪をまぜ動物の血で固めたもので肉自体は入っていないそうです。
モルセラは色と香りともに、日本人にはちょっと抵抗があるかもしれません。

家庭ではこんな感じにパスタと混ぜて食べたりします。

町の市場でも屋台スタイルで焼いていることがあります。

いい匂いについつい誘われます。

このソーセージ、最近は魚や野菜で出来たものもあり実はとってもバリエーションが豊富です。アレンテージョ地方のパンを使ったミーガシュのような感じなので、好みが分かれるメニューです。パンとミーガシュについてはこちら

日本ではほとんど紹介されていないポルトガルソーセージ、いかがでしたか。
興味ある方は現地のカフェや食堂で頼んでみて下さいね。ソーセージだけがない場合は、コジード・ポルトゲーサ(Cozido à portuguesa)を頼むと入っていることが多いですよ。
ではまた次回!