ポルトガル人だから残せた伝統的な職人技!

このところ、すっかり冷え込むようになりました。

みなさん風邪などひかれていませんか。
私も体調を崩さないよう、睡眠だけはしっかりとるように心掛けています!

さて、ポルトガルで過ごしていると感じるのですが、都会でも流れる空気がなんだかゆったりとしています。道行く人はあまり焦る様子もないですし、地下鉄の通路を走ったりする人も見たことがありません。お店では、お客さんと店員さんが長々と世間話をしていることも良くあります。仕事でランチミーティングと言われれば、3時間は確保しておかないといつまでも続く会話にハラハラしてしまいます。

仕事を一緒にする上では、もう少し急いでほしい!と思うこともありますが、
まさに今を生きる、その時にベストだと思うことをする、ところがポルトガル人らしさだと感じています。そしてその国民性が、手間のかかることや感性が活かされるものを作り出すことにつながっているのではないでしょうか。

少し前置きが長くなりましたが、ポルトガルには昔から続く伝統的な仕事があります。
その一つが、私が輸入をしている「フィリグラーナ」です。

伝統的なハートのペンダント

フィリグラーナはアクセサリー以外にも色々なアイテムがあります。こちらは小箱。

フィリグラーナは今から5000年も前に、フェニキア人が始めた金細工が起源と言われています。大航海時代に繁栄を謳歌していたポルトガルですが、17世紀になり海外領土ブラジルからもたらされる金をふんだんに使うようになり、ポルトガルにも伝わっていたフィリグラーナを、より洗練されたジュエリーへと発展させていったのです。

多くの工程を経る必要があるので、出来上がるまでに時間がかかるのですが、 美しいものを追求して最高の形にしようとしたのは、当時裕福な貴族と腕の良い職人がいたから生み出されたことなのだと思います。

金や銀など素材を溶かすところから始まります。

金や銀の棒を、何度も何度もローラーで引き伸ばします。

必要なサイズの穴に通して細さを調整します。

髪の毛くらいの細さにした線を2本よじり、金銀線を作り出します。

この作業は地味ではありますが、非常に細い線が切れないように1本に仕上げていくのがとても難しく、熟練職人にしかできない技なのです。
必ず2人1組になり糸をよじっていきます。

出来上がった金銀線を使ってフレームに模様を入れていきます。

私が日本でお世話になっている一級技能士の職人さんも、
ポルトガルのフィリグラーナはそう簡単に真似できないとおっしゃいます。
「全ての工程で集中力とセンス、根気が求められるから」と。

フィリグラーナが今でも生み出されているのはこんな自然豊かなところです。

貴金属を扱っていることが分からないように、ほとんどの工房が住宅の形をしています

写真はかつて多くの貴族が住んでいたブラガやギマランイスの間に位置する町で、今でも繊細なフィリグラーナが作り続けられています。ここに住む人々はシンプルですが、きっとこの豊かな自然が気持ちをのびやかに優しくし、独特のセンスを生み出すのだろうと思います。毎日多くの情報が行き交う都会とは違いますが、だからこそ集中力が高まるのかもしれません。

職人が時間を費やし生み出したフィリグラーナを見ていると、本当に大事なことは時間をかけて丁寧にするように、と言われているような気がします。

ここ数年で世界的にもポルトガルのフィリグラーナは注目されていて、最近はハリウッド女優のシャロン・ストーンやミラ・ジョヴォヴィッチが身に着けていることが取り上げられていました。何世紀も前に生み出された技術ですが、長年受け継がれているものは、いつまでも人々を魅了するのだなと思います。普遍性でしょうか。

北部は貴族が多く住んでいたと言われています。今でも町にはそんな趣があります。

もちろんポルトガル人も十人十色、地域によっても習慣の違いがありますが、全体的にゆったり人生を大切に生きている人が多いと感じます。経済的にすごく豊かというわけではないのですが、なぜか自信と余裕があり美意識もなんだか高いのです。大航海時代の栄光を誇らしげに話す人も多いのですが、そんなDNAが残っているのかもしれません。だからこそ、このフィリグラーナの様なジュエリーが生まれ受け継がれているのだと思います。

今月は東京にて展示会もしますので、この機会にフィリグラーナを見に来てくださいね。

日時:2016年11月18日(金)、19日(土)10:00~18:00
場所:アトムCS タワー1F ギャラリーショップKANAGU(東京都港区新橋4-31-5)

では、また次回!