今回は8代目蔵元 稲岡敬之さんに直接取材し、伝承と変革の中で進化し続ける富久錦純米酒の真髄を紐解いていきます。
農大に通われていたとのことですが、
最初から酒蔵を継ぐつもりで進学されたのですか?
結果的に継ぐことになったという方が正しいです。高等学校在学時に初めて日本酒ができる過程を見て、米と水が混ざってから酒になる瞬間が面白くて、興味本位から農大に進学しました。大学卒業後、さらに2年間研究所でお酒について学び、その後富久錦へ入社、平成25年に8代目蔵元に就任しました。
富久錦ならではのこだわりを教えてください。
地元米100%で純米酒を作っていることです。富久錦では食は純粋であるべきだと先代より受け継がれてきていて、昭和62年に純米酒宣言を行いました 。平成4年に純米酒化、平成9年には地元加西の酒米のみを使用した地米酒化をしました。
また、加西市でしかできない米で加西市しかできない酒を造るべく、米農家の方たちと共に富久錦純米酒を追求してきました。
例えば、加西市は土地柄温暖化の影響を受けやすいのですが、気候や土壌は酒米を作るのに適しています。なので、地元農家の方々は気候に合わせて田植えの時期を変えたり、稲の間隔を空けて風通しを良くしたり、水入れを夜に行うことで加西市の環境を最大限に利用して米作りをしています。
そういった農家の方々の努力と工夫で育った酒米100%で富久錦の純米酒はできています。
8代目蔵元 稲岡さんのおすすめは、『神代の舞』
『神代の舞』は蔵についている菌が影響する「生酛(きもと)造り」でできた純米大吟醸酒。蔵の味は酒蔵によって異なり、富久錦さんならではの味を楽しむことができます。なんといっても酸味がまろやかな所が富久錦の蔵の味の特徴で、冷かぬる燗で飲むのがおすすめだそう。
素材本来のおいしさを堪能できる『旬』を選ぶこと
食は純粋であるべきという哲学のもと作られた富久錦純米酒と旬の食べ物は相性抜群。米と水のみで作られた純米酒は、旬の野菜の和え物や、魚介の酒蒸しなど、素材本来の味を活かしたお料理といただくと、お互いの味がさらに引き立ちます。
富久錦さんでは食の時間を楽しむことができるお食事処を酒蔵に併設された『ふく蔵』で営んでいます。ふく蔵では選りすぐりの素材をできるだけシンプルな調理方法で提供していて、中でもふく蔵弁当が大人気です。加西市で収穫された新鮮な野菜も使用されていて、この地ならではの食を存分に楽しむことができます。
ふく蔵:〒675-2223兵庫県加西市三口町1048
電話番号:0790-48-2005
※ランチやカフェは数量限定なので事前予約がおすすめです。
今後の展望を教えてください
平成13年に富久錦の考えを発信する場として直営店『ふく蔵』がオープンしました。そのふく蔵を、これからは加西市の情報発信の場として活用していきたいと考えています。
加西市を訪れた方が、まずふく蔵に足を運ぶ。そこで加西市の情報を得たり、地元の方と交流したりすることで加西市の地元価値向上に貢献したいです。
取材を通して、地元加西市の酒蔵として地域とともに発展を遂げている姿が明らかになりました。「心に響く日本酒をお客さまにとどけたい」そんな富久錦さんの一途な思いに共感が生まれ、『富久錦純米酒』はたくさんの方に親しまれ愛されています。
思いの詰まった『富久錦純米酒』をぜひご賞味ください。