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TAKAのボルドー便り


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29.スイスの葡萄畑

数年前よりデュブルデュー研究室ではスイスに固有の、あるブドウ品種から得られたワインの香りについて地元の研究機関との共同研究が進んでいます。そのプロジェクト推進、そしてボルドーで行われたソーヴィニオンについての講演の為にここスイスは「シオン」という処に来ています。
ジュネーブまで飛行機で行き、そこから列車で1時間半のところです。レマン湖に沿ってローザンヌを経由してシオンに辿り着きます。このあたりはヴァレー州、ローヌ谷になります。


ローザンヌとモントローの中間地点で見るレマン湖です。
そしてその対岸にはブドウ畑が広がっています。
  


シオンに到着して、さっそくブドウ畑を見に出掛けました。小高い山を登っていきます。
シオンの名所、丘の上のトゥルビヨン城(左)とヴァレール教会(右)です。
写真では実感が掴めませんがブドウ木はかなりの急斜面に植えられています。
収穫したブドウをどうやって運び降ろすのかと思ったら、御覧のようなモノレールが所々に配置されていました。
随分と太いブドウの木だと思ったらそうではなく、ゴブレという剪定だそうです。
品種はシャスラー。
しかしもう現在ではこの剪定は行われないとのことです。

夜はシオンの農業研究施設の教授宅に招待されました。
そのお宅の玄関先での風景。思わず、「まるで一年中バカンスに来ているみたいですネ」と言いそうになり、慌てて口をふさいだ私でした。
 

駐車してある車の右の赤い帯は何だろうと思っていってみると、ブドウの苗木でした。
 
アメリカのブドウ台木に接木をしてピッチで固めてあります。
教授宅ではその夜、名物のラクレットを御馳走になりました。これについてはもう少し先を御覧下さい。

翌日の講演後、5000hL規模の生産者のカーブを訪問しました。
シオンではブルゴーニュ以上に畑が細分化されており、500メートル四方のブドウ畑の所有者も普通とのことでした。したがってそれらからブドウを買い上げて醸造するということが必要になります。ここはなんでも揃っている、そしてタンクもフィルターもなんでもデカイ、という印象のカーブでした。

この細長いタンクは赤ワイン用だそうです。
メドックではマールと果汁の接触効率を高める為に背の低いタンクをみましたが、ここはその反対のことをやっています。なにか特別な理由があるのかと思い興味津々で尋ねたところ「カーブの天井が大変高いので、空間利用の為」というごもっともな答えが帰ってきました。

御自慢はタンクの底に配置されているプロペラです。
これでマールを外に出すことができるので、人間が中に入りシャベルでかき出す必要がありません。

ここではスイス固有のブドウ品種から造られたいくつかのワインを試飲させてくれました。
ユマニーブランシュ、ハイダ、アルヴィン、アミーニュの他にはフランスでもお馴染みのマルサンヌ、サヴァニャン、シャスラー、シラー、カベルネ等です。
ところでテースティングルームの片隅に置かれたこの箱、なんだと思いますか?これ全体が背負い篭のようになっていて、昔はこれに収穫したブドウを入れて急斜面を降りたのだそうです。空の箱だけでもかなりの重量です。
そしてその横にある一枚の写真に妙に心を打たれました。馬と何かとの掛け合わせとかで、「あまり食べないのに良く働く」ということを聴いて急斜面を耕しているこのポニーちゃんが背後の雪をいただいた山々に写し出されたブドウ畑とともに、なんとも哀愁に包まれる思いがしたのです。
「ブドウがそこにあるから、これを摘んでワインにしなければならない」という私のこの台詞は収穫期のデュブルデュー教授の家族を見て思うことですが、これはブドウが植えられた処に漂う宿命のように感じとれます。華麗なメドックのシャトーの訪問でさえ、耳をすませばきっと聴こえると思うのですが・・・。
私が感傷的過ぎるだけでしょうか。

その夜は一人で街の散歩にでかけました。
ちゃんと地元の評判のレストランも教えてもらいました。
宿泊したホテルは先に紹介したヴァレール教会の真下ですが、お目当てのレストランはこの教会の裏側ということで、食前のいい運動になりそうです。
街並は大変綺麗です。家々のデザインはなんとなくアルザスのそれを思わせます。
チーズ屋さんには定番のラクレット用のチーズが売られています。

暫くあるいてやっと教会の裏側にでました。目指すレストランはこの正面です。
店内は18世紀の石造りです。
 

まずこの地方の特産のハムを頼みました。しかしハムというよりは干し肉の薄切りに近い感じです。このあと、フォンデューかそれともラクレットかと迷いましたが、教授宅でのラクレットが美味しかったのでここで再びこれに挑戦しました。

さてラクレットとはまず先程の大きな半円のチーズの表面を専用の電熱器で溶かします。それをナイフでかきとって溶けているアツアツをお皿にのせます。

別に篭にはいったジャガイモが供されるのでこれを皿にとって適当に崩し、溶けたチーズをのせていただくのです。
たったこれだけのことですが、結構旨いものです。
人によっては先のハムを残しておいて、ジャガイモとチーズと一緒に食べるそうですが、正当派はジャガイモ一筋だそうです。
 

ボルドーで一度だけラクレットを食べたことがありました。そこではハムや牛肉、アスパラガズなど盛り沢山にでてきてそれらの上に薄切りのチーズをのせて、専用の電熱器で溶かして食べるものでした。
その知識があったものですから、初日教授宅でラクレットをだされた時にまず大きなお鍋にジャガイモがびっしり入って出てきたものの、このあとに肉がでるから控えめに食べようなどと一人でブツブツ言っておりました。しかしいくら待っても何もでてきません。

家族は黙々とお鍋の蓋をあけてはアツアツのジャガイモをとりだし、教授がのっけてくれる溶けたチーズをからめて食べています。「肉は何時でるの?」とも聞けませんから私も一応笑顔でジャガイモをひたすら食べます。しかしさすがに4つ食べればもう何も入りません。

「夏でもよくラクレットをやるのですか?」と尋ねると季節に関係なく人がたくさん集まった時にするとのことでした。でも「チーズがなかなか自分の番にならない」という欠点があるそうです。

結局教授は終始立っ放しで溶けたチーズを皿に盛っては順番に配っていました。最後に教授曰く、「シオンは昔大変貧乏な街だったので、ラクレットしか食べなかった」と話してくれました。
正当派はジャガイモ一筋、ということがよくわかりました。しかし現在ではこの為のチーズは結構高いと思うのです。教授宅ではやはり大きな半円のチーズを6人で全部使ってしまいました。

さて、話は今宵のレストランに戻ります。
食事を終えて外にでればもう夕闇です。

ホテルへの路の途中で寂しく光る街路灯に惹かれて一枚撮りました。見知らぬ街でのこんな光にいつも心を奪われます。

スイスのブドウが私にくれた旅でした。できるだけ沢山のブドウ達と逢えることを願っています。
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