白鳥町のグローブ職人さんインタビュー01「白鳥町の職人の想い」
「昔はこの白鳥町にもいっぱいのグローブ職人がおったけんど、労働力の安い中国や東南アジアに工場を移転する企業が増えて最近ではグローブを手づくりする職人が少のうなったなぁ」芳田さんはそう、つぶやいた。
アスキューでも現在、ゴルフグローブの製作をお願いしている職人さんは
芳田さんご夫妻を含め二組だけである。
実は、あまり表に出たくないという芳田さんに、今回無理を言って取材させて頂いたのだ。
グローブ職人さんのすばらしさを伝えるために。
そして、これからのゴルフグローブ職人の育成のためにと。
芳田さんご夫婦は二人で一枚のゴルフグローブを完成させる。
革を見極め伸ばし、グローブパーツごとに裁断する作業は芳田さんが受け持つ。
グローブ作成に欠かせない革伸ばし作業。
裁断前にきちんと革を伸ばしておかないとグローブの仕上がりに影響する。
一枚のラム革を縦横に伸ばすだけの作業。
しかし伸ばす頃合いを見極めるのが難しい。
革は生きものである。場所によって伸び率も違う。縦にも横にも伸びないと手にしっくりと馴染むグローブにならない。
また、伸ばしすぎると、手にはめた時にフィットしにくいグローブが出来上がる。
芳田さんは言う。
「簡単そうに見えよるけど、この革伸ばし作業が重要なんで」
革伸ばしが終わると次は裁断作業。
手型を見て、その手型に合った裁断をするのに熟練の技が必要となる。
「手型を見て、例えば小指だけ長い人がおったとする。
そんな時は全体の手の大きさを見て、ほんまに小指だけが長いんか判断する。
実際は小指の爪だけを伸ばしとったゆうこともあるけん。
そーやな。用紙に押してある手型を見て、指紋から先が何ミリあるかで
指か爪かを判断しとったりする。あとは指の股がどこかかな。
長いこと、いろんな手型を見よったら、
だいたいその辺りのことはわかるようになったわ」
手元に届いた一枚一枚の手型を見ながら、手の平部分、指のマチはこれという具合に、
どのパーツをどの抜き型サイズで裁断するかを決定する。
その後、お客様の手型用紙一枚一枚に、指先をあと何ミリカットするかなどを細かく書き込んでいく。
「手型は病院のカルテみたいなもん。人それぞれ違うし、見せるもんとちゃうけんね」
短い親指、人差し指が長い手。人間の手も千差万別、様々なタイプがある。
「お客さんから届く手型を見よったら、手型の押し方で性格がわかるような気ぃするねん。
身体つきや性格の豪快さとかな」
そういって芳田さんは、力強く押された手型を見せてくれた。
「仕事は見よう見まねでも8割はできるけんど、残りの2割がなかなかできんけん。
この2割が職人の技や。
職人の仕事はこだわりをもっとるかどうかや。
昨日はこうやったけど今日はもっとこうしてみようかって日々仕事しよる。
やってみて、失敗したら元に戻したらええし、成功したらそれを続けたらええ。
職人って言われとる人は頑固一徹みたいに言われとるけんどみんなよう勉強しとるよ。
ほんまにそう思う」
出来上がったグローブが気になりますかと尋ねてみた。
「そらぁ気になるわ。一生懸命作っとるし、心配しとる。
一枚一枚、どうなっとんかな、気に入ってもろとるやろかって。
自分もゴルフをするけん、特にそう思う。
ゴルフグローブを作る以上、その人に合うもんを作らんといかん」
最後に芳田さんは言う。
「作り手に対しすいませんや遠慮はいらん。気を使わんと自分の要望を言うて欲しい。それがオーダーメイドなんやけん」と。
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