タンナー(皮革職人)さんにインタビュー
「処方箋ですか……。おもしろいですね」
思わずつぶやいた。
タンナー・藤本安一商店さんの染色タイコを制御するコンピュータールームでの出来事だった。
アスキューのゴルフグローブ革はこちら、藤本安一商店さんでなめして頂いている。
そのアスキュー専用に配合された染料や加脂の配合を
書いたものを【処方箋】と呼んでいると、
今回インタビューに協力していたいた、
藤本安一商店の取締役・藤本真司さんは教えてくれた。
革をつくるタンナーさんが その配合表を【処方箋】と呼び、手袋職人さんは お客様から届いた手型のことを 【病院のカルテみたいなもの】と表現する。
なにか 共通点のようなものを感じながらインタビューはスタートした。
工場の中では多くの人が働いている。
革を選別する人、タイコを廻す人、
シェービングする人……。
一枚の革ができあがるのに
こんなに多くの工程があり、
こんなに多くの人が携わっているとは正直、驚きだった。
「全工程すべてを把握し、こなせる人は少ないよ」 藤本さんはいう。
現在、
藤本安一商店さんでは浸酸された皮からの作業となるが、
その昔は全工程を行なっていたそうだ。
藤本さんは小学生のころから工場に出入りし、
皮の平積みを手伝うなどしながらその工程を見て育った。
その後、海外に留学しカナダの原皮屋、イギリスの皮革学校、
スペインのタンナーなどで学んだ後、国内のタンナーで修行後、
ここ藤本安一商店に戻ってきた。
革に携わって40年。
いろんな所で学んだからこそ、
自分には革についての基礎があると藤本さんはいう。
しかし、 今それらすべての工程を一人が学ぼうと思っても とてもじゃないけどできず莫大な時間がかかるともいう。
それではこれからのタンナーは どのようになるのでしょうかと尋ねてみた。
今のタンナーは、
すべてを一人でやるのではなく、
それぞれの持ち場の仕事でプロになることが大切。
どの工程が悪くてもいい革は作れず、
一人がみんなの足をひっぱることができる。
一人が60点の仕上がりだったら、
他のみんなが100点の仕事をしても、
それは60点の革しか仕上げることができないと。
革は正直である。
出来上がりが、なにか違う。
それはきっと
なにか違うこと(間違ったこと)をしているから。
なにかちがうと完成品にならないのだと。
そう。
タンナーの仕事にはごまかしがきかない。
みんなの力が集まって一枚の革を作り上げる
革のプロフェッショナル集団なのだ。
そんなタンナーさんの手で仕上げられた
アスキューのオーダーグローブの革も
多くの要望から出来上がった。
タンナーの仕事のひとつに処方箋の調合がある。
テストタイコを廻しながら染料や油脂の量を調整し、
お客さんが望む革になるための配合を決める作業だ。ちょっとした配合量の違いで、
風合いやカラー、仕上がりが大きく異なる。
処方箋が出来上がってもそれで完成ではない。
あくまでもテストタイコでの処方箋なので
実際の本タイコを廻したらさまざまな問題も出てくる。
しかし藤本さんはいう。 「皮が革になる工程は長い。 どういう革が作って欲しいか要望をいってもらい、 その要求された色に仕上げるのが僕らの仕事。 できるだけお客さんの要望は聞いてあげたい」と。
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