こころとからだの健康タイム・対談編26-3

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 このコーナーでは、エヌ・ピュア社長・鳴海周平が各界を代表する人生の達人との対談を通して、「こころとからだの健幸」に役立つ様々な情報をご紹介しています。毎日の健幸にお役立ていただけましたら幸いです。

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Vol.26 ゲスト:小出義雄さん 【3】

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鳴海 周りの皆さんにはきっと監督の夢への想いが伝わっていたのでしょうね。きっと、一緒に夢の続きを追いかけたかったのではないでしょうか。それにしても、現実的にあと2年で将来の年金が保証される、という時に奥様も凄い決断をしたものだと思います。やはり、長年監督を支えてきたことで「この人なら。」という自信があったのと、そういう大きな器量をお持ちの方だったということでしょう。もしかしたら、金メダルがすでに見えていたのかもしれませんね。監督はその後リクルート、積水化学という企業において、有森裕子選手(五輪銀・銅メダリスト)や鈴木博美選手(世界選手権制覇者)、高橋尚子選手(五輪金メダリスト・世界記録樹立者)らを育て、女子マラソン界の歴史を築き上げてきたわけですが「女子マラソン」に指導を絞ったのには、何か理由があるのですか?

小出 僕の走りの経験から言って、長い距離をただひたすら走るという精神的なタフさが要求されることは、女性の方が強いんです。そして、国際社会を見渡した時に女性がどんどん進出してきていました。「これは陸上の世界も女性の時代がくるに違いない」って思ったんです。高校での指導である程度の基礎データは掴んでいたから、練習量も男並みにして問題ないこともわかっていましたしね。数十年かけて蓄積してきた経験に基づいたデータに予測を加えて、さらに仮説を検証していく、この繰り返しですよ。後は、選手ひとりひとりのコンディションを常に把握していること。何人いても、それぞれとはかけがえのないパートナーですから。だから夢の中でも応援しているらしくて、家内から「昨日も叫びながら跳ね起きてましたよ。」って、よく言われますね。(笑)

鳴海 監督は、本当にたくさんの素晴らしい選手を育ててこられたわけですが、伸びる選手に共通している点などはありますか?

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小出 何と言っても「素直なこと」でしょうね。僕は最初から「素直じゃないヤツは要らないよ。」って言うんです。いくら素質があっても、素直じゃないと最終的には伸びないと思いますね。僕もかなり素直だと思いますよ。(笑)
と言うのはね、中学校の時の先生が当時の僕の走りを見て「お前、いい走りだな。絶対オリンピックに行けるぞ。」って言ってくれたんですよ。その言葉がずっと心のどこかにあってね。自分が走ることでは行けなかったけど、育てた選手と一緒にオリンピックに行けた。しかも金メダルまでとれた。
言葉のチカラって凄いよね。だから僕は褒めるんです。長所を徹底的に褒めます。そうすることで素直であればあるほど、(おだてられて)木に登って、また速くなるんですよ。(笑)

鳴海 言葉のチカラは本当に大きいと思います。昔から「言霊(ことだま)」と言って、言葉には大きな力が宿っていると言われてきましたからね。監督ご自身が体験された「言葉のチカラ」を、選手を育てる立場においても大きく役立てていらっしゃることが、良くわかりました。
最後に、この会報誌をご覧頂いている皆さんに健康のコツをアドバイスしていただけますか?

小出 昔から「病は気から」って言いますよね。気力と体力は切っても切り離せないものですよ。だから、気を鍛えることで身体を丈夫にすることが可能なんだと思います。でも「気を鍛える」って、なかなか難しいよね。だから僕は逆に「身体を鍛えると、気も高まる」と考えているんです。そのためには筋力をつけること。無理をしない程度のウォーキングやストレッチでいいんです。それを毎日やる。少しでも時間があったら、こまめにやるといいんです。皆まとまった時間を作ってやろうと思うから続かないんだよな。(笑)
筋力がつくと、自然に元気になってきますよ。僕はあと2年で70歳だけどね、お陰様でこんなに元気。「病は気から。気作りは身体作りから。」ですよ。
あ、それと僕にとっては、毎日の晩酌も血液の循環を良くしてくれる何よりの薬かな。(笑)

鳴海 「酒は百薬の長」とも言いますからね。(笑)監督とお話をしていると、楽しくて時間の経つのを忘れてしまいます。
今日は元気になるお話をどうもありがとうございました。

(季刊ぶんぶん通信Vol.26 2007年夏号)


小出 義雄 プロフィール

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1939年4月 千葉県生れ。
順天堂大学時代、箱根駅伝に3回出場。卒業後は高校教師として、23年間陸上部の指導を続け、その間、市立船橋高校監督時代に高校駅伝優勝。
1988年 リクルートランニングクラブ監督就任。全日本実業団女子駅伝2連覇。
1997~2002年 積水化学女子陸上部監督就任。
現在、佐倉アスリートクラブ(株)を経営し、選手の育成にあたっている。
シドニー五輪女子マラソンで金メダルを獲得し、国民栄誉賞に輝いた高橋尚子選手や、有森裕子、鈴木博美など世界のトップランナーを育てた名監督としても有名。

著書に「君ならできる」「へこたれるもんかい」「本当の生きる力をつける本」「知識ゼロからのジョギング&マラソン入門」「Qちゃん金メダルをありがとう」(幻冬舎)などがある。