人生そのものを歌ったファド

先日、リスボンに行く機会があり、久しぶりに本場のFado(ファド)を堪能してきました。
「哀愁」と表現されることが多いファドですが、最近は若手の歌手も続々と誕生し、幅広い世代に支持されています。

ファドは、19世紀にポルトガルで生まれたと言われています。大衆民謡で自らの運命や宿命を歌っています。
多くの場合、ポルトガルギター(guitarra portuguesaギターラ・ポルトゲーザ)とクラシック・ギター(violaヴィオラ)、ファド歌手(fadistaファディスタ)で構成されます。

女性ファディスタの多くが黒いドレスやショールを身にまといます。

音色が独特で美しいポルトガルギター。

ポルトガルギターは12弦あり、ボディーが洋ナシのようにコロンとしています。なんとなく女性のような柔ら かいラインが綺麗で、音色もどことなく情緒があります。日本ではなかなかお目にかかれないですが、ポルト ガルのファドには必要な楽器です。

私はポルトガルに行くときは、ほとんど北部の町で過ごします。実は、ファドは北部ではほとんど聞かれておらず、多くの友人はファド歌手については知りません。ポルトにもファドを演奏しているレストランもありますが、旅行中にファドを楽しみたい場合は、リスボンで聴く事をお勧めします。コインブラにもファドがありますが、リスボンのスタイルとは少し異なります。

ファドの演奏は基本的に夜になります。
カサ・デ・ファド(Casa de Fado)と呼ばれるレストランやバーなどで聴くことができます。有名歌手が演奏するレストランから、お店の従業員や一般の人が楽しく歌い合うバーまで、様々です。

先日は、カーザ・デ・リニャーレス(Casa de Linhares)というレストランへ行って来ました。レストランのオープンは20:00から。海外からの観光客も多く人気店なので予約をすることをお勧めします。

店内の雰囲気

料理や飲み物を注文すると、パンと4種のパテが運ばれてきてしばらく会話を楽しみます。

パン入れが可愛くて思わずパチリ。

ポルトガル料理を楽しみながら待ちました。

だいたい30分後くらいにメイン料理がサーブされ、9時頃に最初のファドが始まりました。
こちらのレストランでは、数人のファディスタが3曲ずつ歌う形になっています。最初のファディスタの演奏が終わると、次の演奏まで約30分。

この日は、3番目にオーラ溢れるファビア・レボルダォン(Fábia Rebordão)、4番目に大御所のジョルジェ・フェルナンド(Jorge Fernando)が登場しました。

ファビア・レボルダォン(Fábia Rebordão)

ジョルジェ・フェルナンド(Jorge Fernando)

ジョルジェ・フェルナンドはヴィオラで1番目から演奏していましたが、最後はヴィオラを弾きながら素敵な歌 声を披露してくれました。ロマンティックな声にすっかり酔いしれ、数日たった今も彼の歌声が私の頭の中で 流れています。新世代トップファド歌手のマリーザの人気曲で「シュヴァ(Chuva)」という曲があります。実 はこの曲を作曲したのがジョルジェ・フェルナンドで、彼自身もこの曲を歌っています。

ファドは、日常の風景や出来事、喜びや悲しみをサウダーデ(Saudade)というポルトガル独特の感情にのせて歌っています。人生そのもの、等身大で表現していることが多いのです。このシュヴァはまさにファドらしいと私は思います。


下記、歌詞の一部をご紹介します。

Há dias que marcam a alma    魂をとめた数日前
e a vida da gente        そして人々の人生も
e aquele em que tu me deixaste  あなたが私を残した
não posso esquecer       私はそれを忘れられない

A chuva molhava-me o rosto    雨は私の顔を濡らした
Gelado e cansado        そして凍らせて疲れさせた
As ruas que a cidade tinha     街中の道を
Já eu percorrera         私が既に通った道を


*レストラン情報*
Casa de Linhares 住所:Beco dos Armazéns do Linho 2, 1100-037 Lisboa
営業時間:20:00~深夜2:00

ファドは2011年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。若手アーティストたちを応援する流れもあり、良い形で次の世代へと受け継がれていかれてほしいと思います。

ファドを感じることができる小道がここから始まります。

リスボンと言えばファド。ポルトガルギターの音色を耳にすると、気持ちがすーっとリスボンに連れていかれる様な気がします。できれば本場のファドを堪能してもらいたいのですが、実は日本でも最近は楽しむことができる機会が増えています。日本人ファディスタ(ファド歌手)の方々のおかげですね。ファドについて日本語で読めるウェブサイトも多いのでライブ情報やファドが聴ける場所なども検索しやすくなりました。

機会があれば皆さんも是非ファドを聴きに行ってみて下さい。

では、また次回!