環境の変化に戸惑ったり、逆に、代わり映えしない毎日で退屈を覚えたり。気持ちが滅入ってしまっている時にこそ、前向きになれる言葉が必要です。ムーミンの物語の中には、思わずはっとさせられる名言の数々が散りばめられています。未来を明るく照らしてくれる言葉から、背負い込みすぎた肩の荷をふわりと軽くしてくれる言葉、時には辛辣で胸にグサリと刺さる厳しい言葉、落ち込んでいる時に隣に寄り添ってくれる優しい言葉……。その時々の心を揺るがす、ムーミン谷の名言をご紹介します。

前向きになりたいとき

“きっと嵐って、朝日がそのあとにのぼってくるためだけにあるんじゃないかなあ”

小説「ムーミンパパの思い出」より ムーミンパパ

ムーミンパパが子どもの頃に船で冒険をしたとき、初めての大嵐に遭遇し、恐怖に震えながらもなんとか耐え忍んだ後のセリフ。
未知なる恐怖に遭遇した時、人は永遠に終わらないのではないかという不安にかられ、未来が暗く思えてくるものです。しかし、どんな嵐もいつかは去って、朝日が昇り、大荒れだった波も静かに凪いでいくように、困難もいつかは乗り越えることができると気づかせてくれる言葉です。
ムーミンパパは嵐が去った後、「さあ、これでお前のことはみんなわかったぞ。この次の嵐の時には目をつぶって小さくなったりなんかしないぞ」と心の中で意気揚々と宣言します。初めて遭遇する恐怖も、一度経験してしまえば怖くなくなることもあるので、まずは思い切って一歩を踏み出すのも良いかもしれませんね。

“さあ、明日もまた長い、いい日でしょうよ。 しかも、はじめからおわりまでお前のものなのよ。 とても楽しいことじゃない!”

小説「ムーミンパパ海へいく」より ムーミンママ

触れたもの全てが凍ってしまう魔物モランに追いかけまわされて不安にかられ眠れなくなったムーミンを元気づけようとしてかけてあげた言葉です。
心配事があるとどうしてもぐっすり眠れなかったり、明日を迎えるのが憂鬱になったりすることがあります。しかし、どんなに不安で、どんなに忙しくても、自分の人生は自分だけのもの。人生という物語の主人公は自分なのだ、と明日への希望を持てるようになる言葉です。目が覚めてから、また眠るまでの一日が自分だけの物なら、好きなように過ごさなきゃ損ですよね。

“なんだってできるわ。だけど、なにもやらないでいましょ。ああ、なんだってできるって、なんて素敵なことなの!”

小説「ムーミン谷の十一月」より ミムラ

大きな雷が落ちる様子を見ながら、自分が電気を帯びてもりもり元気が湧いてきたと感じたミムラのセリフです。
やりたいことがたくさんある中で、あえて何もしないということを選択する自由さをユニークに表現しています。 周りの人間関係や環境にとらわれすぎてしまって、やりたいことができないこともあるかもしれません。周りのせいにして現状を嘆いてばかりいないで、やりたいことをやっている自分の未来に希望を抱くだけでも、底抜けに明るいミムラのようになれるかもと、前を向かせてくれる言葉です。

気持ちを軽くしたいとき

“大切なのは自分でしたいことを、自分が知ってるってことだよ”

小説「ムーミン谷の夏まつり」より スナフキン

釣りをしていたスナフキンに偶然会ったミィが、食べ物を貰ったり、スナフキンのポケットに入り込んで眠ってしまったりと、自由に振舞った際に言ったセリフです。
いわば「勝手にやってきて勝手に食べ物を食べて、勝手に眠ってしまった」迷惑な客といっても過言ではないミィに対して、文句を言うでもなく、肯定的に自分のポケットへと招き入れるスナフキンの懐の広さを感じます。周りを気にせずに、自分の気持ちに正直に生きることは、出来そうでいて案外難しいこと。無意識に周りとの調和を考えすぎてしまって、ストレスを抱えることは日常茶飯事だったりしますよね。そんな時にこの言葉を思い出して、少しばかり自分のやりたいことを優先した行動をとってみるのも現状打破に繋がるかもしれません。

“友だちが、いちばん好きなことをしながら生きていけるようになるって、すてきなことじゃない?”

小説「ムーミン谷の夏まつり」より ムーミンママ

ムーミン一家のお手伝いさんとして行動を共にしていたミーサが演劇をきっかけに生きる喜びを知り、ムーミンたちと離れることを決心し、そのことを心配したムーミンに対してムーミンママがやさしく諭したときの言葉です。
友人が新しいことに挑戦しようとしている姿を見たとき、おいてけぼりにされてしまうのではという不安から、嫉妬や妬み、心配に似た感情を抱くこともあるかもしれません。しかし、本当に大切で信頼できる友人が前に進もうとしているのであれば、明るく背中を押してあげることで、自分の心の成長にもつながるはずです。

“いつでも日曜日だったら、すばらしいじゃないか。そういう気持ちこそ、われわれが見失っていたものなんだ”

小説「ムーミンパパ海へいく」より ムーミンパパ

灯台へと移住し、慣れ親しんだムーミン屋敷から離れて毎日が非日常になってしまったことを不安に思うムーミンママを慰めるために言ったセリフです。
毎日同じことの繰り返しで刺激の足りない日々を過ごしていませんか。「毎日が日曜日だったなら」と想像を膨らませてみると、旅に出たり、大切な人に会いに行ったり、日がな一日物思いにふけってみたり……、やりたいことを全部やれてしまいます。そんなワクワクドキドキの刺激に満ちた日曜日を過ごすように、日常に甘んじることなく、常に新しい何かに挑戦してみる心を失わないようにしたいと思わせてくれる言葉です。

やる気を出したいとき

“それがあんたの悪いとこよ。戦うってことを覚えないうちは、あんたには自分の顔はもてません。”

小説「ムーミン谷の仲間たち」より ミィ

いじわるなおばさんから皮肉を言われ続けたせいで姿が見えなくなってしまったニンニに対して、ミィが挑発するように放った言葉。気休めにしかならないその場しのぎの優しさの言葉は意味がないと思っているミィらしさが溢れるセリフです。
思うことがあっても、誰かの意見に流されて意見を飲み込んでしまうことってありますよね。ミィに言わせれば、それは顔が無いのと一緒。時にはしっかり主張して、意見を戦わせることで良い方向に進むこともあるはず。そうすることで、自分の存在意義を見いだして自分に自信が持てるようになるかもしれません。

“さあ、さっと思い立ったときに決心しなくては。決心がにぶらないうちに、すばやく実行しなくては”

小説「ムーミン谷の十一月」より フィリフヨンカ

神経質で心配性なフィリフヨンカが、掃除中に屋根から落ちそうになり不安で心細い気持ちでいっぱいになった時、ムーミンママに会いに行こうと決めたときの言葉。
何かをはじめる時、何かと理由をつけては重い腰が上がらないことは誰しもよくあるはず。出来ない言い訳が自分の中で湧いてくる前に、素早く動いてみることで案外事はすんなり進んでいくこともあるはずです。フィリフヨンカは臆病で慎重派ではありますが、自分の中に生まれた恐怖をなくすためにすぐに行動に移すことを決めました。うじうじ悩んでいるよりも、まずは試しにやってみるということは生きていくうえでとても大切なことのひとつです。

“どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ”

小説「ムーミン谷の冬」より トゥーティッキ

初めて経験する冬に不安になるムーミンですが、その後、冬の住民たちとの交流を重ねることで冬への不安と恐怖を乗り越えます。その時にトゥーティッキがかけてあげた言葉です。
未知なる経験は誰もが不安にかられ、恐怖を感じます。しかし、人に頼ってばかりいると、自分で困難を切り抜けることができなくなってしまうかもしれません。どんなに不安でも、試行錯誤を繰り返し、失敗したり傷つきながらも道を切り開いていけば、いつしかそれが強さに繋がっていくはずです。自分で解決する力を身に着けて欲しい相手が居る時にも、頭に置いておきたい言葉です。