誠実と情熱を持って、積極的に事業に取り組め

　「利は元にあり」の戦略で奥へ奥へ
新規事業を成功させ、本業を支えている中堅企業は少なくない。長野市に本拠地を置き、
創業３５年の工業材料メーカーのアスク工業(株)も、六年前から健康食品のノニ商品の
通販事業を手がけ、事業の柱として育てている。 同社は、技術者の高橋英司社長が率いる
工業資材の技術開発を主とした会社で、独自の技術を持っている。中でも、スキーやスノー
ボードに使用されるアスナーシートと呼ばれるゴムシートの製造販売、PVAスポンジなどと
呼ばれる各種パッキンの販売・加工を手がけている。「困ったらアスクに頼め」といわれる
くらい、技術系のメーカーから信頼を寄せられている。 将来を考えて新規事業の必要性に
迫られ、高橋社長は「長野から全国に売れる仕組みを作れ」という業務命令を上林紀夫通販
部長に伝えた。といっても、ほとんど予算がなく、新規事業を生み出す試行錯誤の動きが
始まった。 上林部長は「予算がなかったからこそ、知恵を出すしかありませんでした。当時、
ノニがネットワークビジネスで注目を集めていただけに、『ネットビジネスのような高価でなく、
いいモノを安く通販で販売する』という差別化戦略が生まれました。決まる前は、いろいろと
調査、実験に取り組みました。二年間で三十数回、海外の現地調査を繰り返しました。
高橋社長に『産地に行け。“利は元にあり”、奥に行ってこそチャンスがある』と口癖のように
いわれ、お金をかけずにやってきました」という。 「ノニ」は南太平洋や熱帯、亜熱帯の
地域に自生している果実で、「奇跡のフルーツ」と呼ばれている。「臭い」「まずい」とも
いわれるノニだが、その独特の風味に健康効果の秘密が隠されているという。 同社は
ノニジュース「ノニぴゅあ醗酵原液」（９００ミリリットル、税込３,９９０円）をはじめ、「ノニ茶」
「ノニ・ルテイン」「ノニ石鹸」を商品開発、販売している。最も新しい商品は、ノニと梅酒を
合わせた「ノニ酒」（７２０ミリリットル、税込２,５００円）である。ノニ市場は国内で３００億円と
いわれている中で、同社のノニジュースは２０万本を突破し、着実に愛飲者を増やし続け、
業績も伸びている。 新規事業に着手して苦節十年、徐々に結果が出始めて三年目である。
経営者や事業の直接の担当者が目標に向かっていく情熱の中に成功の秘密が隠されて
いるといっていい。