海。それは昔も今も真夏の思い出を印象づける場所ですね。じりじりと熱い砂浜に身を横たえれば、言葉にはならない開放感を感じるもの。若者たちの恋が生まれ、そしてあっという間に消えるその刹那は、数えることも形をとどめることもできない波や砂に例えてもいいかもしれません。
さてその砂は色名にもなっていて、砂色とはまさに砂のような色のこと。象牙色(アイボリー)と比較すると、もう少しくすんだ灰色がかった黄色です。砂色は大人しい色合いながら、身につけるとなかなか素敵な風情を醸します。水が染みれば濃く、乾くと白っぽく見える砂のその素直なイメージがなせる技でしょうか。
今から50年前、アメリカの歌手パット・ブーンがヒットを飛ばし、以来名曲として歌い継がれているのは『砂に書いたラブレター』。「砂に文字を書いても風がすぐに消してしまう。だけど愛するこの思いを書かずにはいられない…」といった内容はバリトンの甘い歌声にぴったりでした。そしてイタリアのミーナの代表曲『砂に消えた涙』が世に流れたのは約40年前。日本でも多くの歌手がこの歌をカバーしています。ちなみに日本の歌詞はこんなふう。「青い月の光を浴びながら
私は砂のなかに 愛のかたみをみんなうずめて 泣いたの一人きりで」。サラサラとした砂が、暑い季節や青春の一コマまでも思い出させてくれるようですね。