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2008/7


 子どもたちのように長い夏休みはなくても、思いは遠く海や山へ……。さぁバカンスを楽しむ季節がやってきました。サミットの行われる北海道の洞爺湖も、湖面の輝きをさらに増していることでしょう。
 さて、その美しい湖や海の色を表す言葉の一つにエメラルドグリーンがあります。これはご想像の通り、宝石のエメラルドの明るく冴えた緑色を差します。和名で緑玉(りょくぎょく)、翠玉(すいぎょく)とも呼ばれるこの石の澄み切ったグリーンは、見つめるほどにその魅力に心奪われてしまうもの。絶世の美女といわれるクレオパトラが自分だけのエメラルド鉱山を持っていたという話はあまりも有名で、彼女がいかにエメラルドを愛し、独り占めしたかったかがうかがいしれます。
 そのような宝石の名を冠するエメラルドグリーンという色名を聞いたとき、憧れにも似た気持ちや、清らかで明るいイメージを抱いたりするのは素直なことなのかもしれません。エメラルド・シティと呼ばれる街といえば、アメリカのシアトル。自然の豊かさはもちろん、この地でイキイキと暮らす人々の様子まで伝わってきそうな愛称ですね。言わずと知れたイチロー選手が活躍するプロ野球チーム、シアトル・マリナーズの本拠地でもあります。
 ちなみ花言葉があるように石言葉というものもあるそうで、エメラルドは「幸運・新たなはじまり」。夏のはじまり、あなたの心が吸い込まれるエメラルドグリーンを探しに出かけてみませんか。


  


浅野屋呉服店では色についてより正確にイメージをお伝えし、また、お客様の思いにより近い色の感覚を共有させていただくために、小学館刊「色の手帖」第1版第22刷を拠り所としています。
今回のエメラルドグリーンの色味としては、同書のP131をご参照ください。


(エッセイ・羽渕千恵/イラストレーション・谷口土史子)



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