←前月へ 次月へ→ 

2008/5


 ゴールデンウィークを終えるころ、街角の花屋さんを彩るのは赤やピンク、白のカーネーション……。その風景に出会うと誰もが母の日が近いことを知り、自分の母親を思うものですね。一般的には“母の日は赤いカーネーションを贈る”という風に頭のなかにインプットされているようです。ちなみに色名の「赤」は緋(ひ)や紅(くれない)、朱色などの総称で、鮮やかな赤を指します。明(アカ、アケ)を語源とするといわれ、光の明暗を示す言葉に由来するとか。まさに赤は、家族を明るく照らすお母さんにふさわしい色です。
 さて母の日のはじまりといえばアメリカで、その歴史は意外と深くありません。アンナ・ジャービスという母親思いの女性が、あるときこんなアイディアを思いつきました。母の日を定めて、毎年アメリカ中で祝ったらどうか、と。
 この考えに賛同した人々の応援、そして彼女自身の努力の甲斐あってアンナの故郷であるウェストバージニア州グラフトンで初めての母の日の礼拝が行われたのが1908年5月10日。今から100年前のことでした。礼拝の後、出席した人々にアンナは自分の母親が好きだったカーネーションを配り、それがやがて母の日にカーネーションを贈る習慣につながっていきました。
 その後、世論に後押しされ、ウッドロー・ウィルソン大統領によって“5月の第2日曜日は母の日”と正式に決定されたのは1914年。アンナの素敵なアイディアは、今では世界中で花開き、息づいています。


  


浅野屋呉服店では色についてより正確にイメージをお伝えし、また、お客様の思いにより近い色の感覚を共有させていただくために、小学館刊「色の手帖」第1版第22刷を拠り所としています。
今回の赤色の色味としては、同書のP24をご参照ください。


(エッセイ・羽渕千恵/イラストレーション・谷口土史子)



←前月へ エッセイTOPへ 次月へ→