夜明け前から東の空を眺め、日の出のときを待つ静かな時間。それは日々繰り返し味わえることなのに、一年の初めの日となると、さらに厳かな気持ちを抱くものですね。初日の出を尊び、山の頂きや水平線の見渡せる場所で多くの人たちが同じ太陽を見つめるのは、素敵なことのように感じます。
さて、日の出を迎えるときの空の色に、曙色(あけぼのいろ)、あるいは、東雲色(しののめいろ)と呼ばれる色があります。それは、まさに夜が明けはじめた東の空のような色で、明るくて黄みがかった赤。ろうそくの灯りをもっと暖かい感じにした色、柔らかなオレンジ色と例えてもいいかもしれません。
ところで東雲色と書いて、どうして「しののめ」と読むのでしょうか。語源は諸説あるのですが「篠の目」という説が有力です。
古代の住居では、荒く編んだ篠竹の編み目を明かりとり窓にしていました。その篠竹の編み目から光が差し込むころ、という意味から、篠の目が夜明けのころを指すようになり、それに東雲という字を当てたとされています。確かに、篠の目色というよりも、東雲色と表現されていた方が、光景が目に浮かび、雅やかで豊かなイメージがかきたてられますね。いかにも日本人らしい感性の表れといえそうです。
美しい響きに、美しい風景や風情を重ねて味わう日本の言葉……。それらを一つでも知り、使ってみたくなる色名の一つです。