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2007/12


 クリスマスの装飾が街をにぎやかに彩る季節。この時期にパッと思い浮かぶ色といえばグリーンと赤、いわゆるクリスマスカラーですね。それぞれの色には意味があるそうで、緑はキリストの永遠の命を、赤はキリストの流した血の色を表しているとか。
 さて今回選んだ色はスカーレット。和名の緋色(ひいろ)などに近いといわれる鮮やかな黄みの赤です。スカーレットと聞くと、映画『風と共に去りぬ』の主人公の名前、スカーレット・オハラを真っ先に思い出す人も多いことでしょう。1939年に公開されたこの映画は、南北戦争直前のアメリカ南部の地、タラが舞台。大農場主の娘スカーレットが逆境にも負けず、故郷タラへの愛に目覚める姿を描いた不朽の名作です。迫力あるシーンも見どころで、燃え盛るアトランタの様子や、タラの地で赤い土をにぎりしめるスカーレットの名演など、映画は「赤」によって効果的に演出されていることに気づきます。
 その一方で美貌のスカーレットをより印象深くしている色といえばグリーン。濃い緑色のカーテン生地でつくったドレスは、スカーレットを演じた女優、ビビアン・リーの瞳の色を強調する役割を持つのでしょうが、緑は赤の補色、つまり赤を補う色彩と考えると、映画全体を通して「色」の効果を狙っているのかも……。
 グリーンの美しさに支えられつつ、情熱的で激しい生き方を象徴する赤。スカーレット・オハラはまさに、その名を持つにふさわしい女性像といえそうですね。

  


浅野屋呉服店では色についてより正確にイメージをお伝えし、また、お客様の思いにより近い色の感覚を共有させていただくために、小学館刊「色の手帖」第1版第22刷を拠り所としています。
今回のスカーレットの色味としては、同書のP34をご参照ください。


(エッセイ・羽渕千恵/イラストレーション・谷口土史子)



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