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ビルケンシュトックが世界中の人々から愛される理由

2022.08.17

ビルケンシュトックが
世界中の人々から
愛される理由

<店長>
最近集めていたTシャツを断捨離。30枚ほどなくなってスッキリしました。

<佐藤さん>
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。

古代ギリシャのサンダルがモチーフの「ギゼ」

佐藤さんには以前、ビルケンシュトックというブランドの長い歴史について書いていただきました。

長い長〜い歴史でしたね。なんせ、創業は1774年ですから。

250年近くも前ですもんね。靴のブランドには長い歴史を持つ老舗が多いですが、ビルケンシュトックはその中でもひときわ長いですよね。

もちろん長い年月の間に、ブランドとしての立ち位置も作っている靴も、さまざまに変遷してきたわけですが、“ビルケンシュトック”の名のもとにこれだけ存続してきたということだけでも驚きに値すると思います。

今回はそんなビルケンシュトックからいくつかのモデルに絞ってお話ししていきたいと思っています。

ビルケンシュトックにはロングセラーの名作が多いですから、選ぶのも大変でしょう。

そうなんです! 本当は片っ端から紹介したいところなんですが、頑張って選びました(笑)。まずはこちら、「ギゼ」というモデルです。

【ギゼ】
【ギゼ EVA】

おお! いきなり来ましたね。ビルケンシュトックのトングサンダルの代表格モデル。

ストラップタイプもいいのですが、ビルケンシュトックといえばこれでしょ!という方も多いモデルです。でも、こういう形のサンダルはなぜ“トングサンダル”と呼ばれるんですかね?

トングって、パン屋さんでパンを挟んだり、バーベキューのときに肉を挟んだりするあのトングのことなんですよ。足の親指と人差し指で挟む鼻緒を持った、ビーチサンダルと同様の構造のサンダルは、足の甲にくるV字型の帯がトングに似ているから、そう呼ばれているんです。

ああ、なるほど。そのトングだったんですね。「ギゼ」はトングサンダルといっても、帯の形はV字ではなくT字形ですが。

このユニークな帯の形状が「ギゼ」の良さですよね。ビルケンシュトックといえば、この帯の形を連想する人も多いのではないかと思います。鼻緒を持つサンダルというのは大昔から使われていて、この「ギゼ」も古代ギリシャのサンダルをイメージしてデザインされたんだそうですよ。

そうなんですか。トングサンダルって、そんなに昔から履かれていたんですね。

サンダル自体の起源は紀元前3500年ごろ、古代オリエント文明で発明されたそうです。動物の皮を使ったソールの裏から二本の革紐を通し、親指と人差し指の間を通して足首で結んで固定していたそうですよ。

「サンダル」の語源も確か、ギリシャ語でしたよね?

ギリシャ語で“板”を表す「サンダリオン」から派生した言葉のようですね。

うちのお店で扱っているビルケンシュトックの商品の中でも、「ギゼ」はとても人気の高いモデルです。男女問わず、よく買っていただいていますよ。

シンプルで定番的なデザインなので、どんなスタイルにも合わせやすいのが人気の秘密でしょうね。

「ギゼ」は普通のトングサンダルと違い、ストラップの付け根にバックルがついているので、フィット感の調整をできるところが優れものなんですよ。

ギゼ
photo:Meindert van D

なるほど。一般的なトングサンダルにはない機構ですよね。足の甲の高さや形状は人それぞれだから、これは確かにいいのかも。

履き心地の良さを追求するビルケンシュトックならではのこだわりポイントです。このバックルがあるおかげで、サンダルとは思えないフィット感が得られるんです。

こうして改めて見ると、デザインもやっぱりいいですよね。開放的でリゾート感があるけど、シンプルで洗練されてもいるので、いろいろな服にコーディネートしやすいのでしょうね。

ビルケンシュトックの人気を決定づけた名作「アリゾナ」

続いてはこちらのモデル、「アリゾナ」です。

出た! 名作中の名作!

1973年発売開始のロングセラーモデルです。このモデルの説明をするには、ビルケンシュトックのサンダルの歴史からお話ししていただいた方が良さそうです。

そうですね。ビルケンシュトックが天然のラテックスとコルクを混合した柔軟な素材を開発したのが1963年のこと。その素材で形成した新しいフットベッド(ソール)を使い、足に優しい医療用サンダルとして、「マドリッド」というファーストモデルをリリースします。

【マドリッド EVA】

「マドリッド」は、一本ストラップのもっともシンプルなサンダルですね。うちでも扱っております。

さすが。この「マドリッド」を引っさげてビルケンシュトックはアメリカに進出。すると、当時の若者のメインカルチャーであったヒッピーたちに大ウケし、彼らのユニフォーム的存在となっていきます。1969年におこなわれたウッドストック・フェスティバルの会場でも、ビルケンシュトックの「マドリッド」や、ついで発売されたサンダル「チューリッヒ」を履く若者の姿が数多く見られたそうですよ。

「チューリッヒ」は二本のベルトでフィット感を調整できる、幅広ストラップのモデルですね。もちろん、当店でも取り扱っております(笑)。

【チューリッヒ BS】

さすがです(笑)。そして、その二つのモデルがヒッピーたちの間で大ヒットしたことを受け、ビルケンシュトックが1973年に投入した新モデルが、「アリゾナ」だったわけです。都市の名前をつけたシリーズ第三弾が、ヨーロッパを離れてアメリカの地名になったことからも、当時のビルケンシュトックがアメリカをいかに重要視していたかがうかがえますね。もちろんZ-CRAFTでは……?

はい(笑)、絶賛お取り扱い中です。「アリゾナ」は「チューリッヒ」をベースにしつつ、隙間のあるダブルストラップを採用することで、より涼しげな印象となったモデルですね。

アリゾナ
photo:Suzanne Schroeter

ロングセラーモデル「アリゾナ」のアッパーには、“ビルコフロー”という合成皮革が使われています。 

さっき紹介した「ギゼ」のアッパーも“ビルコフロー”でしたよね?

そうですそうです。ビルコフローというのは、ビルケンシュトック社が開発したオリジナルの合成皮革です。表面がPVCプラスチック、裏面がフリースという合わせ素材であることが特徴です。

天然比較と比べると、軽くて手入れがしやすい素材ですね。

ビルケンシュトックのラインナップには、もちろん天然皮革の製品もありますが、多くのモデルでこの“ビルコフロー”素材が使われています。天然皮革と比べて値段が安くできるということもありますが、非常に優れた素材なので多用されているんですね。

一見、天然皮革のように見えますが、内側がフリースだから肌触りがいいですね。

その通りです。それに、外側のPVCも非常によくできていて、さまざまな表情を出すことができるんです。スムースレザー風の加工が代表的ですが、スエード風だったりヌバック風だったり。エナメル風のものもあります。すべてPVCの加工によって風合いを表現しているんですよ。

【アリゾナ 】
【アリゾナ】
【アリゾナソフトフットベッド】
【アリゾナ】

ビルケンシュトック唯一の弱点をカバーしたEVAシリーズ

最近のビルケンシュトックといえば、EVA素材のものが評判いいようですね。

まさにそれが言いたかった(笑)! スムーズな進行、ありがとうございます(笑)。今回、当店が激しくおすすめしたいもう一つの商品が、「アリゾナ EVA」。定番「アリゾナ」の形のまま、アッパーからソールまで、素材をすべてEVAに置き換えたものなんです。

ビルケンシュトックご自慢のソールまで含めて素材を置き換えた、というのがポイントでしたよね?

そうなんですよ、通常のビルケンシュトックのサンダルの、「フットベッド」と呼ばれるソール部は、1960年代に自社開発した構造を頑持し、細かくいうと、ラテックス(ゴムの木からつくられる樹脂)混合の天然コルク+通気性に優れた2枚の麻+柔らかなスエード、PVAのアウトソールという5層構造になっています。解剖学に基づいて作られたこのフットベッドは独特のデザインと履き心地の良さで、長年親しまれてきました。

足裏に当たる部分の凹凸も心地よいですし、自然でほどよい硬さが足裏全体を支えてくれる感じで、本当に抜群の履き心地ですもんね。

この優れたフットベッドこそが、ビルケンシュトックというブランドを長年支えてきたといっても過言ではないと思います。ですが、この複雑な構造のソールを使ったサンダルは、水辺での使用には向いていません。

もともと負傷者用の医療目的に作られたソールだから仕方がありませんが、コルクも麻もスエードも水を吸っちゃいますもんね。リゾート用サンダルのように、水辺での使用は想定されていなかったんですね。

そうなんです。でも、需要の拡大によって、作り手が当初想定していなかった使われ方をされるようになったのを受け、ビルケンシュトックはロングセラーモデルのデザインや履き心地を保ちつつ素材を置き換えた、“EVAシリーズ”を開発します。水辺での使用を念頭に置いたラインナップの登場ですね。

【アリゾナ EVA】
【アリゾナ EVA】

EVAはスポーツサンダルなどのソールによく使われる素材ですよね。

軽くて滑りにくく、水に強いという特性を持っています。海や川で遊ぶ時にもビルケンシュトックを履けるなんて、ファンにとっては実に嬉しいことですよ。

EVAシリーズ
photo:photo:HS You

長時間履き続けたり、長い距離を歩いたりするのには、従来の天然コルクをメイン素材としたソールの方が向いているのでしょううが、ウォータースポーツやキャンプなどのときには、軽くて手軽で濡れても安心なEVAシリーズがおすすめですね。

その通りです。今日はありがとうございました。

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