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ポール・スミスというブランドの歴史と魅力について

2021.07.14

ポール・スミス
というブランドの
歴史と魅力について

<店長>
最近集めていたTシャツを断捨離。30枚ほどなくなってスッキリしました。

<佐藤さん>
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。

ポール・スミスの原点は1970年に開いたセレクトショップ

今回はポール・スミスについてお話ししたいと思っているんですけど、前に佐藤さん、就職して最初に買ったスーツはポール・スミスだったとおっしゃっていましたよね?

そうなんですよ。就活のときは量販店のオーソドックスなスーツを着ましたが、就職して最初のスーツはもっとおしゃれなものにしたくて、確か、池袋の百貨店の中にあったポール・スミスのショップで買いました。

ポール・スミスのスーツ
photo:MIKI Yoshihito

学校を卒業したばかりの新卒しては、かなり頑張ったんじゃないですか?

無理したと思います。卒業と就職祝いのお金が吹っ飛んだんじゃなかったかな? 僕はモッズやスキンズなどのブリティッシュカルチャーが大好きだったのですが、ピタピタのモッズスーツなんかはやっぱりやりすぎかなと思って。ブリティッシュの香りを漂わせつつ、ビジネスに対応できて、いいブランドだけどそこまで高すぎなくて。ポール・スミスはちょうどよかったんですよね。

でも結局、佐藤さんって。

ストリートファッション誌の編集者になったので、スーツはあんまり着なかったんです。だからこそ、新人の頃に張り切って買ったポール・スミスは思い出深いんですよ。

佐藤さんが就職した頃っていつですか?

1990年代前半です。まあ、えらい昔の話ですよ。その頃もポール・スミスは今と変わらず大人気ブランドでした。

でもブランドの歴史はもっと長いんですよね?

1970年にポール・スミス氏が地元のノッティンガムではじめたセレクトショップが、そのスタート地点とされています。

セレクトショップだったんですね?

マーガレット・ハウエルやケンゾーなどの商品を取り扱っていたそうですよ。同い年のマーガレットとポールは旧知の仲で、そのお店はマーガレット・ハウエルの商品を世界でもっとも早く取り扱ったのだそうです。

マーガレットとポールは遊び仲間だったんですよね?

ノッティンガムで1946年に生まれたポールは自転車競技のレーサーを目指していたんです。でも事故で重傷を負い、自転車レーサーの道は断念。自暴自棄になって未成年なのにパブに出入りするようになったそうです。

そうしているうちに、マーガレットに出会ったんですか?

そのようですね。マーガレットだけではなく、パブで顔見知りになったアートスクールの学生たちと遊ぶうち、ポールは芸術とファッションの世界に魅了されるようになったそうです。そして17歳の頃には、知り合いの伝手を頼りに、ファッションビジネスの仲介業をはじめ、セレクトショップの開業へとつながったそうです。

今も昔も変わらず、チャンスはどこに転がっているかわからないものですね。

事故で怪我をしなければ、ポール・スミスというブランドは存在しなかったかもしれないのですから、不思議なものですよね。

往年のブリティッシュカルチャーを反映したデザイン

佐藤さんは、ポール・スミスの最大の魅力はなんだと思いますか?

よく言われていることではありますが、「遊び心」だと思います。ポール・スミスはいまや巨大ブランドなので、そのアイテムはフォーマルなスーツからTシャツなどのカジュアルウェア、それに各種小物類まで幅広くラインナップされています。そのすべてにブリティッシュトラッドのエッセンスが感じられますが、ただまじめにクラシカルな服を作るのではなく、必ず“ひねり”が加えられています。その“ひねり”にファンは心をぐっとつかまれるのではないかと思います。

ポール・スミスの車
photo:patrick janicek

なるほど。今回、当ショップでご紹介しているウェアも、やはり一筋縄ではいかないですよね。

Tシャツもポロシャツもシンプルなように見えて、胸元のワンポイントやグラフィック、それにボディのカラーなど、ポール・スミスならではの“ひねり”が感じられてすごくいいですよね。

特に気になるアイテムがあるそうですが。

この「RAVEWAVE」というTシャツがすごく気になって、買おうかなと思っているんですけど。

それはそれは、ありがとうございます(笑)! どこがお気に入りポイントですか?

“1991”という文字の記載がありますが、その頃、イギリスのロンドンやマンチェスターでは、レイヴカルチャーが勃興してクラブシーンがすごく盛り上がっていたんです。サイケデリックなグラフィックは、その頃の雰囲気をすごくよく表していますね。

佐藤さんは、レイヴシーンを実際に体験した年代ですもんね。

そうですね、大学生だった頃なんで。僕はどちらかというと、クラブのダンスカルチャーであるレイヴよりも、ロック系のマッドチェスターに傾倒していたんですけど、レイヴとマッドチェスターを合わせた「セカンド・サマー・オブ・ラブ」と呼ばれたムーブメントにどハマりした世代ですから。

そういうリアルタイム体験派から見ても、このTシャツはいけてるんですね。

さすがはポール・スミス。わかってらっしゃる! という感じです(笑)。

ポール・スミス最初のオリジナル商品はシンプルなTシャツ

ポール・スミスの歴史をもう少しおさらいしたいんですけど。

そうでしたね。ポールの審美眼は昔から確かなものだったようで、ノッティンガムの彼のセレクトショップは、やがて大盛況となったそうです。

ポール・スミス氏
photo:Liton Ali

セレクト商品だけだったのですか? オリジナルもやっていたんですかね。

そう、お店の盛況を受けて、ポールはすかさずオリジナルの商品を企画して販売するようになったそうです。

どんな商品だったのでしょうか?

ポール・スミスのブランドとしての最初のオリジナル商品は、シンプルなロゴTシャツだったそうですよ。着心地が良く、無駄のないソリッドなデザインだったため、そのTシャツは大好評だったようです。

Tシャツだったんですね。ちょっと意外な気がします。

そうですよね。ちょっと意外かもしれませんが、資金が乏しいたたき上げブランドが最初に手がけるアイテムはTシャツであることが多いので、ポール・スミスもそうだったんだなあという感じですね。

今回ご紹介しているワンポイントTシャツも、シンプルでソリッドなデザインが売りです。こういう感じだったのかもしれませんね。

【REG FIT SS TSHIRT ZEBRA】

そうですね。Tシャツの好評を受けて、ポールは次第にネクタイやスーツなどにオリジナル商品の幅を広げ、ポール・スミスというブランドが徐々に成立していったそうです。そして1976年にはパリコレに進出し、“新たなブリティッシュブランド”として世界に名乗りを上げました。

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【SS TSHIRT RAVEWAVE SMALL】
【REG FIT SS TSHIRT ZEBRA BADGE】
【REG FIT SS POLO SHIRT】

コベントガーデンの廃墟にオープンしたショップ

1979年はポール・スミスにとって記念すべき年になったようです。念願だったロンドン市内のコベントガーデンにショップをオープンしたんです。

そのお店、有名ですよね。すごく話題になったのだとか。

ポールが目をつけた建物は、野菜市場の廃墟だったんです。

人気ブランドに成長しつつあるとはいえ、まだ資金力に乏しかったので、比較的安い値段で借りられるその場所を選んだと聞いたことがあります。廃墟をリノベーションするという発想がポール・スミスらしいというか、時代を先取りしたかっこよさがありますよね。

過去のオフィス
photo:Lucy Downey

そうですね。でも時代が1979年ですから、パンクやその後のポストパンクなどのカルチャーを意識していたのかもしれません。違法行為ですけど、“スクウォッティング(不法占拠)”といって、廃墟を勝手に占拠して使うというカルチャーがまかり通っていた時代ですから。もちろんポールのお店はスクウォッティングではありませんけど、そういうカルチャーを意識していたのかもしれませんね。

日本に進出するのはその後くらいですか?

今も変わらないのですが、ポール氏はとても日本びいきの人で、1980年代前半には日本に進出して人気を得ているんですよ。本国ではコベントガーデンにショップをオープンするくらいですから、すでに知られた存在でしたが、まだ世界的なブランドではなかったので、日本での展開はとても早いものだったそうです。

アメリカでの本格展開は、1980年代後半ですもんね。

アメリカでは1987年、五番街に路面店を構えたことから、“ヤッピー”と呼ばれるヤングエグゼクティブ層に人気が広がり、世界的な本格ブレイクにつながったそうですよ。

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貴族なのに気さくなポール・スミス氏

ポール・スミス氏は貴族なんですよね。

もともと貴族の家系だったわけではなくて、2000年にファッションビジネスの分野で国家に大きく寄与した実績が評価され、エリザベス女王からナイト爵位を叙勲されて貴族の仲間入りをしたんです。それ以降、ポール氏は“Sir”称号で呼ばれる人物になりました。“Sir”というのは一般的な敬称としても用いられますが、もともとはナイト(騎士)に由来する勲位で、叙勲された人に与えられる敬称なんですよね。

ポール・スミスが、真にイギリスを代表するブランドになった証ですね。

その通りです。ちょっと前後しますが、1997年には、トニー・ブレア首相(当時)の就任式のスーツを担当したことも話題になりました。洒落者だったことで知られる本人からもいたく気に入られ、氏が首相を退任する2007年までの10年間にわたり、公務用スーツは常にポール・スミスが担当するようになります。

自転車レーサーの道を挫折したところから始まって、すごい出世の道ですよね。

そうですね。偉大な人だと思います。でもそんなすごい人なのにポール氏は気さくな人柄で有名なんですよ。何を隠そう僕も、過去に一度だけ本人に挨拶をしたことがあります。

気さくなポール・スミス氏
photo:Lucy Downey

本当ですか!?

日本でおこなわれた展示会に普通にいらっしゃって、普通に紹介されてサラッと挨拶しました。本当に気さくでびっくりしましたよ。そのとき、このブランドのことがますます好きになりました。

服にはそうしたデザイナーのキャラクターが現れたりしますよね。このキャップとか、最高じゃないですか?

【CAP HAPPY】

これ、いいですよね! 気になっていたんです。「P」と「S」、そして上下逆さまにした「PAUL SMITH」の文字でスマイルマークを作っているんですよね。まさにポール・スミスの真骨頂というか、遊び心を感じるデザインで、最高です。

じゃあ今回は、さっきのTシャツとこのキャップ、2点のお買い上げですね。ありがとうございます!

そういうことになりますね(笑)。いい買い物ができました。

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