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うんちく01. 絹って日本で取れてるの?
さて、今現在日本では絹糸が生産されているのでしょうか? 昨年の日本国内での絹糸生産状況は約6千俵(1俵=60kg)ほどで、国内の絹糸需要の約1割にとどまっております。
その他の9割はどこから手当てしているのか? 絹糸の最大輸入国は中国なのです。中国から年間約4.5万俵輸入され、次いでブラジルから3万俵その他ベトナム・韓国・ウズベキスタンなどからの輸入です。 トータル的には輸入が8万俵で、このように国内の需要の90%が輸入に依存しています。 品質の面ではブラジル産が最高で、価格は高いのですがその分素晴らしい絹糸が輸入されています。
最近、絹製品の殆どが中国やその他の国から輸入されています。 その中でも頑張って国内生産を続けているメーカーもあり、現に絹糸を作る製糸工場もあります。 しかし、この製糸工場も原料の繭は殆どが中国やブラジルからの輸入で賄っているのです。 これは国内の養蚕家の構造的な減少によるもので、コストが合わない事から従事者は減る一方で、その内純粋な国内産絹糸はゼロに近い物となる事は時間の問題なのです。
うんちく02. 絹って一体何なの?
絹はカイコが吐き出した繊維である事はご承知の通り、しかし絹とは一体どんな繊維なのでしょうか?
絹はタンパク質から出来ていて、そのタンパク質の分子は力を加えて引っ張ると、引き延ばされて集束し繊維化するという極めて特異な性質を持っています。 このタンパク質をフィブロインと言い、そのフィブロインを覆う形で水溶性のセリシンと言うタンパク質から形成されています。 繭一つは1500mくらいの長くつながった長繊維でその一本一本の分子は4億本の束であります。 それを2本合わせてつくられたものが絹繊維なのです。 距離になおすと1500m×4億で、なんと計算できないくらいの数字になります。(計算できませ~ん)
とてつもない距離をカイコさんは口から吐き出すのです。 この様に絹は人間の皮膚と同じくタンパク質からなる繊維である事がわかりましたね!
うんちく03. 繭はどのようにして出来るの?
一言で「繭って何?」と聞かれると「う~ん?何や!」 と、言葉で理解していても、それが一体何なのか?わからない方も多いと思います。 実は、繭って何?のご質問をメルマガ読者の方から頂き、それは・・・・とご質問に対しまして、正確にお答えしましたが、うん!待てよ!と思い、意外とわからない方が多いのではと・・ 今回の基本に戻る作業をしております。
繭とは、蚕(カイコ)が、口から絹繊維本体(フィブロイン)を吐いて、その上側にセリシンと言う潤滑油を覆い、形作ら れた球状の部屋?です! 繭は通常外側の方から作られて行き(当たり前ですが・・・)段々と内側に形を作っていきます。
なぜ、この部屋を作るのか? それはカイコが成長してサナギになったら、身動きが取れないので、外敵から身を守る為ではないのでしょうか。
その他にはもっと大切な役割があります! それは、カイコ自体が体内で生成されたアミノ酸の過剰な物 を体外に排泄しなければ、その後の変態(その辺にいる変なオッちゃんじゃなくて、幼虫からサナギ、後に成虫になる事)が出来なくなるらしいのです。 そして、その繭から通常は繭重量の18%程度の糸しか使う事が出来ません。 単純にこの繭は1500mもの絹糸から出来ています。 それが生糸(絹糸)となるわけです。
ようは、蚕さんの排泄機能によって繭が出来上がるわけです。 簡単に言うと、繭は蛾(ガ)の幼虫が住む所なのです!って これを知って引かないでくださいね!(^_^;)
うんちく04. 絹糸はどのくらいの太さなの?
長さ450mの重さが0.05gあるものを1D(1デニール) と決め、同じ長さで0.1g(0.05g×2)あれば2Dとしました。 このため9000mで1gのものを1Dとなるわけです。 ところで蚕さんが作る生糸は3D前後で、200~300m作り進んだところで、3.5Dほどになります。 以降はだんだんと細くなり1.5Dまで細くなります。 そして1300~1500m程吐き出して終わりになるのです。
このような繊維を何本か合わせて作られたのが生糸となりますが、化学繊維の様に一定の繊度に作るのが困難であるのです。 通常生糸の種類は14D・21D・27D・31Dが一般の太さで織物の種類によって使い分けられます。 21Dと言っても繊度が多少不揃いなので20/22Dと表示します。つまり21中(21なか)となり、27Dの場合は26/28Dで27中となります。
このように元々はデニールとは生糸の為に作られた単位ですが、その後の合成繊維やすべての長繊維に用いられる様になりました!
うんちく05. 絹糸の成分って何?
まず「フィブロイン」は基本的に繊維質のタンパク質で、通常は2本のフィブロインの外に「セリシン」がそれを カバーしてくれています。(のり付けみたいな物です) フィブロインは非常に高純度のタンパク質で、このタンパク質はアミノ酸が結合した大きな分子です。 絹糸のフィブロインとセリシンは互いに異質のタンパク質で構成されていますが、これは他の繊維に無い大きな特徴です。 それは、アミノ酸組成で見ても、どんなアミノ酸であるか? によって違ってきます。 アミノ酸組成はこちら>>単純にフィブロインは水に溶けない性質なのです。
一方、セリシンは結晶性が無く、その為水に溶けやすい性質があります。 絹糸に占めるセリシンの割合は20~30%で、セリシンを取り除く際に温度が80℃~90℃で最も溶けやすく、 それ以上温度が上がると逆に溶けにくくなります。 これは、あまり温度が上がると、セリシンはフィブロインを保護しようと言う変化が起きるのです。 まさしく自然の脅威です。 アミノ酸成分としては、フィブロインとの最大の違いは 「セリン」と言う物質が人間の肌に含まれる量とほぼ同じくらい含まれてます。 この事からセリシンは自然界の中で最も人間の皮膚に近い成分である事がわかります。
うんちく06. 絹の成分はどうしてお肌に良いの?
人間は恒温動物であり、体温に1℃の高低があっても身体の生理機能に影響します。 体の熱的なバランスを調整するには、体を動かすとか冷暖房を利用する等の他に、熱調整力を持つ衣服を着用する事で補います。 体温調整する汗を絶えず排泄している不感蒸泄(汗以外の水分蒸発)を衣服が吸収しないと不快に感じます。
絹の場合、吸放湿性は綿の約1.5倍と優れているため、いつも快適な環境のお肌でいれるわけです。 すなわち、お肌にとって良い環境の元においてやる事が、お肌にとって良い事なのです。
うんちく07. 絹はなぜ夏涼しくて、冬暖かいの?
まず、絹繊維は三角形の構造になっていて、その三角形の繊維が何本も重なり合い一本の繊維を構成しています。その重なり合った繊維の隙間が大きなポイントになります。 それは、その絹繊維の構造自体が吸湿性に富んでいる事(綿の約1.5倍)であります。 これは身体の表面から出された汗などの水分を沢山絹が吸収して衣類の外側に放湿してくれ、肌表面の温度を一定に保ってくれるのです。 夏の暑い時に汗をかいても肌表面は絹の吸湿性によりサラットしています。
それと反対に冬は肌表面から体温が逃げようとすると繊維の隙間に熱を保持してくれるので暖かいと言うわけです。 その証拠に寒さ厳しい極致(南極や冬山など)に行く人はシルクの下着を着用しています。 薄い下着でも暖かさを保持してくれるので、分厚い衣料をつけなくてもいいのです。 南極では、最低気温がマイナス50℃で風速70mという厳しい寒さです。風速70mっていうのは、木材を削り取るような激しいものですが、この想像を絶する寒さの中から身体を守る為、映画「南極物語」に出演された俳優の高倉健さんもシルクの下着を着用し、その暖かさに感激したと語られています。 また、あの偉大な冒険家故植村直己さんも南極冒険の際はシルクニットの下着とマフラー・手袋とシルクずくめで寒さから身を守ったとの事です。
うんちく08. 絹はどうして黄色く変色するの?
絹は日光の紫外線によって黄変(おうへん)する事はわかっていますが、主な原因は絹を構成しているフィブロイン中に含まれているアミノ酸が、空気中の酸素や紫外線によって酸化・分解を受けてメラニンに変わるからなのです。
人間の皮膚と同じで、日焼けをすると肌が黒く変色する機能なのです。 これはお肌の内側にこれ以上紫外線などの有害物質を取り入れない様にする自然の防御機能なのです。素晴らしいですけど、黄色くならないで欲しいですね・・・
うんちく09. 絹糸にも種類があるんです!
通常の繭から取れる絹糸は大きく3種類あります。 まず、繭から最初の部分で取り出される絹糸を通常「生糸」(きいと)と言います。この「生糸」は読んで字のごとく、ナマイトとも言い、常に呼吸をしています。それが故に、(生きている糸)と表現します。
この生糸の用途としましては代表的にはネクタイ・羽二重・ちりめん等の高級品に使われています。現在の国内生糸相場が横浜と神戸で立ち会いされて、毎日相場が変動しています。 最近では国内で取れる生糸の量は激減しており、国内で消費される殆どの生糸はブラジル産や中国産が主です。 この生糸は前にもご説明したとおり、長繊維(フィラメント)であり一粒の繭から約1500mもの絹糸を取る事ができます。 絹の中で長繊維(フィラメント)なのは生糸(特殊な絹糸は除く)だけであり、その光沢性やドレープ性は他の繊維には真似出来ない物です。 それが証拠に、生糸を化学的に作り出す事は未だ不可能です。
次に生糸を繭から取り出した後に残る残糸(短繊維)や良質な生糸が作れない繭を紡績(つむいで作る)して作られた絹糸を「絹紡糸」(けんぼうし)と言います。 これは紡績と言う工程を経た後に作られた為、短繊維がお互いに重なり合い細長く糸状に整えられた絹糸です。 代表的な用途としましては、絹の5本指靴下やニット製品に使われています。生糸と比べると熱にも強い性質を持った絹糸です。
次に絹紡糸に使われた絹繊維の中から不要な絹糸を取り出したものや、繭くずを使い作られた絹糸を「紬糸」(ちゅうし)と言います。 この紬糸も絹紡糸と同じく紡績されて作られています。 代表的な用途はかなりクズが混じっていますので商品にした際の見た目が悪く一見しただけでわかります。中国製の製品に多く、5本指の靴下等に使われています。 この様に生糸以外は全て紡績されて作られており、繭から生糸が作られる際の副産物が「絹紡糸」及び「紬糸」です。
今有名な化粧品会社の「カネボウ」(鐘紡)も絹紡糸を作っています。カネボウの前身は字にありますように、紡績会社だったのです。
うんちく10. 絹の弱点を教えて下さい!
衣服は着用していると知らず知らずのうちに擦れて毛羽立ち、ひどくなると布地が破けてしまいます。 衣服の耐久性を左右するこの性質を耐摩耗性、または摩耗強度と言い、絹は他の繊維に比べ、この摩耗強度が悪いのです。 単純に摩耗強度と言っても、繊維の集まり方や織り方、さらに撚りをどれだけ入れるなどの条件によっても変わってきます。 その他には、最近では大部丸洗いの出来る絹製品が出回ってきていますが、洗濯に対しての弱さもあります。 一回洗濯したら縮んだ!なんて事や、生地が破れたとか、縫製がほどけた!なんて事もよくあります。 しかし、このような事は簡単に改善出来るのです。 この解説は「絹の洗濯方法」をご覧下さい。
うんちく11. 絹製品の洗濯方法を教えて?
通常絹100%の製品を洗濯する場合は、ネットを使い洗濯機で中性洗剤を使用すれば黄変や光沢度の低下が少なく安心です。 しかしラウジネス(繊維の毛羽立ち)が発生して絹繊維を傷ます事になります。 そこでやはり手洗い(じゃまくさいですが・・・)をオススメします。
1. | 水または37℃くらいのぬるま湯に中性合成洗剤を入れ、よく溶かします。 |
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2. | 洗濯物を反対向けにして入れ、振り洗いか、軽く押し洗いをする。汚れがひどい場合は汚れている部分に直接洗剤をつけてゆっくりつまみ洗いをして下さい。 |
3. | 十分にすすぐ。 |
4. | 絞らないで、そのまま陰干しをするか、バスタオルで水気をよく取り除き陰干ししてください。 |
うんちく12. 絹製品の保存方法は?
絹はタンパク質繊維なので手入れが行き届かないと、かびが発生し虫食いの害を受け、黄変してきます。 ですから常に汚れを直ぐに取り除き、なるべく湿気を防いで直射日光を避け涼しい所に保管しましょう!
ブラッシング | 絹製品はブラッシングすると毛羽だちますので毛足の柔らかいビロード等を用いましょう。 また衣服を脱いだ後は、ほこりをよく払い汗じみがある場合は固くしぼった布でたたき落とした後、早目にクリーニングに出しましょう! |
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アイロン | アイロンかけは必ず綿布を当てて使い、温度は130℃程度で素早くかけます。 スチームアイロンを使う場合は汚れた水を使うとしみになりますので、十分注意して下さい。 |
保管 | 保管の際はよく乾燥したのち、ハンガーにかけて洋服ダンスに収納します。 この時、防虫剤を使用し2種以上の防虫剤を同時に入れないで下さい。 また途中で無くなった場合は同種の防虫剤を使いましょう。 |
うんちく13. 絹の番外編!
【絹のパンスト1足で富士山の頂上に行ける?】
富士山の高さは3776mとされていますが、パンスト1足を編む絹糸の長さがなんと富士山と同じということです。 絹糸はデニールという単位で表示しますが頭髪1本が50~60デニールに対し絹糸の一番細いものは2デニールくらいです。 それを25~30本合わせてようやく毛髪と同じ太さとなるわけです。 絹のパンストはまさにミクロのオシャレですね!