政府のプッシュ型支援に
頼りすぎない備えを

【細川】災害が発生すると「自治体の具体的な要請なしで輸送する」という政府のプッシュ型支援があるという話をききました。ということは、体験ツアーで学んだ「3日=72時間」または「1週間」という備えを、考えなくてもよいのではないのでしょうか?

【澤】内閣府の支援物資は、全国に送り出される体勢になっていますが、地域や被災人口によって「支援が行き渡らない」「避難所に行かないと受け取れない」ということも起こります。

【今泉】情報が入らなければ、プッシュ支援が来たのも分かりませんね。

【澤】そうなんです。また、必ずしも「全員の備え」が「私の備え」ではありません。「自分が必要なものは自分で備える」意識を持ち、どう備えておくかを考えておくこと。それはプッシュ支援のあるなしに関わらず大切だと思います。

被災時の野菜の価値は
本当に重要?

【細川】カゴメは野菜の加工品を多く提供していますが、被災時の野菜の価値について、実際に、たくさんの話を聞いたり、取材された専門家のお二人にお伺いしたいと思います。

【今泉】大規模災害では、物流そのものが止まり野菜が手に入りません。そして、生野菜は衛生的に支援物資には入れることができません。そのような理由で、被災者の方の口に入るのがとても難しいので、野菜飲料などは、備蓄しておいたほうがよいと思います。

【澤】私も同感ですね。東日本大震災の時に、1週間ほどの避難生活で唇が切れ出血したというお声がありました。栄養バランスが崩れたのかもしれませんね。そうしたことを考えますと、保存可能な野菜飲料などは大切だと思います。

「フェーズフリー」で
日常と非常時の壁を取り払う

【細川】日々の備えで大切にされている考えを教えてください。

【今泉】私は「フェーズフリー」つまり「日常と非常時のフェーズ(段階、局面)を分けない考え方」「普段使っているものが、災害時にも使える」という考え方が重要だと思います。

私はいつもミニライトを持ち歩いています。暗いところで字を見る時や夜道を歩くときに便利です。ヘッドライトにもなり点滅機能も付いているので、非常時でも使える、まさにフェーズフリーグッズです。

食べ物も特別に用意しておくのではなく、いつもの、あの、食べ物を身近にという考え方が必要だと思います。

【細川】食べ物でも日用品でもこれがあると安心、というものが人それぞれあると思います。そういったものは備えの中に入れておきたいですね