高校3年の冬、友人達と東京へ観光に訪れた際に立ち寄った、某百貨店でSTILE LATINOに出会った。
以前からブランドのことは聞いていたが、田舎育ちの自分は実物を見るのは初めてで、当時は見た目で他のジャケットと何が違うかまではわからなかった。

到底買いそうとは思えない子供姿であったことは間違いないが、平日の昼間でフロアが閑散としていたこともあって、店員さんは丁寧に対応してくれた。
そして袖を通した瞬間に、他のジャケットとの違いを感覚的に理解することになった。

物理的な目付は重たい冬物のがっしりしたツイードジャケットが、体に吸い付き、包み込まれるかのような着心地と、一体化しているかのような軽さ。
重さの軽いジャケットは幾度となく見てきたが、本体の重さと着用時の重さの感覚に相違がある不思議な体験は初めてだった。

衣類本体が主役である煌びやかなデザイナーブランドでは経験した事のない、身体に沿って人そのものを主役に引き立たせるものづくり。
見た目ではわからないが確かに存在するトップクオリティの秘密が、どうしても知りたくてクラシックの世界にどんどん惹きつけられた。

当時の自分には買えるはずもない代物だったが、それが本当に悔しく、同時に洋服の世界に一層のめり込む憧れになった。

大学生の時、食費などあらゆる諸経費を限界まで節約し、ようやく初めて自分の物にできた感動は忘れられない。
当時の友人達は、日々の授業にタイドアップのクラシックスタイルで臨む、キャンパスで浮きまくっていた自分を覚えているだろう。

そんな頃から付き合いの長いブランドでスミズーラ。
いくつになっても心踊る憧れのひと時。
奇妙な冒険のような第5話、ぜひお楽しみくださいませ。

2023.10.27 fri

第五話、黄金の風

この黒澤芽瑠には夢がある。
ギャングスター…ではなくイタリアへ行くという夢が。
夕暮が灰色に侘しくなる頃、午後の短さにふと気がついた。差し込む陽の光を暖かいと感じるようになったのはいつからだろう。

上質なヴァージンウールが贅沢に使われた柔らかいフランネルのダブルブレスト。
体に馴染んだ本格仕立てのスーツは背筋が伸びる。

なにやら西梅田が騒がしい。
鳴りを潜めたオルガンの代わりに、盛況な人々の声が漏れている。

それもそのはず…
今日はSTILE LATINOを率いるVincenzo Attolini氏が来日しているらしい。

ファミリーの皆さんとも一年ぶりの再会。
昨日食べた「神戸ビーフ」が相当美味かったらしく褒めちぎっていた。

この日のためだけに用意したというお勧めを一通り拝見。

ディレクター本人に採寸していただける貴重なチャンス。
覚悟はいいか?…
俺はできてる。

ご本人直々の接客は少し緊張する。

まずはヌード寸からベースとなるサイズを選定。

採寸係と記録係、役割分担がしっかりと成され、流れるように計測していく。

むむっ。
お尻周りに問題発生か…?

どうやら太ももとヒップのサイズがウエストサイズに対して大きいらしい…
既製品なら大型工事だが、オーダーでは上下でサイズをバラして細かく調整。

続いて組上。

肩線含め肩周りはジャケットの生命線。

袖修理も普段なら、裏地継ぎ必須の手長族な私もお直し要らずにアジャスト。

肩幅、着丈、身幅に合わせてサイズゲージを使い分ける。
3人がかりの贅沢フィッティングを堪能。

続きましては生地選び。
せっかくなのでいくつかお薦めを聞いてみよう。

膨大なファブリックの中からとっておきを探す至高のひと時。
彼らが選ぶ一等星は………?

イタリア行きの一張羅は固まった。
大切なのは「向かおうとする意思」だと思っている。

あとは天命を待つのみ。

デザイナーのヴィンチェンツォ氏を始め、ご子息が来日して行われる恒例のオーダー会を記念して、ringでは初となるリペアサービスフェアを開催いたします!
期間中にSTILE LATINOのジャケット・スーツ・コートをお買い上げいただきますと、袖修理とパンツの裾上げ修理をサービス(無料)いたします。
このお得な期間に是非一度、STILE LATINOの魅力を感じてください。

*袖修理は袖詰め出し・本切羽・開き見せ修理、裾上げはシングル・ダブル・タタキ修理など。着丈詰めやウエスト詰めなどはサービスの対象外となりますので、ご了承くださいませ。
*通販でご注文の際は、修理メニューを購入せず備考欄にご希望の修理内容を記入してください。




この度オンラインサイトにて新しいコンテンツを始めさせていただきましたring大阪の黒澤芽瑠(くろさわ める)と申します。皆様からは「めるる」と呼ばれています。 2022/9/23にリニューアルいたしました世界に一つのStileLatino常設POPUP店舗にて、僭越ながら担当として抜擢していただきました!
お立ち寄りの際はお気軽に「めるる」と呼んでください。

このコンテンツではSTILE LATINOの魅力をお客様へ存分にお伝えするには、自らがより深く当ブランドを理解することが必須であると考え、多くの製品に触れ、いずれは直接ナポリの工房に赴き、ものづくりの過程を現地視察することを目標とする人物が遠路途中で訪れる『寄り道』をテーマにお届け致します。

ringからStile Latinoを盛り上げる事を目標に掲げ、 この機会が少しでもその力添えになればと考えております。目的地であるナポリの工房まで、お付き合いよろしくお願い申し上げます!!


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〜STILE LATINOファクトリーへの軌跡〜

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