1616/arita japan商品ページへ

1616/arita japan

1616/arita japanに込める
つくり手の想い(百田陶園インタビューより)

Thoughts of the creators
(From an interview with Momota Toen)

400年の歴史の中で
受け継がれてきたこと

 有田焼が400年もの長い歴史を紡いできた背景には、その時代に求められるものにフィットにしてきた柔軟さがある。それは、業務用の陶磁器であり、美術品であり、またタイルなどの工業製品といった一般食器以外の有田焼の側面である。それが長い年月をかけて伝統を受け継いできた、一種のスタイルといえる。

 1616/arita japanのスタートもまた、新しい有田焼の出発点であった。当初、上がってきたデザインアイデアを初めて目にした職人たちは、一堂に難色を示したという。それは、焼き物のセオリーを覆すような斬新なアイデアであり、焼き物に関わる人間であれば誰もが同様な反応を示すものであった。

デザイナーの世界観を最大限かたちにする

 最初に発表された2つのシリーズ「TY“Standard”」、「S&B“Colour Porcelain”」への取り組みは、ブランドの方向性を左右するとても大きな一歩となった。
 デザイナーが求めたのは「直線的でフラット、高台(椀や皿などの底に設ける台)のないデザイン」。ただ、工業製品と違って型通りにいかないのが焼き物であり、変形しながら約20%も縮まるため、直線、フラットといった真っすぐなラインほど技術として難しく、経験ある職人であれば尚更、そのデザインのハードルの高さを心得ていた。そのような実現の難しいデザインには、職人自らが特性にあった形状へと手を加えるというのが従来の流れであった。ただ、今回のデザインの背景には、「世界基準の多様な食卓で、長く使ってもらいたい」というデザイナーの強い想いがあった。高台がある器は和食のイメージを強めてしまい、ナイフ、フォークを使う食卓では受け入れにくいものとなってしまう。

 その狭間で妥協をしなかったのがこのブランドの強さだった。百田陶園・百田憲由氏はデザイナーの世界観をそのまま形にすることを優先し、職人たちからの口出しを禁じたという。「上がってきたデザインを徹底的に突き詰めて欲しい。」それが職人への強いメッセージだった。それに対して職人も熟練した経験で応え、実現困難と思われたデザインはやがて強い個性を纏った器として実を結ぶこととなる。

製品化へのあくなきこだわり

 1616/arita japanのものづくりへのこだわりは、とにかく深い。素材選定からデザインのディテール、製品のクオリティ、機能性に耐久性まで徹底したこだわりを見せる。それを物語るのがセシリエ・マンツによるデザイン、CMA“Clay”シリーズの開発秘話である。

 デザイナーが考える世界観を存分に発揮してもらうために、メーカーからの細かなリクエストは行わないというのが基本スタンス。そんな環境下で、構想から実現まで3年を費やしたこのシリーズは、彼女の強烈な感性の表れとなった。何百枚ものスケッチ、数多の陶土の中から選び進められたものづくりは、そのフォルムの精度も0.5mm単位までこだわるという徹底ぶり。(製品化にあたって0.5mmは現実的に難しかったが、1~1.5mmの誤差までを許容としているほどの緻密さである。)また、他では使われることが稀なアースグレーの陶土を採用した素材も、土が本来持つ自然な表情として独特な味わいを見せる。妥協を許さない数々のこだわりが、他では真似できない精度とクオリティを生んでいるのだ。

“信頼”でつながるものづくり

 長く食卓で活躍する器には決まって、生まれるまでにさまざまな背景があるものだ。1616/arita japanの根底にあるもの。それは、ものづくりに携わる“ヒト”同士の信頼感。百田陶園、デザイナー、窯元、と繋がる信頼の輪こそ、ものづくりの神髄であることに気づかされる。“これまでにないスタンダード”を掛け声に集まった各分野におけるプロたちが、それぞれに想いを込め、1つのモノに辿り着く。そんなものづくりが世界へ向けて発信するブランドの原動力となっている。

モノとヒトの関わり

 モノを使うことからさまざまなストーリーが生まれる。そのタイミングは、見つけたときや手に入れたときであったり、長く共にした年月の間に起こったできごとであったり、普段何気なく手に取る日常に溶け込んでいることさえもひとつの物語である。
 世界幸福度ランキングで常に上位をキープし続ける北欧・デンマーク。そこには、前向きなモノとの向き合い方が存在する。ただ機能を満たすだけのモノではなく、その“モノ”があることでどんなシーンをつくることができ、どんな時間を過ごすことができるのか?そこには、「モノの先に何が生まれるのか」を考えて手にする文化がある。それが愛着を生み、長く親しまれるモノへと変わっていくことにつながる。デザイン大国とも評される歴史は、モノとヒトとの向き合い方の歴史でもある。その伝統を受け継ぐ一方で、今、そして未来へもしっかりと目を向け取り組んでいるのがデンマークだ。
 長く親しまれるものづくりには、デザイン性、機能性、耐久性が土台として必要である。有田焼の「伝統」と「今」を融合させた1616/arita japanのプロダクトにも、そんなデンマークとの共通点がいくつもみられる。大量生産、大量消費の時代を抜け、100年先へつないでいきたいモノ、伝統。その向き合い方を研ぎ澄ますことで豊かな暮らしが見えてくるだろう。