Beosound Explore

もう手放したくない。Bang & Olufsen「Beosound Explore」の心地よいサウンドは毎日聴きたくなる

2023/07/27 草野晃輔

今やスマホからサブスクサービスで音楽を聴くことが当たり前だ。それにともなって、スマホよりも高音質に音楽を楽しめるBluetoothスピーカーも、すっかり身近なものとなっている。
このBluetoothスピーカー、筆者はポータブルオーディオの中でも選ぶのが難しいアイテムの一つだと考えている。数千円の激安モデルから、10万円クラスの大型モデルまで、まさに多種多様な市場であり、なおかつ、低域のパワー重視か、防水防塵性能か、はたまた音質を追求するかなど、「どんな要素をどのレベルまで求めるか」で選ぶ製品がガラッと変わるからだ。
では、さまざまなBluetoothスピーカーに触れてきた筆者が、今欲しい製品とは何か? それはBang & Olufsenの「Beosound Explore」である。決め手は 「長く愛用できるモデル」 であること。今回は、その理由を紐解いていこう。

Bang & Olufsen「Beosound Explore」(価格:24,900円/税込)

Bang & Olufsen のエントリーBluetoothスピーカーは、タフさが自慢

Beosound Exploreが登場したのは2021年5月。実に発売から2年余りが経過している。Bluetoothスピーカーそのものは、新しい製品も続々登場しているが、実はあまり使わない機能がプラスされただけで割高だったり、従来機からのマイナーアップデートだったりというケースは少なくない。むしろ、発売からある程度の期間が経過したことで、評価が定まり魅力が際立ってくるモデルがある。その代表格がBeosound Exploreなのである。

Beosound Exploreは、デンマーク発の名門オーディオブランドBang & Olufsen のBluetoothスピーカーの中で、最もリーズナブルなモデルだ。「ブランド史上最もタフなスピーカー」をコンセプトに開発され、IP67準拠の高い防塵・防水性能を備える。 筐体は直径81×高さ124mmの円筒形で、素材に堅牢で肉厚なアルミニウム合金を採用。表面にアルマイト加工を施すことで、傷に強く塗装も剥がれにくい。重さは631g(本体のみ)と大きさの割にずっしりしており、置いた時に安定感がある。

Bang & Olufsenの製品群でエントリーモデルにあたる一台

カラビナ付きで屋外での使用にも適する

コンパクトなボディの中には、1.8インチのフルレンジドライバーと30WのクラスDアンプを2基ずつ搭載。Bluetoothはバージョン5.2に準拠し、コーデックはSBCをサポートする。スマホとPCなど2台の機器と同時に接続できるマルチポイントに対応するほか、本機2台を用いたステレオ再生も可能だ。連続再生時間は最大約27時間、充電用の端子にはUSB-Cを備える。

2台連携してのステレオ再生も可能だ

Beosound Exploreの魅力は品のある素直なサウンド

Beosound Exploreは発売当初、開発コンセプトの「ブランド史上最もタフなスピーカー」を受けアウトドア用途が注目されていた。もちろん、タフさも持ち味の一つだが、本機の真の魅力は 「素直でクリアなサウンド」 にある。 Bluetoothスピーカーを日頃どこで使うかを考えてみよう。ほとんどの人は室内で使うシーンの方が多いだろう。また、Bluetoothスピーカーの中には、ズンズンと響く低音を売りにしているモデルが数多くある。一聴すると迫力がある反面、刺激が強く長時間使うと聴き疲れしやすいことも。つまり、「室内」で「聴き疲れしにくい良音」を楽しめることこそ、長く愛用したくなるBluetoothスピーカーに欠かせないポイントなのだ。

Bluetoothスピーカーを使う場面は、多くが室内だろう。聴き疲れしにくい素直でクリアな高音質は、日常使いにぴったり

肝心のBeosound Exploreのサウンドはどうだろうか。iPhone 14とペアリングしてAmazon Music UnlimitedでYOASOBIの「アイドル」を再生してみる。
Bang & Olufsenの製品に共通する素直でフラットなサウンドだ。中高域は伸びやかでボーカルが一段前にあるようにぐっと迫ってくる。この曲はめまぐるしく曲調が変化しながら、アイドルの華やかな部分とドロドロした部分を表現するのだが、曲の変化に合わせて歌い方もガラッとかわる。例えば、Aメロは可愛く、Bメロは素直に、ラップは陰を伴ってといった具合。Beosound Exploreではそんな声の表情の違いを繊細に描き分けている。
さて、Beosound Exploreのユーザーには「低域が物足りない」と評する向きもある。確かにズンズンと空間を揺らすような荒々しさはないが、Beosound Exploreの低域は、密度が濃く存在感があり、絶妙なバランスで曲のボトムを支える。日常的にリラックスして聴くのにちょうどよい、品のある落ち着きを持っている。
曲によっては、もっと低域が欲しいというケースもあるだろう。そんな時は、「Bang & Olufsen」アプリを使おう。

「Bang & Olufsen」アプリを活用して、音質を自分好みにカスタマイズできる

アプリではサウンドモードを設定できる。「最適」「Favourite」「Speech」「Party」と4種類のプリセットが用意されており、自分で調整も可能。調整画面は丸い図になっており、図の上が「ブライト」、下は「ウォーム」、左が「リラックス」、右は「エネルギー」とエリアごとに特徴が振り分けられている。このどこにポイントを置くかで音質が変化する。
例えば、低域を強調したいなら「エネルギー」と「ウォーム」の間(アナログ時計で5時の方向)に、高域を立たせたいなら「エネルギー」と「ブライト」の間(同じく2時の方向)にポイントを置くとよい。

アプリでは4つのプリセット音質のほか、自由にサウンド調整できる設定も用意

また、円の外側にいくほど効果は強く、中心に近づくほど弱くなる。ポイントを動かすと瞬時に音が変わるので、いろいろなところにポイントを置きながら、好みのサウンドを探しやすいのは嬉しい。

1日中あらゆるシーンで快適なサウンドを届けてくれる

Beosound Exploreを室内のさまざまな場所で使ってみたくなった。今回試した中から特にオススメのシーンとサウンドを紹介していこう。

コンパクトで持ち運びしやすいので、家中さまざまな場所で使ってみたくなった

まずは、リビング&ダイニングでのリスニングだ。筆者宅ではリビング⇔ダイニング⇔対面キッチンと一直線につながっている。中央に近いダイニングテーブルに本機を置いたところで、部屋の雰囲気が締まって感じられることに気づく。筒状のボディは中心に近いスピーカー部がスリット状のアルミで覆われていて、ボーダー柄のようで遠目に見てもお洒落。細かなところまで工夫されている。
夏になると聴きたくなるケツメイシ「夏の思い出」を再生すると、メロウでリズミカルなイントロが部屋中に広がる。冒頭サビから始まりラップが続くのだが、このラップが秀逸。声が聴きやすく、随所に仕掛けられた細かい韻が気持ちよく分かる。切ない歌詞もスッと心に染みてくる。低域ばかりが強いBluetoothスピーカーでは、どうしても中高域が弱く感じられ、この曲の魅力の歌詞を満足に味わえないだろう。また、360度どの角度から聴いても音質が変わらないため、ダイニングに座っていても、リビングに移動してソファーで本を読んでいても、端のスペースでストレッチをしていても、素直で聴きやすいサウンドを楽しめた。

キッチンではスマホとペアリング、料理動画の音声がクリアにしっかり届くので、新しい料理にもどんどん挑戦したくなる

次に試したのがキッチンだ。妻や娘が料理をしながら、YouTubeの料理動画を参考にしていることがある。油の飛ばない位置に置いて、スマホで解説動画を見ながら作業しているのだが、食材をカットする音や、炒めた時の音、換気扇の音などにかき消されて、解説が聴こえない様子。画面の文字を見る頻度が高いのが気になっていた。 そこで、Beosound Exploreをスマホとペアリングして試してもらったところ「聴きやすい」と驚きの声。作業を一通り見ていたが、音声を頼りにどのタイミングで何をすれば良いかがわかるようになり、画面を見る頻度が明らかに減っていた。 防水性能を備え、水はねを気にしなくて良い点も好評だった。

浴室は反響しやすいが、ぼやけることなく音楽がしっかり耳に届いてくる

水に強いBeosound Exploreだけに、浴室でのサウンドも確かめたい。本機が準拠するIP67は「塵埃の侵入がない」かつ「水深1mの真水に30分間水没しても浸水がない」レベル。実際に、シャワーを当てても湯船に数秒間沈めても利用に問題なかった。湯船の端に本機をセットし、Vaundyの「怪獣の花唄」をプレイすると、リズミカルなイントロが空間に広がる。浴室は音が響いてエコーがかかったようになるが、曖昧さは皆無。音像が明瞭ゆえ、反響しても聴きやすい。 音楽もよいが、相性が特に良かったのが動画再生。湯船につかりながらスマホで動画を見る際に、音が聴きにくく音量をかなり大きくしていたが、Beosound Exploreならそこまでボリュームを大きくしなくてもクリアな音声を楽しめる。あまりに快適で、のぼせるまでアニメやドラマを観てしまった。
最後に試したのが寝室だ。
スマホで寝入るまで音楽を流すことがあり、音量が小さいと音がぼそぼそし、しっかり聴けるほど大きくすると騒々しく感じやすい。ちょうど良いボリュームがわからない状態だった。それが、Beosound Exploreだと小音量でもエネルギッシュで、バランスが破綻しない。騒々しくならず、かつ静かすぎない絶妙の音量で、眠りにつくまで部屋を音楽で満たせる。
寝るときによく聴くのが、ムーディーなジャズだ。映画『BLUE GIANT』のサウンドトラックからエンドロール曲「BLUE GIANT」を再生する。ゆったりと艶やかなテナーサックスの音色に、淡いタッチのピアノと繊細なドラムが絡みつく。小音量だと繊細なドラムが消えてしまうように思えたが、そんな心配は要らなかった。絶妙なバランスで、鋭く機微に富んだスティック裁きが分かるように生々しい。サウンドトラックを数曲聴いているうちに、いつの間にか寝入ってしまった。

せっかくBluetoothスピーカーを買うなら良いものを選びたい、そんな方はぜひ試して欲しい。長く愛用できるからコスパも良好だ

数日にわたって試したが、一度Beosound Exploreのある生活を味わうと、元に戻れなくなるほどに、自分の生活に深く浸透していた。それこそ「長く愛用できるモデル」の証だろう。耳に優しい素直なサウンドは、朝から晩まで家中のあらゆるシーンで心地よいリスニング体験をもたらしてくれる。
また、手にした際の満足感、部屋とマッチングする高級感あるデザインなど、所有する喜びにも溢れている。そして、外に持ち出しても絶大な安心感があり、長く使うほどにコスパも高くなる。
Bang & OlufsenのBeosound Exploreは、いま最もオススメしたいBluetoothスピーカーといえる。製品選びに迷っているなら、ぜひ選択肢の一つに加えていただきたい。(掲載元:PHILE WEB)