Beosound Emerge

高音質で作る「満足度の高い生活空間」のススメ
「Beosound Emerge」レビュー。Bang & Olufsen のWi-Fiスピーカーで家中を「良い音」に

2023/12/11 草野晃輔

冬が到来し、今年も残すところあとわずかとなった。旅行や買い物など、外出しやすくなったとはいえ、年末年始におうち時間が増える人が大半だろう。このおうち時間にぜひ楽しんでほしいのが、「音楽を聴く」こと。心地よい音楽で満たした空間に身を置けば、心身のリラックスにつながり、1年の疲れをきっと癒やしてくれる。

今回、インテリアとしても映えるBang & OlufsenのWi-Fiスピーカーを使って、筆者宅のリビングや寝室、書斎などで質の高いサウンドを楽しんでみた。ぜひご自宅のシステムアップグレードの参考にしてほしい。

高音質でインテリアとしても映えるWi-Fiスピーカー「Beosound Emerge」

部屋をいい音で満たしたいと思ったとき、対応するオーディオ機器を選ぶうえで大きなポイントとなるのが、ワイヤレス接続であること。部屋間を移動したり、部屋の中で置く場所を変えたりすることが容易で、それこそ自分の居る部屋をまるごとリスニングエリアにできる。

ワイヤレス接続にして持ち運びやすいオーディオ機器と言えば、やはりBluetoothスピーカーが真っ先に候補に挙がる。実際に使っている人も多いだろう。BluetoothはスマホやPCなどペアリングした機器からデータを圧縮して伝送する。圧縮の際、方式によってはデータをそぎ落としてしまうため、音質が落ちやすい。

以前紹介した「Beosound Explore」のように、優れたサウンドのBluetoothスピーカーはある。しかし、家中をいい音で満たそうとするにはどうしても限界がある。品質を落とさずに伝送可能なaptX AdaptiveやLDACといった方式もあるが、対応するスマホやPCとペアリングしないと使えないのがネックだ。

「Beosound Explore」

では、ワイヤレスの利便性はそのままに、よりよいサウンドを実現する手段が他にあるのだろうか?答えは簡単だ。Wi-Fiスピーカーを使えばよい。

Wi-Fiスピーカーは、Wi-Fiルーターを経由してインターネットや同じネットワーク内から楽曲ファイルを再生する。伝送速度が速くデータを圧縮する必要がないため、高音質なファイルをそのまま楽しめるのがメリットだ。Wi-Fiと聞くと難しそうに思うかもしれないが、ネットワークさえあれば利用可能で、実はとても扱いやすい。先日筆者も「Beosound A5」に触れて、音質の良さや使い勝手の良さを実感している。

「Beosound A5」

Wi-Fiスピーカーを軸に製品を選ぶなら、高音質なのは当然のこと、部屋のインテリアに馴染むお洒落なデザインのモデルがいい。部屋全体の高級感がアップし、生活そのものを豊かにできる。

候補はいくつかあるが、世界的に有名なデザイン事務所LAYERが意匠を手掛けた、Bang & OlufsenのWi-Fiスピーカー「Beosound Emerge」はいかがだろうか。幅67×奥行165×高さ255mmとB5判の本と同等のスリムなボディで、前面がニットファブリックとアルミニウム、両サイドがオーク材で構成されている。見た目がインテリアそのもので、家族が集う広いスペースでもプライベートな空間でも使いやすい。

まるで本のような佇まいの「Beosound Emerge」。スリムなボディは設置性も高い

このスリムなボディの中に、1.45インチのミッドレンジと0.6インチのソフトドームツイーター、4インチのウーファーを1基ずつ内蔵し、それぞれ独立したクラスDアンプで駆動する。小さくてもパワフルなのもポイントだ。そして何より、2台を連携してステレオ再生にしたり、他の対応機器と連携してマルチルーム再生をしたりと、まさに住環境に応じて音を満たす空間をデザインできる。

コンパクトサイズでも、パワフルサウンドを実現する音響構造。天面部にはタッチ操作機能を備える

Beosound Emerge1台で広いリビングダイニングに高音質が行き渡る

早速、Beosound Emergeを自宅に持ち込み、そのサウンドを試すことにした。我が家はリビングの窓際にちょっとしたワーク用のカウンターがあり、PCの傍らに本やノートが立てかけてある。ここにBeosound Emergeを並べるとまさに本が増えたようだ。とてもオーディオ機器とは思えないほどよく馴染んでいる。心なしか、部屋の高級感が上がったように思える。

一見するとオーディオ機器とは思えない、インテリア性の高いデザインは他にない魅力のひとつ

Wi-Fi設定はスマホにインストールした「Bang & Olufsen」アプリから行う。画面上部「+」ボタンを押すと、追加できる製品が一覧で表示される。Beosound Emergeを選び、画面の指示に従ってWi-Fiのパスワードを入れれば接続が完了する。

「Bang & Olufsen」アプリから、Wi-Fi設定をはじめ各種操作が可能。ルーム補正もアプリを介して行う

「Spotify」アプリに切替え、画面下部のスピーカーを模したアイコンからSpotify Connectで本機を選ぶ。Beosound Emergeの正面に座り、Official髭男dismの「TATOO」を再生した。1台のためモノラル再生となるが、本と同じようなサイズのボディから出ていると思えないほど、高解像度で浸透力のあるサウンドが伝わってくる。リビングは20畳以上の広さで生活音も常にあるのだが、それに負けずに隅まで音が行き渡っている。

この曲の聴きどころは大きく2つある。1つ目はイントロの途中から最後まで展開するアタックの強い芯のあるベースとドラム。音の密度、駆動力、繊細な表現力の一つでも欠けると音が弱々しくなりやすいのだが、Beosound Emergeの再生は解像度が高くぎゅっと詰まったエネルギッシュな音色だ。

2つ目が、イントロの20秒程度を除いて曲の最後まで途切れないボーカル。間奏すらなく、最後も演奏とほぼ同時に歌い終わる。低域がどっしりした演奏に重なることで、ボーカルの繊細なビブラートやブレスワークが輝きを増す。描写力があるからこそ、歌の魅力が引き出され聴き手を惹き付ける。

天面部の丸い円をなぞると、ボリューム調整が可能。反応も良く、操作はスムーズだ

続けて緑黄色社会の「サマータイムシンデレラ」をプレイする。疾走感のあるクリアなバウンドサウンドが心地よい。ボーカルはフレーズによってわずかに声が裏返えるのだが、この艶やかな表情を見事に描ききる。サビの溌剌としたハリのある声も滑らかに伸びている。
ちょっと意地悪して、本機の横から約2.5mの距離に移動して聴くと、高域の音のフォーカスがやや曖昧になった印象だが、低域から中域の迫力はそのまま。注意深く聴き比べでもしない限り、部屋のどこに置いてもいい音を楽しめることがわかる。

Beosound Emergeを2台使ったステレオ再生なら、広い空間が音で満たされる

1台目のBeosound Emergeから2mほど離れた位置にもう1台を設置し、ステレオ再生を試していこう。ステレオ再生をするには、2台目をWi-Fiに接続した後、アプリの「サウンド」メニューから「ステレオペア」項目に移動する。画面の指示に従い2台のうちどちらを左右チャンネルに割り当てるか選び、「次へ」をタップすると、ステレオペアリングが実行される。最後にシステム名を入力して設定は完了。なお、システム名はSpotify Connectのデバイス選択時に表示されるので、分かりやすいものがおすすめ。

正面に座り、Official髭男dismの「TATOO」を聴くと、1台の時よりも、グンと音がリッチになり、厚みが増している。ステレオ感があることで、サウンド全体に奥行が出ているイメージだ。音の浸透力もアップ。1台では部屋の隅まで届いていた印象だったが、2台だと部屋全体が音で満たされる。ベースとドラムを中心に構成された演奏は、1台の時よりも音が柔らかいのに、音の立ち上がりが早くエッジが明瞭。ボーカルも一段前に定位し、意識しなくても歌詞が耳に残る。

2台使ったステレオ再生は、音のリッチさが違う。厚みが増して、部屋全体が音で満たされる満足感の高いライフスタイルを実現できるだろう

あいみょんのの「ノット・オーケー」は、フラットで過度に強調する帯域がなく、絶妙にバランスの取れたサウンドで、バンド演奏に重なる歌謡曲風のからっとした雰囲気の音色を上手に表現する。これが、ややぶっきらぼうに思えるボーカルの声色と絡み合い、なんともいえないノスタルジーと切なさを感じさせる。リズムパートの弾むような演奏も見通しのよい音場に小気味よく響く。1台でも十分によい音を楽しめたが、2台だとその幅も奥行も数倍に拡がったように思えた。

最後は書斎にポータブルWi-Fiスピーカー「Beosound Level」を追加して、マルチルーム再生を試す。本機はサイズが幅348×奥行56×高さ230mmと、Beosound Emergeと比べるとやや大柄な製品。フレームはアルミニウム、前面はファブリックモデルとオーク材を採用したモデルがあり、今回用意したのは後者。表面にスリットが設けられており、インテリアにしか見えない。

書斎に「Beosound Level」を設置して、マルチルーム再生を試す

中には、2インチのフルレンジ1基と0.8インチツイーター2基、4インチウーファー2基の合計5基のドライバーを搭載する。アンプはクラスDでフルレンジ、ツイーターに各1基、ウーファーに2基ずつ用意されている。バッテリーを内蔵し、最大16時間の連続再生が可能だ。

アルミニウムのフレームは美しく、オーク材との組み合わせも素晴らしい

電源ケーブルはマグネット吸着式。後ろから見ても美しい、ブランドの強みが伺える

書斎の広さは9畳ほど。部屋を入って突き当りにインテリアを置く小さめのラックがあり、ここにBeosound Levelを設置した。サウンドを確かめたところ、Beosound Emergeのステレオ利用時と同等の迫力と浸透力があり、部屋を音で満たしてくれた。

マルチルーム再生はリビングのBeosound Emergeと同じ音を、Beosound Levelでも再生することにした。Spotify Connectでステレオ設定したBeosound Emergeから「TATOO」を再生し、Bang & Olufsenアプリに移動する。ここで、画面下部の再生中を示す帯の右にある四角形が重なったアイコンをタップする。

「Beolink Multiroom」の設定画面が表示されたら、Beosound Levelのアイコンの右上のチェックをオンにする。すると、書斎のBeosound Levelから同じ楽曲が流れ始めた。リビングで家族と一緒に楽しんでいた音楽を、書斎でもシームレスに味わえる。

スピーカー同士の連携はアプリで操作。マルチルームと聞くと難しそうに感じるかもしれないが、思っている以上に操作は簡単だ

Beosound Levelはバッテリーを内蔵しているので、そのまま寝室に運んでも、子ども部屋においても同じサウンドを聴ける。まさに、家中が音楽で満たされた感覚だ。毎年、年末に仲のよい数家族で集まって忘年会をしているのだが、人数が多いためリビングダイニングに大人、書斎に子どもと分かれて過ごす。こんな時にも、この組合せは活躍してくれそうだ。

この年末年始を機に、Wi-Fiスピーカーでいい音で満たされた空間を作り、家族や仲間と音楽体験を共有してはいかがだろうか。

(掲載元:PHILE WEB)