【革靴のデザインを知る】


革靴にはたくさんのデザインがあります。
近年ビジネスカジュアルなどの普及により、“ビジネスシーンに適したデザインの靴”というのが曖昧になってきています。しかし、靴のデザインの基本を知っておくと靴を選ぶ際にひとつの目安になると思います。
店頭に立っていて“仕事で履く靴”や“冠婚葬祭で履く靴”など、着用シーンは決まっていても「どのようなデザインの靴を選べばいいのかわからない」といったお声をよく聞きます。初めて革靴を購入するという方にとってはなおさら難しい問題だと思います。

今回は、革靴のデザインと着用シーンについて解説していきますので、靴を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。




紐ありと紐なし


まずは、紐のある靴か紐のない靴かで与える印象は大きく変わります。
少し堅い場での着用を想定するならば、きちんとした印象を与えられる紐のある靴を選びましょう。紐でしっかりと締め付けられるので、足へのフィット感も抜群です。
紐を通す穴の開いた革のパーツ(羽根)のつくりで『内羽根式』と『外羽根式』で分かれ、どちらもビジネスシーンにぴったりです。


内羽根式・・・羽根が甲の部分と合わさっているつくりの靴です。


冠婚葬祭などフォーマルな場に最も適しています。初めて革靴を購入されるなら内羽根式から選ぶことをおすすめします。ただし、羽根の部分が過度に開かないため締め付けの調整がしづらいので、足の甲が高い方は注意が必要です。




外羽根式・・・羽根が甲の部分とは合わさっておらず靴本体に扉状に取り付けられているつくりの靴です。


羽根の部分が大きく開くことで着脱が容易にでき、締め付けの調整がしやすいため、足の甲が高い方におすすめです。




反対に紐のない靴はカジュアルな印象が強くなります。
『モンクストラップ』や『エラスティック』、『ローファー』などがあります。職種や職場環境により異なりますが、平時のビジネスシーンやジャケパンスタイルでの着用も概ね問題ありません。
紐がない分、紐靴に比べると足へのフィット感は少し劣りますが、着脱が容易にできるため脱ぎ履きの多い職種の方がよく選ばれています。



【POINT】



■初めての革靴の購入や、フォーマルな場でも履くことを想定するなら“内羽根式”

■平時のビジネスシーンでの着用を想定し、足の甲が高い方は“外羽根式”

■脱ぎ履きの容易さを重視しつつ、平時のビジネスシーンでの着用を想定するなら“モンクストラップ”または“エラスティック”

ストレートチップ




横一文字の切り替えがつま先に入っている靴です。
切り替えが入っていることで、履きジワが目立ちにくくきれいな状態を保てます。また、鏡面仕上げする際にも適切な位置(切り替えより先の部分)に施せます。 飾り穴(ブローグ)が施されたデザインもあります。
『黒の内羽根式ストレートチップ』は最もフォーマルな靴になり、ビジネスシーンはもちろん、冠婚葬祭にも着用できます。必ず一足は持っておきたい王道の一足です。

#スーツ#ビジカジ

プレーントゥ




つま先に飾りのないスッキリした靴です。
外羽根式の靴に多く、デザインとしてはややカジュアルに分類されます。『外羽根式プレーントゥ』はデニムなど普段の服装にも着用できます。ビジネスシーンで着用するのであれば細身の木型(ラスト)がおすすめです。紐を通す穴が2穴や1穴のものはトゥまでの距離が長くなりスマートでドレッシーな印象になります。

#スーツ#ビジカジ#普段履き

ホールカット




内羽根式プレーントゥに分類される一枚革で形成された靴です。
縫い合わせが最低限のため、傷の無い大きい革を贅沢に使用します。ホールカットをベースに飾り穴(ブローグ)が施されたデザインの物もあり、ビジネスシーンでの人気が高く無地のスーツなどに合わせると靴のエレガントさが引き立ちます。最近ではストレートチップをお持ちの方が2足目に選ぶことが多いです。

#スーツ#ビジカジ

ウイングチップ




つま先の切り替えがW字型に施されている靴です。
名前の通り鳥の翼のようなデザインが特徴的です。職種や職場の環境によって異なりますが、ビジネスシーンでの着用も問題ありません。クラシカルでカジュアルなウイングチップはデニムなど普段の服装にも着用できます。

#スーツ#ビジカジ#普段履き

Uチップ




U字型のモカシン縫いでアッパーを縫合わせた靴です。
靴に厚みを持たせることが出来るため幅広・甲高の方にもフィットしやすいです。ビジネスシーンでの着用は概ね問題ありませんが、本来アクティブなシーンでの着用を想定したデザインですので普段の服装に取合わせるのが無難です。ビジネスシーンで着用するのであれば細身の木型(ラスト)がおすすめです。

#スーツ#ビジカジ#普段履き

サイドレース




羽根が靴の側面(外側)に施されているため、くるぶしあたりで紐を結ぶデザインの靴です。
他とは異なった独特のデザインで人気を博しています。職種や職場の環境によって異なりますが、ビジネスシーンでの着用も問題ありません。履き口にゴムがついていることが多く、紐靴でありながら脱ぎ履きのしやすさもポイントです。

#スーツ#ビジカジ#普段履き

モンクストラップ




紐ではなくバックル留めのストラップで甲を締める靴です。
ストラップが1つであれば『シングルモンクストラップ』、2つであれば『ダブルモンクストラップ』といいます。紐靴以外では最もフォーマルな靴ですので、ビジネスシーンでも問題なく着用できます。近年とくにダブルモンクストラップが主流となっており、脱ぎ履きの容易さもポイントです。普段の服装に上品なテイストを添える靴としても重宝します。

#スーツ#ビジカジ#普段履き

エラスティック




カジュアルな印象を与えがちなゴムを見えないように施した靴です。
靴側面にあれば『サイドエラスティック』、甲にあたる部分にあれば『センターエラスティック』といいます。フェイクの靴紐が施されたデザインのものもあり、ビジネスシーンでの着用がおすすめです。モンクストラップ以上に着脱が楽なので、脱ぎ履きの多い職種の方に人気です。

#スーツ#ビジカジ

ローファー




革靴ならではの上品さがありながらも、紐がなくラフに履ける靴です。
カジュアルな位置づけなので本来ビジネスシーンには不向きといえますが、近年ビジカジスタイルに取り入れられることが増えてきています。
ローファーにも種類があり、甲部分の補強用のベルト(サドル)に切れ込みが施された『コインローファー』や、サドルの代わりに房飾り(タッセル)が施された『タッセルローファー』、サドルに馬具を模した金属の飾り(ホースビット)が施された『ビットローファー』に分かれます。普段の服装に上品なテイストを添える靴として重宝します。

#ビジカジ#普段履き

デザインPOINT




ストレートチップ・ホールカット・エラスティックはスーツやビジカジに、ローファーはビジカジや普段履きに合わせるのが好ましいです。
その他のデザインは着用シーンを幅広くカバーしてくれますが、普段履きで選ぶなら木型(ラスト)はあまり細すぎないものを選ぶとコーディネートしやすいです。

まとめ


今回は靴のデザインと着用シーンについて解説してきました。

“ビジネスシーンで着用してはいけない靴”というのは少なく、どのデザインの靴もある程度幅広く着用できます。

しかし、冠婚葬祭などフォーマルな場に適した『黒の内羽根式ストレートチップ』は必ず持っておくべき靴といえます。

普段お客様と接するなかで、靴のデザインをよく知っている方はスーツスタイルでもカジュアルスタイルでも革靴をうまく取り入れられていて、とてもおしゃれでカッコよく見えます。

ぜひこの機会に今お持ちの靴を見なおし、次の一足を購入する際に“TPOに合った靴のデザイン選び”を意識してみてはいかがでしょうか。

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