鳴海 皆さん、御いくつ位から始められたんでしょうか?
志茂田 若い頃からという人もいますが、工芸品的なものを作ったりというのは、一線をリタイヤしてからという人が多いのではないでしょうか。
20歳から60歳まで働いてリタイヤしても、100歳までというとまだ40年あるわけです。40年もあったらいろいろなことが出来ますよ。やることがなくて、ボーっとしているのが最も良くないですから、半ば強制的に趣味を見つけてきっかけを作ることがたいせつだと思います。
鳴海 若い頃、幼い頃に関心があったことというのは、本当はその人の得意分野である可能性が高い、ということもいわれていますね。そういったことを思い出して、ワクワクするような老後を過ごしたいですね。
志茂田 健康・長寿のためのすべての項目には関連性があります。
最後の6つめは、一人暮らしでも肉親や地域の人と積極的にコミュニケーションをとっている、ということです。まあ、100歳を超えるとその地域では名士ですからね。やはりファンも多いらしくて、地域の皆さんととても楽しそうにお話しをしているんです。好奇心が旺盛なので、話題にも事欠かないんでしょう。こうして様々な人と接することで、適度なストレス、刺激が常にある生活が張りになっている、ということでしょうね。
鳴海 健康・長寿のための6つの共通項は、すべて関連しているんですね。
先生は、読み聞かせという活動も行なっていらっしゃいますが、小さなお子さんから、それこそ100歳を超えたお年寄りまで、様々な年齢層に幅広いファンがいらっしゃいます。先生の読み聞かせを体験した皆さんは、たいへんな感動を受けて、こころが洗い流されるようだ、と言いますね。
笑う、涙する、感動する、というこころの動きは、健康にもとても良いことだと思います。
志茂田 面白いことに、僕が話を始めると、今まで泣いたり暴れたりしていた0歳、1歳という子供さんまでが、ピタリ、と静かになるんです。
これは言葉ではないんだな、メッセージなんだな、と思いますね。
小さな子供さんは感受性を育むためにとても良いですし、お年よりの方は脳を活性化させる方法としてもたいへん有効なんです。僕がこの読み聞かせをしているのは、こうして喜んでくれる人の顔を見るのが嬉しいのと同時に、僕自身のこころがそのたびに洗い流されている、という感じを受けているからだと思うんです。
与えることで僕自身が頂いているんでしょうね。幸せなことだと思いますよ。
鳴海 与えることで、頂いている。自然の摂理にかなっているお言葉だと思います。
今日はたいへん貴重なお話しをどうもありがとうございました。
志茂田先生の健康・長寿の哲学をよりよく知るために
100歳以上の健康・長寿者に共通する6つのこと
* 1野菜を多食している
* 2自分でやれることは、なんでも自分でやっている
* 3人生観、信念をもっている
* 4若いときからよく働いて、手先が器用で足腰がしっかりしている
* 5趣味や、楽しくやれることをもっている
* 6ひとり暮らしでも、肉親や、地域の人と積極的にコミュニケーションをとっている
志茂田景樹先生の著書志茂田景樹先生 プロフィール
本名 下田忠男
昭和15年3月25日静岡県生まれ
中央大学法学部卒業
昭和51年 第27回小説現代新人賞受賞
昭和55年 第83回直木賞受賞
昭和59年 第4回文芸大賞受賞
平成6年 第13回日本文芸家クラブ特別大賞受賞
平成8年 (株)志茂田景樹事務所内に出版部門KIBA BOOK創立
平成11年 「よい子に読み聞かせ隊」を結成、隊長となる
平成15年 帝京短大客員教授となる
(季刊ぶんぶん通信Vol.15 2004年秋号)
「100歳すぎてもスゴイ生きる力」(KIBA BOOK)、「心の畑に感受性の種を蒔こう」(KIBA BOOK) など多数の著書がある