←前へ  次へ→

浅野屋丁稚塾
番頭への道「その81 メーカーの思惑」

小売店は問屋と言われる卸業者から仕入れます。

この卸しの流通過程は複雑なところがありますが、その卸業者が 商品を調達するのがメーカーです。
これは呉服に限らず、他の業界でも同じですが、それぞれの流通段階で それぞれの思惑があるわけなんですね。

この冬、人気のあったベルベットのコートなどの季節商品は需要期に 先駆けてメーカーは、その生産数を決めます。

コンビニの店長が、その日の天候によってお弁当の発注数を決めるように、 メーカーはこの商品を今シーズンは何配色でどのサイズ展開で それぞれどれくらいの数量で・・・と計画を立て、生地の手配 縫製の 段取りを進めるわけです。

丁度、一シーズンで綺麗にさばけるようにと目論んで算段する訳です。

今年のように、需要期になって思ったよりも人気が高く、商品が途中で 品切れになってしまう事態になると、もっと増産しておけば、もっと 売れたのに・・・と後悔することになります。

俗っぽい言い方をすれば、「儲け損なった」ということです。
でもそれは、プラスが少ないということだけのことで、マイナスに なっている訳ではないんです。

ところが、逆の見当違いをすると、ことは重大です。
作った商品が思いの外、売れないとなると在庫として抱え込まなくてはなりません。

売上が立たないのに、生地代・仕立て工賃 その他の経費は支払わなければ ならないため、その規模によっては大きなダメージを受け、経営を圧迫することになります。

そんなリスクを抱えている為、メーカーも慎重にならざるを得ません。

シーズン途中で欠品しても、来シーズンまで待ってもらうと言うスタンスの メーカーも出てきます。

浴衣などもそう言った意味では季節商品になりますネ。
昔は、需要の最盛期にも問屋さんへ行けば、現物が売り場に豊富にありました。
浴衣の場合、色柄があるため一つのメーカーさんでも数多くの商品パターン を用意する必要があり、その分リスクも高くなります。

ここ数年は、受注生産の比率が非常に高くなりました。
その為、仕入れたいと思う柄は問屋さんの来シーズンの浴衣の発表会に 出向き、その場で発注を掛けておかないと手に入らなくなっています。

メーカーも、発表会での受注分を染めて納品するだけで、目論見で余分に 商品を染めて置く、と言ったことをしなくなりました。
ですから、6月7月にブランド浴衣のパンフレットでこの柄が見たいと お客様に言われても、自分の店で発注しておいた柄以外の浴衣は 現物を取り寄せることも難しくなる訳です。

その浴衣の来シーズン用の問屋さんの発表会は年が明けるとスタートです。

雪がちらつく1月2月に真夏の日差しをイメージして浴衣の発注を掛ける ことになります。

仕入れのコツは、問屋さん・メーカーさんの思惑を理解しつつも 逆手に取ることです。
色んな流通経路を潜ってきても、メーカーの生産コストより更に安価に 仕入できる方法が、一杯あるからなんです。

値打ちに仕入をすることが出来れば、良い商品をその分値打ちに お客様にお願いすることが出来、その分 お客様にも喜んでいただける と言う按配です。


頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


-戻る-