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浅野屋丁稚塾
番頭への道「その80 落款」

落款〔らっかん〕と読みます。款は書けと言われても、書けません。

絵画や書に作者が押すハンコのことです。
骨董品の鑑定時にはこの落款がものを言います。
つまり、作者が自分の製作した作品であることを証明する印になるからです。

着物の場合もこの落款が生地に押してあります。
但し、作家さんを限定できる場合のみです。

京友禅の場合、各専門職の分業で製作されるため、一般的な商品には付いていません。

ある作家さんの工房がプロデュースしたり、その作家さんが実際に一貫して 製作している場合は、例外として落款が押してあるケースもあります。

友禅は友禅でも加賀友禅の場合は殆どが友禅作家の先生がその弟子と 共に、一貫して生地から着物になるまでを担当するためその作家さんの 落款が押してあります。
でも、この落款 どんな立派な先生のものでも着用の際には、一切 役に立ちません。というより、無くても全然構いません。

ですから、留袖・訪問着の場合は取り外す訳にはいきませんが、 着尺の場合などは落款の押してある辺りを余り布にすることもあるんです。

着物は、作家さんの権威や名声で着る物ではなく、着手がそれを纏う ことによって、素敵に映るか否かで判断されるべきなんですね。
本来は・・・・

でも現実は、その着物を製作した作家さんが、人間国宝になったりすると その作家さんの作品は流通価格が跳ね上がります。
亡くなりでもしようものなら、もう一つ跳ね上がります。
その時に、その作家さんの作品であることを証明するのが落款でもあるんですね。

販売する時は確かにそうなんですが、その商品が着物として一度お客様の 手元に行った時点で、落款はその役目を終えます。
再度、その役割が復活することがあるとすれば、オークションに中古着物 として出品される時、或いは博物館に寄贈され展示される時ぐらいでしょうか?

因みに、着物に仕立てた時に落款を入れるとしたら、何処に入れるのか?

留袖・訪問着等の絵羽物の場合は下前の衽の上部に来るように、落款が既に 押されています。
反物の場合は、絵羽物と同じ位置或いは下前の衿先に来るように仕立てをします。

あくまで、外からは見えない位置に入れるようにしてください。
着物は株券じゃないですが、博物館に行くことは無いとも限りませんから。

チョッとした心遣いがお客様のハートを掴みます。


  頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


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