浅野屋丁稚塾 番頭への道「その70 品質表示」
今回は商品の品質表示についての裏話
製品の場合はタグが付いており、そこには素材に付いて明記される
ようになっています。
これは、和装関係に限らず他の商品もそうですよね。
食品などについては、その生産者まで記載されていたり、原産国や
賞味期限の表記についての問題がマスコミで採り上げらたりするほど
厳密なっているのが現状です。
着物の反物や帯に関しても当然生地の端に印刷されたり、証紙に記載
される形で判別出来るようになっているのですが、仕立て上げて納品
する場合は、お客様にはその記載箇所が残り布になっていたり、
証紙が外されていて分からなくなるケースが多くなります。
ですから、呉服屋はお買い求め頂く商品の品質に関して、お客様に信用
して貰えるような信頼関係を築いておかねばなりません。
正直であること・・・・これが大切なことになります。
ですから、ここで今のうちに懺悔しておきます。
西陣の礼装用の袋帯などの場合 組合の証紙に正絹と記載されています。
しかし、ここで言う正絹とは厳密に言えば絹100%と言うことを指している訳ではありません。
金糸銀糸などの金属糸は芯に絹が使われてはいますが、その周りは金属の
箔に包まれていることになりますから全体で見ると、絹以外の物質が
含まれていることになります。
つまり、西陣の組合が示す正絹とは・・・
絹100% 但し金属糸を除く とか
絹98.7%(←この数値は商品の金属糸の使用量によって異なってきますが)
と表記するのが正しくなる訳です。
金箔や金糸銀糸で刺繍された留袖・訪問着なども同じことが言えます。
但し、着物の世界ではこのレベルの品質表示の狂いはあまり問題視されていません。
化学繊維を絹と偽ることは問題ですが、着物や帯の場合はその意匠・加工
方法がその商品の価格を決める主要な要素となるため、金属糸の含まれる
割合はその価格に大した影響を及ぼさないからです。
そして、もう一つ品質表示について呉服の業界では盲点があります。
スナック菓子の袋の裏側を見ると、その成分と共に添加物も記載されています。
どのようにその商品が出来上がったのかが、専門の知識があれば
把握できるようになっています。
ところが、呉服業界にはそれがありません。
その反物がどの染料をどの位の割合で使われて染上げられたのか?を
示す表記は何処にも無いんです。
ただ、「草木染め」とか「藍染め」とかのラベルが貼ってあるくらいです。
例えば「藍染め」の小紋の場合
1万円以下で売っているものもあれば、数十万円の値段が付いているものもあります。
色目は同じ藍なのに、いったい何処が違うのでしょうか?
藍色に染める染料としては・・・
タデ科の植物である藍から手間をかけて作ったスクモから抽出する
天然の染料と安価で発色も安定している藍色の科学染料である
インディゴピュアとがあります。
どちらの染料を、その反物の染色に用いるのかで、変わってきます。
前者を用いた場合は本藍染め、後者の場合には藍色の染めとなる訳です。
更に分かりにくくするのは、インディゴピュアをベースにスクモから
抽出した本藍の染料を僅かに加えただけでも、それで染められた反物は
本藍によって染められたと謳うことが出来る点です。
お客様に、「素人の私には判らないけれど、やっぱり値段は値段
高価な商品にはそれだけの理由があるんですね」・・・と納得いただける
だけの信頼を勝ち得なければなりません。
頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!
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