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浅野屋丁稚塾
番頭への道「その69 誰のせい?」

人間ですから、どんなに気を付けていても失敗は誰にでもあります。

着物の商いに関しては、特に仕立てが伴う時 お客様に納品するまでに 様々な人がそれに関わってくる訳で、どこかの工程でミスったり トラブったりすることが正直(ここだけの話ですが・・・)ある訳です。

販売サイドの最優先事項としては、お客様に迷惑をかけないことが第一に なります。

それでは、ケーススタディーと参ります。
  • お客様の指定の寸法を仕立て伝票に記載して、仕立てを仕立て屋さんに依頼した。 ところが、仕立て上がってきた着物が指定した寸法に出来上がっていない場合

    その仕立て屋さんに仕立てのやり直しをしてもらいます。
    当然、直すのにかかる費用(解き代・湯のし代・筋消し代など)はその仕立て屋さんに負担してもらいます。
  • 上と同様の場合でも、長い筈が短く仕立てあがってきた場合で、 生地が裁断してある為、直しても長く出来ない場合は もっと深刻です。

    まったく同じ商品が仕入れ先から再仕入れして手に入れることの出来る場合は、新品から作り直してもらいます。

    寸法を間違えた商品は、そのまま仕立て屋さんに買い上げて貰うことになります。
  • また、指定通りに仕立てあがってきたのですが商品に仕立ての工程で汚れが付いてしまっていることもあります。

    たまにあるのは、血液のシミです。仕立ては縫製工場のラインで作る場合を除いて、手縫いになります。 素手に針を持って一針ごとに縫って貰う わけですから、針が指先に刺さり、血が出てしまうことがあります。

    そんな場合は、仕立て屋さんも即座に仕立て途中の着物に付かないように直に、 指先の治療をしてバンドエイドを貼るのですが、ごく稀に気付かないでいることもあります。

    仕立て屋さんも気付かないうちに、着物に血液のシミが付いてしまっている訳です。

    納品前のチェックで、汚れが有った時は当店からシミ抜き屋さんに出し、染み抜きをしてもらいます。

    当然、そのシミ抜き代は仕立て屋さんに請求することになります。

このように、和裁師もリスクを背負って仕事をしてもらっている訳です。 高額の商品の場合は尚更リスクが増します。

それでは・・・
  • 呉服屋がお客様からご指定いただいた寸法を勘違いして仕立ての伝票に記載し、伝票通りの寸法で仕立て上がってきた場合

    仕立て屋さんにやはり直してもらうのですが、最初に仕立てて貰った分 の仕立て代と更に直し代はお店からその仕立て屋さんに支払うことに なります。実は、私の失敗が正にこれでした。
  • 仕立ての途中で、致命的な生地や染の難が見つかった場合

    その商品の仕入れ先に返品し、同じ商品を再度仕入れて仕立てをします。

    返品する商品が仕立て途中の場合は、そこまでにかかった紋入れ代・ 湯のし代・途中までの仕立て代も併せて仕入れ先に値引きをしてもらう ことになります。

    そういったことを未然に防ぐ為の手だてが検品という工程になりますが パーフェクトではありませんから・・・

    丁稚塾「その1 検品」参照


  • 仕入れたばかりの商品にも関わらず、仮縫いの汚れ・色焼けが見つかった場合

    これも、仕入れ先に送り全て修繕或いは交換してもらうことになります。

つまり、失敗の原因を作ったものが、その付帯する費用も含め全ての責任を取るということになります。

このような、トラブルのためにお客様に納期や商品の交換をお願いして 迷惑をかけてしまった場合には、お詫びをしたり、値引きをしたりして 対応することになる訳です。その分も当然、そのトラブルの起因元が、 その責任を取らなくてはなりません。

そういった、シビアな約束ごとの中で着物は作られ、仕立て上げられて 行きます。

逆に、お客様の寸法の指定が、曖昧であったり本来の寸法と異なって いたりする場合は、難しい問題になります。

納品した後に、寸法が違うと言われた場合には、その着物を戻してもらい 仕立て伝票の寸法やお客様との遣り取りで決めさせてもらった寸法の控えと 再度照合します。

当方にミスが無い場合には、新規の寸法替えの受注としてお受けすることに なる訳です。

当然、最初に仕立てた際の仕立て代と新規の寸法直しの費用をご請求する ことになります。

お客様にとっては不本意かもしれませんが、それはそれとしてご負担を シッカリお願いしなければなりません。

呉服屋としても、お客様にそんな思いをさせるのは不本意ですから、 そんな事態を極力避けるように細心の注意が必要になります。

実店舗での商いのように、着物の現物を呉服屋サイドで採寸し寸法を決める 場合には、お客様の過失は殆ど生まれないのですが、ネット通販の場合 メールの遣り取りで寸法を決めることが多いので、お客様にもキチンとした 採寸の方法を知っていただき、適切な寸法の指示をいただけるよう説明責任を 全うする必要があります。

お客様も、呉服屋も仕立て屋さんも関連する外注先も一つの着物の商いを 通じて、皆がハッピーになるには、気合を入れて当らねばなりません。

頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


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