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浅野屋丁稚塾 番頭への道
「その50 着尺2反とアンサンブル」 

今回は男物の場合に出くわす課題なのですが、女物にも適応できるテーマです。


着物を作るための反物・・・これを着尺といいます。
羽織を作るための専用の反物・・・これは羽尺と呼びます。

これ、まずチェックです。

着尺は普通3丈(12m)の長さが規格になっており、羽尺は2丈6尺(9.8m)となります。

本来は着尺が基準ですが、着尺で羽織を作ると用布が余るため、勿体無い と、羽尺が作られるようになった経緯があります。

よく、着物屋の商品ページで男物紬アンサンブルとか、女物ウールアンサ ンブルとかいう商品名を見ることがあると思います。

アンサンブルといっても楽器を演奏するわけではありません。

インフォシーク 大辞林(国語辞典)アンサンブルでの検索結果
(5)長着と羽織を同じ布地で仕立てた和服。

のことです。

アンサンブルという商品名を持った反物とは同じ生地で着尺と羽尺を 足した長さに織られた反物ということになります。

ですから、これで着物と羽織を作ると同じ色目・同じ柄のお対が出来上が ることになります。

また、一方で男物の大島紬の場合はアンサンブルという呼び方をしません。 この場合は疋物という呼び方が正しくなります。

1疋=2反となります。これは、先述の着尺が機織の基本と言うところ から来ています。そして、男物の大島の場合は疋物として織られるのが殆どなんです。

大島などの場合は、着物と羽織をお対で作る場合はこの疋物を用います。
アンサンブルにすると余り布が出ることになります。

逆に、疋物であれば、着物を2枚作ることも出来ます。
例えば袷を1枚・単衣で1枚と・・・

着物と羽織を同じ生地の色違いのコンビネイションで作りたいという時 には、着尺を2反探して来ることが必要になります。

ウールの着尺2反で色違いの着物と羽織を・・・・
お召しの着尺2反で・・・・

とかいうことですね。当店で扱っているポリ素材のプレタ着物・羽織 のセットは、このパターンで作ってあるのが多いです。

逆を返せば、男物では同生地の着物と羽織で作る場合が多いのが現実 また、ウール・紬ではアンサンブルとしての商品が多い中で、着尺2反で 作るのは通(←トオリではありません「ツウ」と読んでね)の方がする 技です。チョッと贅沢ですから。

大島の場合でも女物の絣は疋では無く、反物での流通が殆どです。

男物とは逆に、絣(格子・縞の大島は疋物で流通しています)で同柄の 着物と羽織を作ろうとすると、今度は同柄の大島の絣の反物を2反用意する必要があります。

織り上げる時は12反ロッドで織るのですが、一度市場に流れてしまうと これは至難の技となります。

ですから、この場合は織り上がりホヤホヤのものを手早く2反押さえて しまわなくてはなりません。

現実には、お客様から2反揃いの大島で女物のアンサンブルを作りたい とオファーを受けてから、呉服屋が仕入先を通じて押さえることになります。

これも、とても通なお客様と呉服屋のコラボで実現できる技です。

街で見かけた着物姿の方で、男物で色違いの着物と羽織
女物では絣の大島のアンサンブルを見かけたら、一目置かなくては いけません。何せ相手は通ですから・・・

頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


■補習 女物の大島のアンサンブルで、着物裁ちの羽織を持っている お客様がいらっしゃいました。それはそのお客様のお母様が誂えた ものだったそうですが、2人の娘に仕立て替えて2枚の着物に出来る 様にとの配慮だったということでした。

その時、私は87へぇ〜を叩いてしまいました。


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