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浅野屋丁稚塾
番頭への道「その37 洗い張り」 

単衣の季節が近づいてくると、昔は洗い張りの注文が増えてきました。

「洗い張り」というのは、着物を一度 解いてしまって、反物の形状に 縫い合わせてから、水洗いする方法です。

当然洗った後は、また仕立てることになるのですが毎日のように普段着 として着物を着ていた時代は一冬着続けた袷の着物をこの時期洗い張り に出して、夏の間に仕立て直し、10月からまた愛用する。

といったパターンの繰り返しだったようです。

礼装のたまにしか着ない着物は別ですが、紬・大島などは、洗い張りを 重ねる毎にその風合いが良くなってきます。

織り上げた時に混入している不純物が、徐々に洗い出されるからだそうです。

また、洗い張りにはもう一つ着物を長持ちさせる効果があります。

仕立て直すことによって、縫い目が替わり、生地への負担が分散されるからだそうです。

この仕立て替えの際に、寸法を修正したり、娘さん用に寸法を変えて 着させたり、着物を大切に使い続ける知恵が生かされていました。

また、その時 擦れた八掛の上下を変えて擦れた部分を縫込みに隠したり 身頃の表裏・前後を替えて膝で擦れた部分を下前に持っていったり 落ちない汚れを目立たない箇所に持って行ったりと工夫もしました。

これは、織りの着物の場合ですので可能になります。

最近では、客用回数も全体的に少なくなってきて、ボロボロになるまで お召しいただいて、洗い張りをお預かりするケースも少なくなりました。

でも、たまにそう云った洗い張りをお預かりした時には、

「ヨクゾ、ここまでお召し頂きました!着物もきっと喜んでいるで しょう。また新品みたいにしますから、永く可愛がってやってくださいネ」

・・・という気持ちになります。

使い倒して、着倒してあげるのが、普段着の着物への礼儀かもしれません。

着物は、れっきとしたエコロジー商品なんです。

ライフスタイルの中にエコロジーの要素が意識して取り入れ られるようになってきましたが、実は江戸時代からエコロジーの 考え方は着物の世界では当たり前だったんですネ

頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


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