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浅野屋丁稚塾
番頭への道「その24 裄と後巾」

今回も、仕立ての寸法に関するお話です。


日本人の体型が昔と比べて変わってきています。


  • :首の付け根のぐりぐりから斜め45度に伸ばした
    手首のぐりぐりまでの寸法

    これは、肩巾と袖巾の合計の寸法になります。
    昔の標準寸法は1尺6寸5分・・・62.5cm

    肩巾8寸 袖巾8寸5分という振り分けです。

    通常袖巾を肩巾より5分ほど長くします。これは、当然の結果として 肩巾より手の方が長いから・・・・なんですが、最近は裄が長い方が 多く、この細工が出来ない場合も多くなりました。

    生地の標準的な巾は9寸5分(36cm)これを仕立てる場合には最低左右 3分づつの縫込みが必要になります。

    そうすると、チョッとごまかしても袖巾9寸が目一杯となります。 (勿論、生地巾の1尺とか1尺3分とかの反物であれば、多少融通が 利くのですが・・・)

    裄 1尺8寸の場合(最近この寸法が多いんですが・・)肩巾は袖巾を 差し引いた9寸が必要になります。


  • 後巾
    :着物の裾で計った背縫いと脇縫いの間の寸法

    前巾とも関連しますが、ヒップの寸法に合わせて決まるものです。
    昔の後巾の標準寸法は7寸5分・・・28.5cm

    狭すぎると前あわせが不足しますし、広すぎると下前で折り返し着付けを することになります。

    広すぎる場合は、背縫いが中心に来なくなったり、歩くのに不自由を 感じる事もございます。

    スレンダーな方は、身幅は当然狭くなります。




ここまでが、前振りです。

肩巾と後巾は後身頃の一番上と一番下の巾になるんです。
この、巾の違いは着物のためには1寸位迄がいいとされています。

これは、着物の場合衿肩明き以外は切込みを入れない仕立てとなっている為 無理な仕立てをすると、生地に負担がかかり仕立てが崩れたりいたします。

で、ここで問題なのが 手の長くて細身の方・・・

裄を長く取りたいから、肩巾を一杯に長くすると後巾まで広くなります。
後巾をタイトにすると、今度は裄が出ません。

仕立て寸法を決める場合、この二つの相反する命題の妥協点を探ることに なります。

大概の場合、裄を優先にいたします。

袖部分だけが広幅で身頃は並幅の反物があればと何度思ったことか!

修行時代に男物のウールのアンサンブルで一度だけお目にかかった事があります。

でも、女性用の色柄物ではロッドの関係やら、染め上がりが違ってくる為 いまだ、お目にかかった事がございません。

なにより、すっごく高く付いちゃいそうなんで・・・

また、仮縫いしてある「絵羽物」と呼ばれる振袖・留袖・訪問着などは もっと性質が悪くなります。

縫い目を跨いで柄が合うように染め付けられていますから、白生地から 別染めする以外、身幅はほぼ決められた寸法でしか仕立てが出来ません。

通常の身幅は前述のように前巾6寸・後巾7寸5分です。
細い方は、本当はもっと狭くしたいところですが、絵羽物の場合は 前巾6寸5分・後巾8寸ぐらいに染め付けてあるのが多いんです。

「大は小を兼ねる!」ということです。

成人式・お正月 晴れ着姿の若い方を見たら、後姿に注目してみてください。

おはしょりから下の部分の背縫いの位置!

細身の方は、向って右に縫い目が寄っているはず。

背から、裾まで縫い目の真直ぐ揃っている振袖姿のお嬢さんは・・・グラマーな方の筈です。

で、呉服屋はと言いますと、この裄と後巾の相反する要因の折り合いを 付けなければなりません。

お客様へのインフォームドコンセントが必要になってきます。
お医者さんみたいでしょ!

頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


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