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浅野屋丁稚塾
番頭への道「その22 仕立て寸法の限界」

今回は、思うところがありまして、仕立て寸法と反物の要尺についての お勉強です。


折角お気に召して頂いた反物も着物としてキチッと着れなければ、意味 がありません。

つまり、身長・裄などの寸法を承ってそれがお買上いただいた反物で 仕立てることが出来るか否か、その時に見積もりが出来なければ ならないということです。

スイマセンがここからは鯨尺表記になります。
因みに、鯨尺の1尺は37.9cm

裁ち切り寸法というのがあります。
仕立て上がりの寸法から逆算するもので、縫いしろの部分を考慮に入れて 仕立て上がり寸法にいくらか加えた寸法で見積もります。

袖丈の場合は仕立て上がり寸法 +1寸
身丈の場合は同じく仕立て上がりの肩からの寸法 +1寸5分
衿衽(えり・おくみ)は身丈の裁ち切り寸法 −5寸
となります。

ですから、袖丈1尺3寸・身丈4尺3寸で仕立て上げる場合は

袖丈(裁ち切り)1尺4寸×4=5尺6寸
身丈(裁ち切り)4尺4寸5分×4=1丈7尺8寸
衿衽(裁ち切り)3尺9寸5分×2=7尺9寸     (+
──────────────────────
総尺 3丈1尺3寸=約11m86cm の長さが反物に求められます。

一般に3丈2尺あれば、反物としては正反として業界で認められています。

染物は、最近は3丈2尺よりかなり長く織られた白生地に染められること が多くなりましたので、少々上背の高い方でもそこそこ対応できます。

しかしながら、絣・縞などの織物のきものは3丈2尺ギリギリで織り上げ られている物もまだまだ多く、上背のある方にとっては正直厳しい場合 も出てきます。

身丈を長く取りたい方は、バランス的に袖丈も長くしたいことになりま すから、大変です。

大島・結城などは、証紙の貼ってある部分を剥がしてギリギリまで使う ことなども場合によってはあります。

それでは、正反の長さの最低条件3丈2尺で、どれくらいの身長の方まで 対応できるのかといいますと、

 身丈の出来上がり寸法をαとすると・・・

(1尺3寸+1寸)×4+(α+1寸5分)×4+(α+1寸5分−5寸)×2=3丈2尺

の方程式の解を求めると出てきます。

袖丈を1尺3寸で見積もると、身丈は肩から4尺4寸1分
身丈の標準は身長+1寸ですから袖丈1尺3寸で163cmまでの身長の方と いうことになります。

裄は、生地の巾の問題になりますから生地巾−6分が袖巾として出来る 最大です。

まだまだ、上背のある方にとっては生地のサイズの問題がネックに なってしまっているのが呉服業界の内情です。

呉服屋としては、産地に要望すると共に幅広・丈長の織りの着尺を 目敏く見つける努力をしなければなりません。

そして、方程式を解くことも・・・

頑張ってください!・・・目指せ 大番頭!!


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