そんなある日、私たちの事を マスクとゴム手袋をつけ ゴムの長靴をはいた何人かの女の人が見に来た。
ひとりの女の人は大きなカメラを持って「うわーひどい、あー死んでいる!」とか
「おーかわいそう いったい何の犬種だろう」とぶつぶついいながら写真を撮って行った。
マスクの一人は泣いていた。めがねをかけていた人は 冷静な目で私たちを見ていったの。

2〜3日過ぎると私たちの飼い主のおじいさんが珍しく新聞紙を糞尿だらけの小屋に敷いた。
そして珍しく桶に水を入れてくれた。
そしたら何人かの男の人達がやって来た。ビデオカメラでわたしたちをずーっと撮っている。
私たちの飼い主のおじいさんもマイクでインタビューされている。
みんな皮膚病ではないかと聞かれたおじいさんは 「そう見えるだけ 冬になると直る。」って。
「臭くないのですか?」と聞かれ 「あんた匂うかね、おら何にも匂わんけどな」って答えていた。
おばあさんもインタビューされていた。
「この犬達のことは可愛くないのですか?みな苦しそうに見えますが。」
おばあさんは、 「可愛いいはずがあるわけないじゃないか、あんた。
わたしゃこんな犬達に何も愛情なんてあるものか。
知り合いのペットショップが使い物にならなくなったって 勝手にうちに連れてくるのだもの。」

この会話はその日のうちに小宮悦子さんのニュース(スーパーJ)で全国に放映されてしまいました。
あくる日 朝早くからいろいろなテレビ局がやって来た。新聞社の人もたくさん来た。
あのマスクとゴム手袋、めがね、カメラの人たちも来ていた。 又車に乗ってドライブした。
おじいさんが私たちを飼う事を断念したのだ。
でもかわいそうにお腹に赤ちゃんの居る4匹はおじいさん お金になるからと言って手放さなっかった。
こんどはどこに行くのだろう。

もうあまり考える気力はなくなっていた。 そのころの私は 身も心もぼろぼろだったの。
足を一歩前へ出すのもつらく痛かゆい身体をかく気力すらなくなっていた。
目線はいつも下より上にはいかなかった。
顔を上に向けるということは希望があるという事だってその時解ったの。 着いた所は 保健所だった。
「あーこれでみんなガス室送りとなるわけだ」

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