最後の気力をふりしぼり やさしかった故郷のおかあさん おとうさん よく追いかけっこをした
うさぎさんやりすさん のこと、 そしてドックショーでチャンピオンに輝いた時のたくさんの拍手と
栄光のことなど思い出したの。でも涙はでなかったわ。

もうどうでも良かったのね。早く楽になりたかった。
次の日またあのマスクとゴム手袋の女の人たちがやって来た。
これで最後と覚悟を決めたのだけれど なにか様子が違った。
いきなりわたしたち全員をシャンプーし始めたの。
シャンプーが終わるとこんどは伸びた爪を切ってくれた。そして仕上げは薬欲。
あまり気持ちがいいので お湯につかったまま長い時間眠ってしまったの。

それからは この人たち 何回も来て私たちをシャンプーしてくれた。
秋で天気の良い日が多かったので シャンプー後はみんな日向で ぐうぐう寝た。
保健所の人たちも たくさんの私たち御一行をかかえ 毎日てんてこまいだったみたい。
どうやら ガス室送りではなさそうな予感がした。
毎日のように ドックフード お菓子 毛布 薬用シャンプー、新品の首輪 リード等が寄付されてきたの。
そして皮膚病の特効薬。これでほとんどの仲間達の皮膚病は完治した。

小型犬を除いて他の仲間達は皆まとめておおきなサークルに入れてくれた。
ごはんは懐かしいつぶつぶのドックフードが出てきた。お腹いっぱい食べられた。
きれいなお水も飲み放題。でも問題が起こったの。

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