何年もたって私は、年をとって赤ちゃんを生む数が3頭位に減ってきたの。
ドックショーの時は たくさん走れたのに、 この間は 何年間も散歩に誰も連れていってくれなかった。
せまい伸びも出来ないおりの中で これからもずっと暮らすのかなーってお先真っ暗だったの。
動きがとれないので身体はいたいし いつも遊びたくって 走りたくって仕方なかったわ。

その時良く見た夢は イギリスの広い芝生の上でパパ ママや兄弟達と走り回っていた夢。
そしてやさしかった人間のお母さんの いいにおい。
日本ってひどい国だなと思った。だってこんなに苦しくても だれもたすけてくれない。
「あのお金持ちそうな人はどうしちゃったのかなー? 幸せってこのことなの…?
イギリスのおかあさんに会いたいよー。みんなどうしているのかなー。
私が こんな生活していること知っているのかなー。
どうして犬は人間に従わないといけないの? 人間の言う事を聞かないと生きてゆけないから?」……。
こんなことばかりいつも考えていたの。

そんな毎日の中でもたまに 交配と言って赤ちゃんをつくる時 おりの外へ出してくれる時があったの。
交配自体は気持ち悪くてデリカシーのない雄犬が私に触るので いやでたまらなかった。
でも狭い折から出る事が出来る、それだけが唯一の楽しみで ついついはしゃいでしまったの。
そしたら人間におもいっきり顔をたたかれて 右目が見えなくなっちゃった。
とても痛かったけれど ごはんをくれる人間だから 好きになるしかなかった。次の日にはしっぽふっちゃうの。
苦しい生活と 悲しい出産を繰り返しているうちに 人間たちが また何やら相談していたの。
「もう使い物にならないな。」って。

また 車にのった。狭い檻の生活ともこれでさよならだと思った。どこに行くのだろう?
もしかしたら故郷のお母さんの所に帰れるのかな?  どきどき…した。

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