TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2022/07/27

マルコ モンターリ氏 Mr. Marco Montali

サルデーニャ随一のヴェルメンティーノ産地として唯一のDOCGに認定される「ガッルーラ地区」で品種の個性を追求!革新的な高品質ワイン生産で『Vinitaly』年間最優秀ワイナリーに輝いた「シッドゥーラ」突撃インタビュー

トップ画
シッドゥーラは、2008年、サルデーニャに情熱を注ぐ二人の創業者によって設立された新進気鋭のワイナリーです。同州唯一のDOCGヴェルメンティーノ ディ ガッルーラに拠点を置き、「ガッルーラの宝」と話す秀逸なヴェルメンティーノを生産。地域に根差し、若手を信頼して成長させるという方針を掲げるワイナリーは、スタッフの90%をサルデーニャ人が占め、栽培や醸造には若きプロフェッショナルを配備しています。最新設備への投資によって躍進を遂げ、2021年に行われた『Vinitaly』では年間最優秀ワイナリーを受賞しました。今回は、彼らの象徴である、見事に造り分けられた3種のヴェルメンティーノと、2種のカンノナウについて、輸出マネージャーのマルコ モンターリ氏にオンラインでお話を聞きました。

卓越したテロワールの多大な恩恵を受ける「ガッルーラの宝」
サルデーニャ唯一のDOCG「ガッルーラ地区」で造る秀逸なヴェルメンティーノ

緑豊かな畑近年、イタリアをはじめ世界各国で、その品質や設備投資などによる成長で注目を浴びる、イタリア半島西方に位置するサルデーニャ州。シチリアに次いで2番目に大きい島です。古代からワイン醸造が行われていたとされるほど同州のワイン造りの歴史は古く、ヴェルメンティーノ、カンノナウ、カリニャーノ、モニカなど様々な土着品種が存在しています。地中海に囲まれた島という独特のテロワールを活かし、島各地で独自のワインが生産されています。「サルデーニャは、トスカーナやピエモンテのように多くの生産エリアがあり、スタイルも多種多様です」と輸出マネージャーのマルコ モンターリ氏。

その中でも、島北部にあるガッルーラ地区で造られる唯一のDOCG「ヴェルメンティーノ ディ ガッルーラ」は、秀逸なヴェルメンティーノが生まれるエリアとして知られています。シッドゥーラがワイン生産を行うのは、同地区のやや北部、ルオーゴサント。海から車で20分の距離にありながら、樹が生い茂る森林に囲まれた渓谷です。モンターリ氏に、拠点を置くエリアについて話していただきました。

地図「ヴェルメンティーノの可能性を一番引き出せるのはガッルーラ」
「ワイナリーは、サルデーニャ北東部ガッルーラ地区の渓谷に位置しています。シッドゥーラとは渓谷の名前ですが、馬の鞍、秘宝という意味もあります。創業者と土地の強い絆が結ばれたガッルーラの宝なのです。ヴェルメンティーノ ディ ガッルーラは、複雑性と力強さを持ったワインです。エキゾチックな果実、南国果実、地中海のハーブの香り、力強くフレッシュな味わいが特徴です。ヴェルメンティーノという品種の可能性を一番引き出せるのは、この土地、ガッルーラだと思っています。そのエリアでワイン生産を行えることは、名誉なことですし、責任のあることだと思っています。

敷地は220ヘクタール、そのうち40ヘクタールがブドウ畑です。この地域はブドウ栽培に適したミクロクリマと土壌があります。海にも近く北部にあることから、マエストラーレ(北西から吹く風)が吹きます。それによりブドウが病気になりにくいんです。畑の裏には大きな花崗岩の山があり、畑は大小ある花崗岩、石灰分を多く含んだ砂で構成される痩せた土壌です。今、イタリア各地で干ばつが問題になっていますが、シッドゥーラ渓谷の深いところには水が溜まっているので、水不足に悩まされることがない恵まれた場所です」シッドゥーラ渓谷

創業者のヴィジョン、優秀スタッフによる栽培と醸造、最新テクノロジーの導入により、
イタリアのトップ生産者の仲間入りを果たした革新的ワイナリー「シッドゥーラ」

シッドゥーラは、ドイツ人実業家ナタン ゴッテスディナー氏と、イタリア人実業家マッシモ ルッジェーロ氏によって2008年に設立されました。ゴッテスディナー氏は、表舞台には一切出てこないファッション業界で名の知れた人物。観光で訪れたサルデーニャに魅せられ、ドイツから居を移してきました。40年以上住み続け、今では土地も人柄も知り尽くしています。サルデーニャ人であるルッジェーロ氏は、建設会社のキャリアを経て、ワイナリーオーナーという自身の夢を実現させました。シッドゥーラの歴史は、サルデーニャに愛情と情熱を捧げる二人のコラボレーションにより始まったのです。

地域に根差し、若きプロフェッショナルを信頼して成長させるワイン造り
若手スタッフ地元サルデーニャと強い絆を結ぶワイナリーは、「地域に根差し、若者を信頼して成長させるワイン造り」を方針に掲げています。スタッフはイタリア人が99%、サルデーニャ人が90%を占め、栽培や醸造には若きプロフェッショナルを配備しています。モンターリ氏に、その有望な若手スタッフを紹介していただきました。

「アグロノモ(栽培責任者)のルカ ヴィタレッティ。彼はトスカーナ出身、ピサ大学を卒業し、アンティノリで仕事をしていました。そして、エノロゴ(醸造責任者)のディーノ ディーニ。彼も同じくトスカーナ出身でピサ大学を卒業しています。カマルカンダ(ガヤ)やサンターディで経験を積みました。リーダー的存在で、率先して意見を述べてワイナリーを引っ張ってくれています。二人とも現在43歳で、非常に経験値があり優秀な人材です」
※ディーノ ディーニ氏(上)、ルカ ヴィタレッティ氏(下)

品質向上が目覚ましいサルデーニャワインの背景には、最新設備への投資があります。シッドゥーラもその例外ではなく、テクノロジーの投資を多分に行ってきました。引き続き、モンターリ氏に、導入した設備やシステムについて話していただきました。


ブドウへの悪影響を事前に防ぐ気象予測システム
地中に設置されたセンサーで水が流れる灌漑パイプライン

モンターリ氏「サルデーニャワインの品質は近年向上していますが、それはテクノロジーへの投資がしっかりできているからです。私たちも、投資により高品質ワインを生むワイナリーの一つです。導入した最新システムは、大きく分けて二つあります。一つは、気象予測システムです。畑に設置された機械が天候の変化を読み取り、畑の中から周辺までデータを取得します。その結果、害虫や悪天候など、ブドウに悪影響をもたらすものを事前に防ぐことができます。

もう一つは、灌漑パイプラインです。渓谷の深くに溜まっている水を汲み上げるための湖をワイナリーの中に作りました。そこにパイプラインを引き、灌漑を行っています。地中にセンサーが設置されていて、本当に水分が必要な時だけ、開閉して水が流れるようになっています。

気象予測システムこれらのシステムがうまく連携し、農業が一体となること(インテグレーション)がとても重要です。全ての最新設備が一貫して機能することにより、年間を通してブドウの健康状態を把握でき、化学薬品を使用せずに全ての畑仕事が手作業でできるのです」

サルデーニャに根差した経営陣のヴィジョン、優秀なスタッフによる栽培と醸造、最新テクノロジーの導入により、2008年創業時から躍進を遂げてきたシッドゥーラは、2021年に行われた『Vinitaly』で、年間最優秀ワイナリーを受賞。創業から13年でイタリアのトップ生産者の仲間入りを果たし、将来のサルデーニャを背負って立つ注目の造り手となったのです。

vinitaly2021

サルデーニャ随一の産地「ガッルーラ地区」で造り分ける品種の個性!
はっきりと違いを堪能できるヴェルメンティーノ&カンノナウ

明確に個性が異なるヴェルメンティーノ&カンノナウ
ワイナリーからリリースされる年間30万本のうちの半数以上を占める3種の「ヴェルメンティーノ ディ ガッルーラ」。二大看板の「スペーラ」「マイア」に加え、良年のみ造る「ベール」は、どれも見事に異なる個性が表現されています。カンノナウ100%で造られる赤ワイン2種「カンノナウ ディ サルデーニャ」も同様に、個性が異なる造り分けがされています。最後の3週間だけバリックに通して造られるエントリー赤「エーレマ」、10年以上の熟成力を秘めた上級キュヴェ「フォーラ」。「特徴が異なるワインの飲み比べは面白いですよ」と話すモンターリ氏に、ワインについて解説していただきました。

白3種イメージ僅かな熟成期間と畑の違いで生まれるボリューム感!
シッドゥーラの二枚看板「スペーラ」&「マイア」

「スペーラとマイアは、私たちを象徴する看板ワインです。2つとも醸造方法はほぼ同じですが、畑と熟成期間が異なります。スペーラは、飲みやすくフレッシュ&フルーティさを売りにしている一番若い白ワイン。食事との汎用性も高く、様々なシーンでお飲みいただけます。エントリーワインとして毎年、約15万本生産しています。マイアは、2.5haの単一畑で造られ、スペーラより少し熟成期間が長いです。これだけでも凝縮感や厚みの違いに気づくと思います。白身肉やリゾットと相性が良いです」

「スペーラ」&「マイア」とは一線を画す樽熟成ヴェルメンティーノ「ベール」
従来とは異なるアプローチで引き出された「ガッルーラの宝」の可能性!

「ベールは、伝統的なヴェルメンティーノとは別のアプローチで実験的に造られたものです。私たちが所有する区画の中で、向き、土壌、ミクロクリマすべてが最高の区画で造られています。7ヶ月のバリック熟成で、従来のヴェルメンティーノにはない複雑味があります。温度が低い時はバニラや木樽由来の香り。温度が上がるにつれて、熟した白い果実、スパイス、ハーブ、花の香りが現れます。グリルやローストしたチキン、ウサギを受け止められるストラクチャーがあります。なんといっても熟成チーズ、フォアグラ、トリュフにも合います。

(ベールを作ろうと思ったきっかけは? という問いに対して)
私たちはヴェルメンティーノというガッルーラ地区のテゾーロ(宝)を所有しています。その宝の可能性を示すために、最新テクノロジーを駆使し、高品質で他とは違うものを造りたかったんです。好みは分かれるかもしれませんが、長年評価されているので今もずっと造り続けています」

赤2種イメージ“サルデーニャ”の高貴な古代品種カンノナウで造る「エーレマ」&「フォーラ」
「エーレマとフォーラはどちらもカンノナウ100%で造るカンノナウ ディ サルデーニャです。フランスのグルナッシュ、スペインのガルナッチャなど起源に関しての論争はありますが、カンノナウはサルデーニャにとって重要かつ高貴な古代品種です。ガッルーラ地区でカンノナウの赤ワインを生産していることに誇りを持っています。

私たちのエントリー赤ワインであるエーレマは、発酵から熟成まで全てステンレスで行っていますが、最後の3週間だけバリックに通して造っています。サルデーニャのビーチに来ていただけたらわかりますが、このワインは、サルデーニャの浜辺で感じる地中海的な香りがするんです。ワイナリーの周りを自転車で走っている時に感じるんです(笑)。スペーラの次に売れているワインで、約4万本生産しています。

フォーラは、厳しい選果を経たカンノナウで造られています。エーレマとの大きな違いは、2000~3000Lの樽で2年熟成していることです。10年ほどの熟成ポテンシャルを持っています。赤系果実、リコリス、タバコなどのスパイス、サルデーニャの香り、豊かな果実味があります。サルデーニャの郷土料理である豚の丸焼きや羊に最適です。ラザニアや肉全般にもいいですし、チーズとの相性は抜群です」

生産者さん

シッドゥーラ

シッドゥーラのエントリーヴェルメンティーノ!
南国果実の香りにミネラル感たっぷりの風味

ブドウは9月初旬に手摘み。除梗後、ブドウはソフトプレスされ、一番搾りのモストと一緒に数時間マセレーション。発酵は、ステンレスタンクで12-15日間。熟成はシュールリーでステンレスタンクにて数ヶ月行います。最低1ヶ月は瓶内熟成。繊細でエレガントでありながら力強さも持ち合わせるワインです。 
スペーラ2020

試飲
コメント

エッジが黄金色に光る麦わら色。リッチな南国果実やフレッシュな果実の香り。花の印象もあり、複雑なアロマです。口に含むと、香り同様にリッチでコクのある味わいがあります。マンゴーやメロンなど様々なフルーツが混ざり合い、ジューシーでミネラリーな印象です。

シッドゥーラ

厳選ブドウで造るシッドゥーラを象徴する単一畑ヴェルメンティーノ

除梗後、ブドウはソフトプレスされ、一番搾りのモストと一緒に数時間後マセレーションされます。発酵は、13-15度のステンレスタンクで12-15日間。熟成はシュールリーでステンレスタンクにて数ヶ月行います。最低1ヶ月は瓶内熟成。黄色いフルーツや白い花が特徴のとても調和のとれたデリケートな香りで、フレッシュでフルーティな味わい。余韻にはほろ苦いアーモンドが残ります。
マイア ヴェルメンティーノ ディ ガッルーラ スペリオーレ2020

試飲
コメント

濃い麦わら色。マスク越しでも伝わる力強い香り。エントリーワインのスペーラと比較すると、凝縮感、ジューシーさ、複雑さ、厚みが増している印象です。口に含むと、際立つ厚みとミネラル感にすぐ気づきます。酸が口の中で横に広がっていきます。全体的にボリューミーで、若干の苦みを感じる長い余韻があります。

シッドゥーラ

品種のイメージを覆す逸品!
最高区画で造るバリック熟成ヴェルメンティーノ

除梗後、ブドウはソフトプレスされ、一番搾りのモストと一緒に数時間後マセレーションされます。発酵は、15-18度のフランス産のオーク小樽で10-12日間。熟成はアリエ産のオーク新バリックにてシュールリーで8ヶ月行います。最低1ヶ月は瓶内熟成。翌年の夏から秋にかけて瓶詰め。花やタイム、蜂蜜などにトースト香やバター、バニラが混ざる複雑味のある香り。素晴らしいミネラル感が特徴のエレガントでスタイリッシュなフルボディ。余韻にもアカシアの蜂蜜やバニラが残ります。
ベール2015

試飲
コメント

黄金色。圧倒されるほど力強い香り。熟した果実、潰した花、ヴァニラ、バター、ハチミツなど非常に複雑です。味わいは、香り同様の果実、ハチミツ、スパイシーな印象です。ワインの温度が高くなるにつれて、より複雑味が増していきます。少し濃い味付けの白身肉のグリルと相性が良さそうだと感じました。

シッドゥーラ

飲み心地の良さが光るシッドゥーラのエントリーカンノナウ
「サルデーニャの松林を感じる地中海的な香り」

除梗後、ブドウはソフトプレスされ、一番搾りのモストと一緒に24-26度で10-15日マセレーションされます。ステンレスタンクでアルコール発酵とマロラクティック発酵を行います。熟成は翌年の3月まで。瓶内熟成は最低1ヶ月。ワイルドベリーやチェリー、グリーンのノートを伴う繊細な香り。エレガントでフレッシュな果実味溢れる味わい。タンニンは柔らかく、非常に飲み心地のよいワインです。
エーレマ2020

試飲
コメント

ルビー色。赤系果実、花、スパイシーが漂う心地よい香り。砂糖漬け果実の甘やかさも感じます。口当たりはフレッシュでタンニンは細やか。飲み心地が良く、華やかでスパイシーな余韻が持続します。

シッドゥーラ

長期熟成力を秘めたカンノナウの上級キュヴェ
優れたバランスと果実味豊かな長い余韻

ブドウは9月後半から10月にかけて手摘み。除梗後、ブドウはソフトプレスされ、一番搾りのモストと一緒に24-26℃で10-15日マセレーションされる。ステンレスタンクでアルコール発酵とマロラクティック発酵が行われ、熟成は翌年の6月までステンレスタンクとミドルサイズの樽にて熟成。瓶内熟成は最低1ヶ月。
フォーラ2018

試飲
コメント

ルビー色。熟成した赤系果実、スパイスが香る複雑なアロマ。口当たりはソフトで、凝縮果実とスパイシーな味わいが口中を覆います。バランスにも優れていて、心地よい余韻が続きます。

インタビューを終えて

今回試飲したのはヴェルメンティーノ ディ ガッルーラ3種、カンノナウ ディ サルデーニャ2種の計5本でした。どれも非常にクリーンでピュアな味わいです。親しみがありながらも、力強さ、複雑さ、奥深さがあり、それでいて綺麗。そして、個性がそれぞれ明確に異なります。1つのディナーコースを、その5本で賄えてしまうのではないか、と思うほどです。

二大看板である「スペーラ」と「マイア」の違いも大変興味深かったです。醸造方法はほぼ同じで、畑と熟成期間が少し違うだけで、ここまで厚みに差が生まれるのかと驚きました。数日後に再度試飲したのですが、「ヴェルメンティーノはもちろん、このカンノナウは別格」という言葉も聞こえてくるなど、シッドゥーラのクオリティの高さを改めて実感しました。

大きく「S」の字が描かれた特徴的なラベルも印象に残っています。この「S」は、シッドゥーラとサルデーニャの頭文字を取っているのだとか。輸出マネージャーのモンターリさんが「かなりマーケティングに力を入れています」と話すように、ラベルデザインを全て統一し、わかりやすいボトルにすることでシッドゥーラのワインだと覚えてもらえるようにしているそうです。

モンターリさんはインタビュー後、日本のマーケットや日本で好まれるワインを聞いてこられ、日本のワイン事情に興味を持っているようでした。『Vinitaly』で年間最優秀ワイナリーに選出されてもなお、ワイン生産者として更に拡大していくんだという熱をひしひしと感じることができました。

サルデーニャで躍進を遂げ、将来のサルデーニャを背負って立つ注目の造り手「シッドゥーラ」を、ぜひお楽しみください。
生産者さんと

20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています。
当サイトでは20歳未満の方への酒類の販売は行っておりません。