TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2023/10/25

ルカ バッカレッリ氏 Mr. Luca Baccarelli

ウンブリア州トーディの独自クローンで表現するエレガントサンジョヴェーゼ!飲み心地の良い清らかな味わいを追求するオーガニック生産者「ロッカフィオーレ」突撃インタビュー

ウンブリア州の丘陵地トーディに拠点を置く家族経営ワイナリー「ロッカフィオーレ」。自然環境に配慮したオーガニック栽培をはじめとするサステナビリティに注力し、『ガンベロロッソ』イタリア最優秀エコワイナリー賞受賞の実績を持つ造り手です。「トーディの地ブドウを使い、フレッシュなワインを造ること」をモットーに掲げ、アルト アディジェ出身の醸造家とともに造り上げた清らかでエレガントなワインを生み出しています。理想に掲げるのは、キャンティクラシコ地区ラッダに拠点を置く、あの偉大な造り手なのだとか。今回はそんな話も交えながら、4年ぶりに再会した2代目当主ルカ バッカレッリ氏をお迎えしてお話を聞きました。

緑豊かなウンブリア州で取り組む環境に配慮したブドウ造り
創業者のビジョン「繊細かつ果実味あるワイン」を実現

オーガニック栽培やバイオマス燃料の使用などサステナビリティに注力
――ボンジョルノ。4年前にお会いして以来ですね。改めてワイナリーやワインについて解説をお願いいたします。

 ロッカフィオーレは、ウンブリア州の小さな街トーディに拠点を置くワイナリーです。ウンブリアはイタリアの中心部、緑のハートと呼ばれる緑豊かな土地を有する州です。カンティーナ周辺も大自然に囲まれていて、近くにはマルモレ(※)という有名な滝があります。
(※)落差165mのヨーロッパ最大級の滝


その自然溢れる環境に配慮したオーガニック栽培を行い、バイオマス燃料の使用や瓶の軽量化に取り組むなど、基本理念にサステナビリティを掲げています。太陽光パネルを採用するリーダーカンパニーでもあります。カンティーナ自体も、景観を損なわないウンブリアの自然に馴染む建造物です。

ロッカフィオーレには、ブドウ畑以外にオリーブ畑やチンタセネーゼ豚の農場があり、レストラン併設のスパリゾートで大自然を堪能していただけます。豚の農場名は、ずばり「ジュラシックポーク」です(笑)。


「本拠地トーディの地ブドウからワインを造る」という信念のもと創業
 ワイナリーを創設した経緯は、「本拠地トーディの地ブドウを使ったワインを造る」という信念からでした。フレッシュな酸と飲み心地の良いワインを造ることをモットーにしています。ウンブリアと言えば、モンテファルコ サグランティーノという力強い赤ワインが有名です。しかし、私たちが造るワインはもう少し繊細で、柔らかくキリっとした酸が特徴です。

「本当にサンジョヴェーゼ?」と思うほど軽やかなスタイルを確立
 例えば、エントリーラインの赤ワイン「ロッソ メログラーノ」は、トレンティーノ アルト アディジェ州の土着品種スキアーヴァを想起させる、軽やかで飲み心地の良い味わいが表現されています。「本当にサンジョヴェーゼ?」と思ってしまうほどです。


その味わいの生みの親は、(創業者である)私の父と醸造家アルトマン ドナです。スキアーヴァが大好きな私の父は、その飲み疲れしない味わいをウンブリアで表現するべく、アルト アディジェ出身のアルトマンを招へいしました。結果、柔らかくて繊細ながらも果実味のあるワインを造ることに成功しました。アルトマンのおかげで父の願いが叶い、ロッカフィオーレのスタイルが確立したのです。

――アルトマンさんは、今もロッカフィオーレで活躍されているのですか?

 実は最近私たちの専属でなくなりました。友情関係はまだ続いていて、いまだに連絡を取り合っています。現在は自身が所有するワイナリーで活躍しています。ロッカフィオーレが造るワインの道筋を示してくれたのは、間違いなく彼です。その道筋は今も変わっていませんし、常に品質向上を目指して私たちはワインを造っています。

地元トーディだけに根付くクローンの独自性
近年導入したアンフォラによりさらに品質が向上

――畑やブドウ品種について教えてください。

 畑の面積は15ヘクタール、平均標高は200~230メートル、全て北向きです。温暖なエリアですが、周囲にそびえ立つ山から冷涼な風が吹きます。暑い季節でも風通しが良く、病害に強い畑です。ブドウの生産割合は白ブドウ53%、黒ブドウ47%。代表的な品種はグレケット ディ トーディとサンジョヴェーゼです。他には、トレッビアーノ スポレティーノ、サグランティーノ、モスカート ジャッロがあります。


トーディにしか根付かないグレケット ディ トーディ「G5クローン」
 私たちが栽培するグレケット ディ トーディは、トーディにしかないG5というクローンです。二つの相反する特徴を持っています。私の解釈ですが、イギリスの俳優ケーリー グラントのようなエレガントさ、画家サルバドール ダリのようなインパクト感を兼ね備えています。

ブルネッロに似通ったバイオタイプ「トーディ」のサンジョヴェーゼ
 トスカーナが銘醸地として有名なサンジョヴェーゼですが、実はウンブリアでも一般的に栽培されています。ジェームズ ボンドのエレガンス&フィネス、ネルソン マンデラの調和が表現されています。私たちのサンジョヴェーゼのDNAは、ブルネッロに似通った「トーディ」というバイオタイプです。

先人たちが残してくれたこの土地で、それらの地ブドウが持つ本来のアイデンティティが出るようなワイン造りを重視しています。そのためには、リスクを伴う実験や革新も必要不可欠です。


近年導入したアンフォラにより緻密な酸が引き出されて品質が向上
 醸造にはステンレスタンク、樽(大樽、小樽)、アンフォラの3種類の容器を使用します。特にアンフォラは2018年から導入したもので、ワインに新しい変化を与えてくれました。通常のアンフォラよりも粘土の気泡が非常に密で、まるでガラスタンクのように酸素の透過が遅くゆっくりと酸化を促してくれます。

――どのワインに使用していますか? また、アンフォラを導入したきっかけを教えてください。

 フィオルフィオーレとラルトロ ビアンコ(白ワイン2種)に使用しています。樹齢35年の古木から造るフィオルフィオーレの場合は、複雑味はあるがフレッシュさに欠けるという問題がありました。そんな時、たまたまトレンティーノのタヴァ社製のアンフォラと出会い、その問題を解決するためにトライしてみたのです。その結果、私たちが表現したかったフレッシュさ、緻密な酸をもっと引き出せるようになりました。

ウンブリアの清らかさとエレガンスを表現
~あの偉大な造り手を追い求めて~

理想のサンジョヴェーゼはキャンティクラシコ地区ラッダ
 私が考える理想のサンジョヴェーゼはキャンティクラシコ地区ラッダ産のものです。ラッダのサンジョヴェーゼが大好きで、その味わいに少しでも近づけるように努力しています。ブルネッロに近いDNAということもあり、その良さも引き出していきたいと考えています。

「ロッソ メログラーノはピアン デル チャンポーロの弟」
「イル ロッカフィオーレはモンテヴェルティーネの弟」

――なるほど。ラッダということは、「モンテヴェルティーネ」ですね?

 「ロッソ メログラーノはピアン デル チャンポーロの弟で、イル ロッカフィオーレはモンテヴェルティーネの弟だね」と冗談を言ったことがあります(笑)。彼らと比較すること自体おこがましいですが、目指したいワインですね。

ロッソ メログラーノ(左)、イル ロッカフィオーレ(右)

価格以上の品質の高さ!
全てのワインが一貫してクリーンでエレガントな味わい

――すごいクリーンな味わいで、全てのワインに一貫性があります。イル ロッカフィオーレの品質とその価格に驚きました。

 確かに他社と比べるとお手頃かもしれないですね。コストパフォーマンスは今後も大事にしたい要素の一つです。ロッカフィオーレのワインは、特別な日のワインというよりは、日常のテーブルワインの延長として考えています。

私たちの哲学やオリジナリティである、ウンブリア州トーディの特質を最大限に引き出したワインを感じ取っていただきたいです。

緻密な酸とミネラルが際立つワイナリーの名刺代わりとなるエントリー白

バッカレッリ氏:
「平均樹齢15年の若いグレケット ディ トーディを100%使用した白ワインです。発酵、熟成ともにステンレスタンクを使用。エントリーラインの名刺代わりとなる白ワインです。フレッシュで緻密な酸、ミネラル、塩味が感じられます。G5というクローンで造られ、私たちのグレケット ディ トーディの特質とオリジナリティが現れています。コスト的にもデイリーにピッタリだと思います。モッツァレッラなどのフレッシュなチーズ、海鮮パスタ、野菜料理に最適です」
ビアンコ フィオルダリーゾ

試飲
コメント

輝く麦わら色。洋ナシなどの白い果実、ミネラル感、僅かに黄色い果実を感じる華やかな香り。口に含むと鋭く綺麗な酸が際立ちますが柔らかさもあり、香りで感じた果実味やミネラル感が調和しています。アタックから余韻まで綺麗な酸が長く持続します。

瑞々しさ、旨味、クリーミーさが融合した上級の単一畑グレケット

バッカレッリ氏:
「フィオルフィオーレ専用の単一畑のグレケット ディ トーディ100%で造られています。北西向きの畑です。自社畑の中では最も古く1990年に植樹したものです。80%がスラヴォニア産オーク樽、20%がアンフォラを用いており、合計12ヶ月熟成しています。樽由来のクリーミーで柔らかい口当たり、アンフォラ由来の生き生きとした瑞々しさとクリスピーさ、シュールリー由来の旨味がしっかり現れています。特に私が表現したいフレッシュな酸を、アンフォラによって綺麗に表現できたと思います」
フィオルフィオーレ

試飲
コメント

濃い麦わら色。凝縮した黄色い果実、ミネラル、白胡椒の香り。口当たりは繊細さと柔らかさがありながら、ぎっしり芯の詰まった果実感があります。時間が経つにつれ樽のニュアンスと柑橘の皮の苦みが現れ、果実味と溶け合います。

優れた骨格とフレッシュさを兼ね備えたアンフォラ熟成白

バッカレッリ氏:
「トレッビアーノ スポレティーノ100%で造る白ワインです。アンフォラで12ヶ月熟成しています。綺麗な酸、生き生きとした印象をワインに出したかったので、ステンレスではなくアンフォラのみ使用しています。植樹は2016年でまだまだ若く、初ヴィンテージは2020年です。生産本数もまだ少なく、2500本のみです。カルボナーラやカーチョエペペ、ウサギや鶏などの白身肉と合わせやすいです。日本料理に合わせるとしたら、私が大好きな餃子とピッタリです」
ラルトロ ビアンコ ウンブリア トレッビアーノ

試飲
コメント

黄金色。パイナップルなどの南国果実、レモン、ミネラル、白胡椒、白い果実と複雑な香りが広がります。後からアプリコットのような甘やかな果実も現れます。非常に柔らかい口当たりと鋭い酸に、凝縮果実や樽のニュアンスが混ざり合う骨格に優れた味わい。

フレッシュ果実とミネラル感溢れるサンジョヴェーゼ100%ロゼ

バッカレッリ氏:
「サンジョヴェーゼ100%で造る、ロッカフィオーレ唯一のロゼワインです。3~4時間のスキンコンタクトの後、ステンレスタンクで発酵と熟成を行います。サンジョヴェーゼの若々しさ、塩味、ミネラルを前面に出したワインに仕上がっています。品種特有の香り、ストラクチャー、タンニンも感じます。味付けの濃い料理、チーズに合わせられます」
ロザート

試飲
コメント

輝く淡い玉ねぎの皮色。赤い果実とミネラルを感じると華やかな香り。他のワインに共通して鋭い酸と柔らかい口当たりがあり、ジューシーな赤い果実の味わい。何か食事と合わせたくなるような酸が特徴的です。

エレガントな果実と酸が持続する飲み心地の良いサンジョヴェーゼ

バッカレッリ氏:
「ロッソ メログラーノは、父の夢が詰まっているワインです。父は北イタリアのスキアーヴァ種が大好きで、そのようなワインをウンブリアで造りたいという背景から生まれました。スキンコンタクトを6~7日間行い、ステンレスタンクで発酵と熟成をさせます。どこかスキアーヴァのニュアンスが垣間見える味わいで、すぐに開けて楽しめるワインです」
ロッソ メログラーノ

試飲
コメント

輝くルビー色。赤い花、ベリー系果実が香る繊細なアロマ。若干土のニュアンスも感じます。エレガントに持続する果実味と、こなれたタンニンが口に広がるクリーンな味わい。心地よい酸が口中を綺麗にしてくれる印象です。

骨格とクリーンな味わいが見事に調和する単一畑サンジョヴェーゼ

バッカレッリ氏:
「イル ロッカフィオーレは、1999年に植樹した単一畑で造る赤ワインです。スラヴォニア産の大樽で2年間熟成しています。DNAがブルネッロに近く、今後もその品種の良さも出せるよう尽力していきたいと考えています。エレガントでフィネスがあり、骨格もきちんとあります。一般的に飲まれるサンジョヴェーゼよりは、様々な要素が削ぎ落された軽やかさが特徴です。それでいて、果実味もきちんと出ており、重すぎないワインに仕上げています」
イル ロッカフィオーレ

試飲
コメント

ガーネットよりに輝くルビー色。ベリーなどの赤い果実と樽のニュアンスが溶け合う力強く複雑な香り。それでいてエレガントさも感じます。味わいは香り同様で、とても洗練されている印象。骨格はありながらもフレッシュでクリーンな味わいが際立ち、エレガントなタンニンが心地良い洗練された余韻を演出しています。

力強さとエレガンスが引き出された3品種ブレンドの上級赤ワイン

バッカレッリ氏:
「“造り手の挑戦”を意味するプローヴァ ダウトーレは、文字通り私たちが初めてブレンドで造る赤ワインです。サンジョヴェーゼ、モンテプルチアーノ、サグランティーノの3品種を使用しています。モハメドアリのような力強さをサグランティーノが担うことで、エレガンスの中にタンニンや骨格が現れています。サンジョヴェーゼのみスロヴェニア産のオーク樽を使用し、残りの2品種は2年間バリックで熟成しています。バリック熟成により、ベリーやプラムなどの熟した果実が表現されています」
プローヴァ ダウトーレ

試飲
コメント

ガーネット色。潰した花、赤い果実、黒い果実が香る力強く複雑なアロマ。華やかな要素もあります。香り同様の味わいに加えて、樽由来のバターやオイリーな印象も感じます。存在感あるタンニンと凝縮した黒い果実の余韻が持続します。

鋭い酸、果実の甘さ、ミネラル感が綺麗に溶け合う甘口ワイン

バッカレッリ氏:
「モスカート ジャッロ種100%で造る甘口ワインです。“黄金色に輝く丘”と名付けられた、自社畑の中で最も標高の高い畑で造られており、まさに黄金色に輝くワインです。アルトアディジェから持ち込んだブドウを使用していますが、その高標高の畑に見事に根付き、素晴らしい品質になりました。昼夜の寒暖差があるため、キリッと締まった酸が特徴的です。10月中旬から下旬にかけて収穫を行う遅摘み。完熟のまま放置し、太陽光が当たるように葉をカットして成熟をさらに促します。水分が飛んでレーズン化したものを収穫し、ステンレスタンクで熟成します」
コリーナ ドーロ

試飲
コメント

輝く淡い琥珀色。杏やキンカンなどフレッシュな果実に加えてコンポートなどの甘く複雑な香りが広がります。ロッカフィオーレのワインに共通する鋭い酸と果実の甘さ、香りで感じたフレッシュな果実が綺麗に溶け合うバランスに優れた味わいです。と同時にミネラルも感じられます。

インタビューを終えて

ロッカフィオーレが造るワインは美しくクリーンな味わいでした。ウンブリアワインを象徴するようなパワフルなものとは一線を画します。特にサンジョヴェーゼ100%で造る2種類の赤「ロッソ メログラーノ」と「イル ロッカフィオーレ」はクリーンネス、エレガンス、そしてほどよい凝縮感のある味わいで感動しました。「イル ロッカフィオーレ」を試飲した時に、「この味わいでこの価格?」と驚いたことを今でも鮮明に覚えています。

偉大な造り手「モンテヴェルティーネ」を目指しているということで、「イル ロッカフィオーレはモンテヴェルティーネの弟」「ロッソ メログラーノはピアン デル チャンポーロの弟」というルカ氏のお話も非常に印象的でした。新しくアンフォラを導入するなどして品質はまだまだ向上しており、ますます洗練されていくロッカフィオーレの今後に目が離せません。

緑豊かなウンブリア州トーディエレガンスを追求するオーガニック生産者「ロッカフィオーレ」をぜひご堪能ください。

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