TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2023/02/07

ルカ コッリア氏 Mr. Luca Collia、アンドレア コンティ氏 Mr. Andrea Conti

フォンタナフレッダの伝説的ブランド!ランゲの伝統的スタイルを追求し、偉大なクリュから極上バローロを生み出す「ミラフィオーレ」突撃インタビュー

生産者さん
ミラフィオーレは、1878年に初代イタリア国王の息子アルベルト伯爵が創設したワイナリー。アルベルト氏は、いち早くバローロを海外に売り始めた先駆者で、当時からすでに国内外から評価の高いバローロを生産していました。しかし、不運なことに1931年以降、ミラフィオーレの名前は市場から姿を消してしまいます。2009年に現オーナーがフォンタナフレッダを購入すると同時に、ミラフィオーレの商標権も購入したことで伝説的ブランド「ミラフィオーレ」が奇跡の復活を遂げました。創業当初と変わらずランゲ地方の伝統を重要視し、二つの偉大なクリュバローロ「ラッツァリート」と「パイアガッロ」を筆頭にクラシックで洗練された味わいを追及しています。今回は、輸出マネージャーのルカ コッリア氏(写真左)と醸造家のアンドレア コンティ氏(写真右)、ワインジャーナリスト宮嶋勲氏にオンラインでお話を聞きました。

1878年、初代イタリア国王の息子アルベルト伯爵が創業
奇跡の復活を遂げたバローロの伝統派「ミラフィオーレ」

――今日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いします。

ルカ 輸出マネージャーのルカ コッリアです。ミラフィオーレに来て4年になります。それ以前はリキュール業界で働いていました。

アンドレア エノロゴのアンドレア コンティです。ミラフィオーレに来る前は、キャンティ クラシコのイル コロンバイオ ディ チェンチオでも働いていました。今、ピエモンテはずっと雪が降っているので、ワインメーカーとしてとても幸せです。

宮嶋 今年は水不足だったので雪はポジティブですよね。まずはワイナリーの説明からしていただきましょう。

創設者エマヌエーレ アルベルト ミラフィオーリルカ このような機会をいただきありがとうございます。ミラフィオーレは、初代イタリア国王の息子エマヌエーレ アルベルト ミラフィオーリ伯爵が創設したワイナリーです。彼は非常に賢く、バローロの価値を見抜き、いち早く海外に売り始めた先駆者でもあります。

 オープンマインドで人の意見に耳を傾ける人でもあり、フランスから醸造家を招くこともありました。1887年、ヨーロッパ初のセメントタンクを導入した人物でもあります。マーケティングを取り入れるなど、先見の明を持ち合わせていました。彼が造ったポスターがセラーから発見されています。

ポスター
創業当初から世界的に高評価を得るミラフィオーレ。約80年の時を経て奇跡の復活!
 当時からすでに海外から高い評価を得ており、数々のコンクールで受賞歴があります。1919年にイタリア政府が制定した「379の歴史的ブランド」にミラフィオーレは認定されています。これは、少なくとも50年以上の歴史と価値を持つブランドに与えられる認証です。もちろんファッションや車業界も含まれています。

 しかし、1931年以降、ミラフィオーレという名のワインが世に出ることはなく、フォンタナフレッダという土地の名前を付けたワイナリーが有名になっていきました。そして、ファリネッティ(イータリーの創設者)が「ミラフィオーレはとても価値のあるブランドだ」と知り、ワイナリーや畑とともにミラフィオーレの商標権を取得したのです。こうしてミラフィオーレブランドが復活しました。

ミラフィオーレの詳しい歴史はこちらからご覧ください
「2016年10月18日 フォンタナフレッダ突撃インタビュー」
~バローロの偉大さを世界中に知らしめた伝説的ブランド「ミラフィオーレ」~

フォンタナフレッダの僅か1%にも満たない生産量!
ランゲ地方と伝統的製法を追求し洗練された味わいを表現

紆余曲折を経て、創業した土地の名前でワインを造り続けるピエモンテの名門「フォンタナフレッダ」。約80年もの間、市場から姿を消していた伝説的ブランド「ミラフィオーレ」。両者の方向性は明確に異なります。ミラフィオーレの生産量はフォンタナフレッダの1%にも満たず、ランゲ地方の伝統の重要さを再認識、再評価できる洗練された味わいを追及しています。両ワイナリーの違いについて詳しく話していただきました。

ミラフィオーレ&フォンタナフレッダ
伝統的スタイルを追求する伝説的ブランド「ミラフィオーレ」
ピエモンテ全体を網羅する名門「フォンタナフレッダ」

――ミラフィオーレとフォンタナフレッダの関係性についても教えてください。

ルカ とても重要な質問です。完全に会社として分かれています。私がフォンタナフレッダのワインを売ったことはありません。ミラフィオーレの畑のブドウは一切フォンタナフレッダには行きませんし、逆も然りです。彼らとは事務所は同じなので毎日顔を合わせますが、ある意味ライバルですね。健全な競争関係があります。みんなでアペリティーヴォに行く時は必ずミラフィオーレのアルタランガを飲みますけどね(笑)。

アンドレア ミラフィオーレの特徴は伝統的であることです。ランゲ地方のブドウ品種を使用しています。ネッビオーロ、バルベーラ、ドルチェット、ナシェッタ。唯一の例外がアルタランガ用のピノネロです。そして、全て自社畑(25ヘクタール)です。他社からブドウは一切買いません。一方でフォンタナフレッダはピエモンテ全体の品種でワインを生産しています。

宮嶋 フォンタナフレッダは、自社畑以外に契約畑も持ってますよね。400の契約農家からブドウを買うこともあります。ミラフィオーレはそれがありません。

地図
セッラルンガ村とバローロ村のブドウから香り高く優美なクラシックバローロを追求
――はっきりと区別化をして、ランゲに特化したワインを造りたいということですね。

ルカ その通りです。ワイン造りの哲学も異なります。伝統的であるミラフィオーレはバリックではなく、主にセメントタンクや大樽を使用します。フォンタナフレッダは、幅広いワインを多く生産しているので、伝統的手法で造る場合もありますが近代的手法をとることもあります。

アンドレア 私たちは歴史的ブランドとして、セッラルンガ村とバローロ村の畑から、古典的かつエレガントなワインを造るように心がけています。特にネッビオーロです。ランゲ ネッビオーロ、3種類のバローロ(クラシックバローロ、パイアガッロ、ラッツァリート)は、非常に香り高く優美な味わいを追求しています。

ルカ オーナーのファリネッティが二つの偉大なクリュ「ラッツァリート」と「パイアガッロ」をミラフィオーレに戻したことも重要な要素ですね。
バローロ3種左から、クラシックバローロ、パイアガッロ、ラッツァリート

――今後、畑を拡大される予定はありますか?

ルカ 品質を守ることが最も大切です。畑を購入することよりも、更なる品質向上に努めていくつもりです。そして、私たちはランゲ地方ですでに25ヘクタールの優れた畑を持っています。これは非常に恵まれたことです。ラッツァリートセッラルンガ村の畑「ラッツァリート」

醸造家アンドレア コンティ氏によるワイン解説

醸造家のアンドレア氏に解説していただきながら、全8種のワインを試飲させていただきました。

標高600メートルのピノネロで造る、酸と塩味を感じる厳格な味わいのアルタランガ

アンドレア ピノネロ100%のスプマンテです。シャルドネを加えれば柔らかく甘くなるので造るのが簡単になります。酸と塩味を感じる厳格な味わいを引き出すために、あえてピノネロ100%という難しい挑戦をしています。2012年から生産していますが、当時の畑は標高250メートルのセッラルンガ村にありました。温暖化の影響と酸を保つことを考慮し、2015年から標高600メートルの畑に植樹しなおしました。
アルタ ランガ ブランドノワール2016

試飲
コメント

やや黄金がかった麦わら色で、持続性のある繊細な泡。イースト香、フレッシュな青リンゴ、ナッツの香り。口に含むと心地よい酸と果実味が舌上を駆け上がります。レモン系の柑橘系果実、ミネラル感に溢れており、親しみやすい味わい。長い余韻には苦みも感じます。

ミラフィオーレ特有のフローラルで女性的な香りが表現されたランゲ ネッビオーロ

アンドレア ミラフィオーレの全ワインに保持させたいフローラルで女性的な香りが良く出ているワインです。ミント、イチゴや黒イチゴのような華やかでフレッシュな香りです。柔らかいタンニンが口の中に広がり、セッラルンガの土壌が与える塩味を感じることができます。樹齢は約40年です。

宮嶋 華やかでとてもデリケートですね。ほぼバローロと言えると思います。伝統的なバローロと言ったら通じますよね(笑)。
ランゲ ネッビオーロ2018

試飲
コメント

淡いルビー色。赤い果実、赤い花、ドライフラワーのニュアンスもある香り。口当たりはソフト。赤い果実の繊細で優美な味わいが、口の中を綺麗に満たしていきます。美しく深みのある味わいが長く持続します。

バルベーラのヴィナッチャとスキンコンタクトさせる伝統製法で造るネッビオーロ100%赤

アンドレア ピエトラマジカは、特別な歴史を表現するワインです。かつてワインは食品の一部だったので、ワインがうまく造れるように石像を置いて祈っていたそうです。ピエトラマジカは、その石像を現しています。ネッビオーロをバルベーラのヴィナッチャとスキンコンタクトさせるという伝統製法に則って造っており、昔の人々の習慣にオマージュを捧げるという意味を込めています。酸が強く骨格に優れたネッビオーロに更にバルベーラの酸が与えられることで、ネッビオーロならではのタンニン、バルベーラのフレッシュな酸が感じられます。
ピエトラ マジカ ランゲ ロッソ2018

試飲
コメント

明るく深みのあるルビー色。ドライフラワーを感じるやや凝縮感のある華やかな香り。柔らかい口当たり。複雑さと優美さを兼ね備えた味わいで、しっかりとした骨格もあります。スミレなどの紫の花の感じもありますが、プルーンなどのニュアンスも感じます。

エレガントでフローラルな、まさに喜びを与えてくれるクラシック バローロ

アンドレア このワインの香りをかぐと幸せな気持ちになります。非常にエレガントで生き生きとしてフローラルです。熟成香であるクローブやシナモンのトーンが出てきています。まさに喜びを与えてくれるワインだと思います。タンニンはしっかりしてますがエレガント。クリーミーな味わいで、いつまでも続く余韻があります。

ルカ 仕事で疲れた後に家族や仲間と一緒に飲むと非常に癒されます。うん、本当に美味しいですね(笑)。
バローロ2016

試飲
コメント

ガーネットがかったルビー色。赤い花、ドライフラワー、アーモンドなどのナッツ系、シナモンのような甘みを感じる複雑で綺麗な香り。じわじわと口中に広がる染みわたるデリケートな味わい。フレッシュな酸味がありますが、全体的に柔らかく綺麗にまとまっており、美しい余韻が長く持続します。

もはやアートの領域に達するセッラルンガ村の単一畑ラッツァリート

アンドレア これはもはやアートです。フローラルかつフレッシュさが一番強く出るのがセッラルンガの特徴です。目をつむってもわかります。フレッシュな白桃のニュアンスすら感じます。味と香りの一貫性があり、しっかりした酸、熟成由来のスパイシーさ、タバコ、リコリス、なめし革、動物的なニュアンスも感じられます。

宮嶋 セッラルンガ村は男性的で雄大と言いますが、ラッツァリートは畑としてはエレガントですよね。

アンドレア とても大事な畑です。本当に優れたヴィンテージにしか造らないリゼルヴァは、70%ほどがラッツァリートの畑です。ワインを捨てるのがもったいないくらいです(笑)。
バローロ ラッツァリート2016

試飲
コメント

ガーネットよりのルビー色。紫の花、ドライフラワー、ハーブ、スパイス感、熟した果実を感じる非常に華やかで複雑、力強さがありながらエレガントで綺麗な香り。フレッシュさも感じます。少し時間が経つと、革のニュアンスも現れます。香りの要素と同様の味わい。口に含んでから最後の余韻まで統一感のある味わいが綺麗に長く長く持続します。

セッラルンガ村の力強くエレガントなクリュバローロ「ラッツァリート」

ラッツァリートはセッラルンガ ダルバ村にあるクリュの名前で、しっかりとした構成を持つ力強いバローロが造られることで知られています。そのラッツァリートのブドウを使い、セメントタンクでのマロラクティック発酵、途中から大樽での熟成など、伝統的な手法を用いて造られたバローロです。
バローロ ラッツァリート2010

試飲
コメント

ガーネットよりのルビー色。花、ドライフラワー、シナモンなどのスパイス、やや土のニュアンスを感じる複雑で力強い香り。香りで感じた要素が味わいにも感じられます。それに加え、ハーブやリコリスも。口に含むと力強い味わいが口全体に広がっていきます。タンニンは存在感がありますが、風味と綺麗にまとまっています。

筋肉質で熟した香りが漂い、口の中を包み込むようなトーンがある単一畑パイアガッロ

アンドレア ラッツァリートと全く異なり、暑く筋肉質で熟した香りがあります。この香りは、標高と土壌の違いから来ます。泥灰土を主体とした土壌で、標高は250メートル。一方でラッツァリートは350メートルです。タンニンは多いですが非常に柔らかく、口の中を包み込むようなトーンがあります。フレッシュで丸みがありますが、バルサムのニュアンスがあるので、もう一杯飲みたいと思わせてくれるワインです。口の中にアロマが長く持続する余韻が印象的です。
バローロ パイアガッロ2010

試飲
コメント

ルビーよりのガーネット色。熟したベリー系果実、ドライフラワー、ミネラルを感じるリッチな香り。香りからは骨太な印象を受けます。黒と赤の完熟果実の豊かな果実味と、存在感のあるタンニンが綺麗に溶け合っています。厚みのあるボディの上にタンニンと豊かな果実味が重なり、長く持続する余韻があります。

畑ではなく偉大なヴィンテージの特徴を表現するバローロ リゼルヴァ

アンドレア バローロ リゼルヴァは長い間熟成していますが抜栓するたびに驚かされます。これほどフレッシュで複雑なワインに出会うと感動の域に達します。黄色いバラなどのフローラルな香り、ローズマリーやオレガノなどの地中海的なスパイス。タンニンとボディのバランスに優れていて、口に入ってから消えていくまで全ての要素において調和が取れています。イチゴジャムなどの熟した果実、熟したプラムを噛んでるような印象です。非常に美味しいです。

 単一畑のリゼルヴァを造る予定はありません。造ることはできますが、私たちの哲学とは異なります。単一畑は畑の特徴を出すことだと思いますが、リゼルヴァはヴィンテージの特徴を表現しています。ブレンドで造るほうがその個性がわかりやすいです。
バローロ リゼルヴァ2007

試飲
コメント

ルビーよりのガーネット色。赤と黒の果実と花、ハーブ、ミント、ミネラル、ドライフラワー、革などのスパイスの複雑な香り。口当たりは柔らかくジューシーさがあります。まだまだフレッシュな酸と凝縮した熟した果実。優美さと力強さを兼ね備えた余韻が口中を包み込むように持続します。

インタビューを終えて

インタビュー前、赤ワインを抜栓するたびにミントのような爽やかなハーブの香りがふわりと漂ってきたことを鮮明に覚えています。醸造家のアンドレアさんも、ほぼすべてのワインに対して「フレッシュなミントを感じる典型的な特徴」と説明されていました。

実際に試飲をすると、そのミントの要素は数ある要素の一つにすぎず、どのワインもとても複雑な味わいでした。何よりも繊細さ、エレガントさが突出しています。特に印象的だったのは、ランゲ ネッビオーロとクラシックバローロです。トスカニー内でも「これは毎日飲んでいたいランゲネッビオーロだ」という意見も出たほど。ピノネロ100%のアルタランガも素晴らしかったです。

伝統的アプローチを行うワイナリーですが、近代的な側面も持ち合わせています。地球に害を与えないエコフレンドリーやヴィーガンワイン、植物由来の燃料使用などの環境面に加え、社員に対する倫理的持続性、経済的持続性など、幅広くサステナビリティに注力しています。

伝統製法を貫き近代的思考で高品質ワインを世に生み出していく。それは、まさに創設者アルベルト氏がやってきたことにも思え、一度ワイン市場から姿を消しながらもワイナリーの意思はしっかりと受け継がれているのだと感じました。約80年の時を経て復活を遂げたバローロの伝統派「ミラフィオーレ」の今後に注目です。
生産者さんと

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