TUSCANY イタリアワインとグルメ食材の店
Interview

突撃インタビュー

2022/11/07

アレハンドラ シュメデス氏 Ms. Alexandra Schmedes

1本の樹から僅かボトル1本分のワインを生産!樹齢100年超えの畑、150年超えのアンフォラで造り上げるラ マンチャの自然派「マス ケ ヴィノス」突撃インタビュー

生産者さん
スペイン最大の原産地呼称DOラマンチャの北部トレドに拠点を構える自然派「マス ケ ヴィノス」。スペインのほぼ中央に位置する彼らのワイナリーは、1851年から続く古い生産者の施設を改修してできたもの。当時から使われていた170年以上も経つアンフォラを用い、自然酵母、ノンフィルター、SO2無添加でナチュラルワインを生産しています。樹齢100年を超える畑も特徴的です。「長く根付く土着品種しか生きていけない」という厳しい環境で苦しんで育ったブドウから、綺麗な味わいのワインを生み出しています。今回は、オーナーのアレハンドラさんをお招きしてお話を聞きました。

3人のコンサルタントが1851年から続くワイナリーを改修して創業

スペイン最大のDO「ラ マンチャ」の北部「トレド」で170年続くワイナリーを引き継いで創業
――今日はよろしくお願いします。「マス ケ ヴィノス」がワイナリー名で、エルカビオがワイン名でよろしいですか?
 そうです。もともとエルカビオという名のワインだけだったので、その名前をワイナリー名にしていました。他のワインもできたので、マス ケ ヴィノスとなりました。

――そうだったんですね。では、アレハンドラさんの経歴とワイナリーの歴史について教えてください。
 私はイラン生まれのドイツ人です。オーストリアのホテル学校を卒業後、南アフリカのコンスタンシアのワイナリーで働きました。ヨーロッパに戻り、キャンティなどで仕事をした後、スペインでコンサルタント業を始めました。そこで、ラ マンチャ出身のコンサルタントをしている夫婦(マルガリータとゴンサーロ)と知り合い、1999年に3人でマス ケ ヴィノスを起ち上げました。

500年と根付く土着品種、伝統的メソッドで実現するナチュラルなワイン生産

ラ マンチャ北部「トレド」で何世紀も根付く土着品種以外生きていけない厳しい環境の畑
――古いワイナリーを購入されて、起ち上げられたんですよね。
 購入したというよりは、メンバー(ゴンサーロ)の家族が所有していた施設を改修して創業しました。1851年から続く歴史あるワイナリーだったんです。場所は、(スペイン最大のDO)ラ マンチャ北部のトレド。標高800メートルで大陸性気候、冬は寒く、夏は暑いエリアです。実は4月から雨が降っておらず、とても厳しい環境です。土着品種しか生きていけません。

――どういう理由で、土着品種しか育たない環境なのですか?
 気候的に非常に難しいんです。そもそも、このエリアは500年以上の歴史があるワイン産地として知られています。長い間根付いてるからこそ、土着品種とも言えるわけです。厳しい環境でもがく樹だけにしか、いいブドウはできません。畑には水もありませんので、新しく植えられた樹は相当苦しむと思います。

1本の樹から僅かボトル1本分しか生まれない樹齢100年超えの古樹
 畑は全てオーガニックです。樹齢は100年以上で、5メートル下まで根が張られています。そのため、雨が降らなくても、地中深くから水やミネラルを引っ張ってこれるのです。灌漑はしていません。

――樹齢100年の樹は、どのくらい房がつくのですか?
 自然と3つになります。手を加えて制限しているのではありません。ですので、1本の樹で1本のボトルができる計算ですね。

自然酵母、ノンフィルター、SO2無添加、アンフォラで行う自然な造り
――それはすごいですね。アンフォラも非常に印象的です。
 1851年から続く前所有者の、約170年以上使われていた粘土のアンフォラです。

――今も使っているのですか?
 使っています。新しいセメントのアンフォラは、マロラクティック発酵に使用しています。全ての赤ワインは、マセラシオンやマロラクティック発酵など、どこかしらでアンフォラを通っています。醸造は、自然酵母で、フィルターを行わず、SO2添加は最小限にとどめています。ウサギのラベルの白ワイン(ロス コネホス マルディトス ブランコ コン マードレ)に関しては、SO2フリーです。

 このように、私たちは、この土地に500年も根付く土着品種を使い、伝統あるアンフォラを用いてナチュラルなワインを生産しています。

――ナチュラルワインということですが、その方針はどこから来ているのですか?
 昔から根付く手法で造っているだけなので、方針などはないですね(笑)。特に何か意識していることはなく、初めからそうしているだけです。

――考えも自然ということですね。
 もともとそうですね。それしか考えられないです。

80-100年の古樹を使用!柔らかな質感と程よい熟成感のある秀逸な白

畑は海抜750mの石灰質や粘土質の土壌。一日の気温差が大きい大陸性気候。9月末に樹齢40-60年の古樹からブドウを手摘みで収穫。ステンレスタンクで徹底的な温度管理下で10-12度の低温発酵。瓶詰め前までシュールリーを行っています。緑がかった明るい淡い黄色。バナナ、パイナップル、ライム、マンゴーのようなトロピカルフルーツの香り。グラスに移すと青イチジクと甘いハーブの心地よい香りも。柔らかな質感と程よい熟成感のある、フレッシュな果実味が心地よい味わいです。食前酒から、サラダ、シーフード、鶏肉など白身肉を使った料理、お寿司や刺身、スパイシーな料理と良く合います。
エルカビオ ブランコ2020

試飲
コメント

黄金色と麦わら色が混ざり合う外観。白い果実、黄色い果実、そして花のニュアンスを感じる綺麗な香り。口に含むとフルーティかつドライな味わいで、親しみやすい果実もありますが、柑橘の皮のような苦みもあります。心地よい風味の余韻が続きます。

SO2無添加!旨み広がるジューシーな果実味が際立つ原点回帰のアンフォラで造る白

ラ マンチャの伝統に回帰して造る自然派白。SO2無添加。畑は標高750mの石灰粘土質土壌で栽培地域は大陸性気候。ブドウは有機栽培で育てられたマルバルとアイレンを使用。9月末に手摘みで収穫したブドウを房ごと天然発酵。その後アンフォラでマロラクティック発酵させています。無清澄、無濾過で、必要最低限の亜硫酸を加えています。熟した黄色い果実に、薬草やミネラルのニュアンスを加えたアロマ。クリーミーなタッチのミディアムボディのワインで、程よい酸味とミネラルのニュアンスがあります。旨み広がるジューシーな果実味をお楽しみ下さい。
ロス コネホス マルディトス ブランコ コン マードレ2019

試飲
コメント

にごりのある麦わら色。レモン、レモンキャンディのような非常にフレッシュさのある香り。味わいはとても綺麗でジューシー。フレッシュな酸と柑橘の皮のような苦みが同時にやってきます。シンプルですが、奥行きのある風味。

テンプラニーリョ100%をアンフォラで寝かせた爽やかでフレッシュな赤

ラ マンチャの伝統に回帰して造る自然派赤。SO2は極少量。畑は標高750mの石灰粘土質土壌で栽培地域は大陸性気候。ブドウは有機栽培で育てられたテンプラニーリョを使用。9月末に手摘みで収穫したブドウを房ごと天然発酵。その後アンフォラでマロラクティック発酵させています。無清澄、無濾過で、必要最低限の亜硫酸を加えています。レッドベリー、チェリー、プラムのアロマ。ジューシーでソフトなタンニン。爽やかでフレッシュな酸、心地よい味わいをお楽しみ下さい。
ロス コネホス マルディトス テンプラニーリョ カルボニコ2019

試飲
コメント

ルビー色。軽やかでジューシーな果実のクリーンなアロマ。味わいはフルーティでデリケート。アルコールや果実味がじわじわとと口中を満たします。香り同様の綺麗さも兼ね備えています。

アンフォラで発酵させた、洗練された口当たりと程よい重量感の樽熟テンプラ二ーリョ

畑は海抜750mの石灰質や粘土質の土壌。一日の気温差が大きい大陸性気候。テンプラ二ーリョは樹齢30-50年の樹から9月末に手積みにより収穫。ステンレスタンクで徹底的な温度管理下で低温発酵。ティナハというアンフォラでマロラクティック発酵後、フレンチオーク樽(ロブレはスペイン語で樽の意味)で6ヶ月熟成しています。きめ細かいタンニンがあり、程よい重量感とベルベットのように洗練された口当たりです。フィニッシュには心地よい苦味があります。
エルカビオ ロブレ2016

試飲
コメント

濃いルビー色。やや凝縮感のある果実のアロマ。軽やかさと複雑さを両立するほどよい厚みを感じます。赤系果実のジャムっぽさも少しあります。味わいは香り同様で、ほどよいボディと複雑味。少し時間が経つと開いていき、複雑さと凝縮感が際立っていました。

赤系果実のみずみずしい味わい!僅か1ヘクタールで造る樽熟赤

リオハで造るエレガントな赤。フレッシュで非常にバランスの取れた味わい。赤い果実味、ミネラル感、細やかなロースト香。軽やかな口当たりで飲みやすく、エレガントな味わいです。リオハアルタとリオハアルベサの中間に位置する1ヘクタールの畑。オーク樽で14ヶ月熟成。
ラ ブエナ ヴィド2017

試飲
コメント

紫よりに輝くルビー色。力強く複雑な香り。様々な種類の凝縮果実を感じます。樽由来の、バターやオイリーな印象を受ける味わい。ボディを感じる厚みがありながらも口当たりはソフト。綺麗な味わいの余韻が持続します。

インタビューを終えて

まずアレハンドラさんにお話を聞いて思ったことは「何もかも自然」だということです。SO2を添加しない理由をお聞きすると、「今までのワイン造りでは入れていなかったので、そもそもその発想がないんです」と。手摘み収穫、自然酵母、ノンフィルター、アンフォラに対する考えも、お話を通して同様なのだと感じました。

そのSO2が無添加であるウサギのラベルの白ワイン「ロス コネホス マルディトス ブランコ コン マードレ」は、とても綺麗な味わいでした。柑橘系のフレッシュでシンプルな風味なのですが、どこか奥行きがあり、非常に飲みごたえのあるワインだと感じました。

スペイン最大の原産地呼称DOラマンチャの北部トレドの自然派「マス ケ ヴィノス」を、ぜひご堪能ください。
生産者さんと

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